Summer Sonic 2006/Day 1-Vol.3 Editors/Scritti Politti/The Charlatans







ここ数年の傾向のひとつとだと思うのだが、欧米のニューカマーを日本に紹介する手順として、まず春先に来日させて単発あるいは小規模のツアーを行い、そして再来日を夏フェスに持ってくるケースがある。ここでいい手ごたえが得られれば、次の来日もおのずと決まってくるだろうし、バンド側も日本にいい印象を持ってくれるようになる。エディターズも、5月の来日公演を経てのサマソニ参戦だ。


このバンドに対して、はっきりとしたイメージは持ち合わせていなかった。サマソニに出演するいくつかのニューカマーのひとつ、ぐらいの認識しかなかった。のだが、彼らはやってくれた。トムの低音ヴォーカルはジョイ・ディヴィジョンのイアン・カーティスを彷彿とさせ、そして音もギターを軸にしたポストパンク風で、去年のサマソニで観たインターポールを思い出した。演奏そのものは、的確でありつつも若々しく弾けていて、かつ人を喰ったようなふてぶてしさがあった。ハイライトになったのは、やはりシングルカットされている『Munich』だが、他の曲にも聴きどころはあった。今後が楽しみなバンドだ。





この後、マウンテンステージからはどっと人が引き、かなり閑散としてしまった。あっりゃー。次は今回のサマソニの「復活枠」、スクリッティ・ポリッティなのに。個人的にも今回観れるのを楽しみにしていたバンドなのだが、一般的な認知度は低かったのだろうか。そしてセットチェンジの最中、ソニックステージに出演予定のキーンが、「メンバーの家族の問題」とかでドタキャンになったことが告知された。キーンの出演予定時間は17時55分からだったのだが、発表されたのはそのわずか40分前で、あまりにも遅すぎた。


さてそのスクリッティだが、フロントマンのグリーンを中心として、ギター、ベース、ドラム、そしてキーボードが2人という編成だ。ギタリストと女性ベーシストの脇にもキーボードがあって、曲によって彼らはそれらを使いこなしてはいたが、演奏そのものはあくまで生音が主体。キーボードの音は、思ったほど前面に出てこなくて意外だった。ドラムセットは、通常のもののほかにシンセドラムがあって、ドラマーは曲により使いわけていた。演奏は技術志向に見えてジャズバンドのような雰囲気を醸し出し、懐かしの80's~というたたずまいはない。当初私が期待していたライヴとは異なりはしたが、でもこれはこれでよかったと思っている。





個人的にザ・シャーラタンズを観るのは、2年前のフジロック以来で通算3度目となる。かつての同郷同世代バンドたち、ストーン・ローゼズが10年前に空中分解し、ハッピー・マンデーズが金のために再結成を繰り返しているのを尻目に、地味ながらもコンスタントに活動を続けている彼らを、頼もしく思っている。そしてもうひとつ、彼らのライヴには外れがないと信じている。


バンドはレーベルを移籍し、今年新譜『Simpatico』をリリース。相変わらず気を吐いていて、健在ぶりを示している。しかしライヴはその新譜からに偏ることなく、往年のヒット曲も連発。序盤で早くも、イントロでハモンドオルガンが唸る名曲『Weirdo』が披露され、『North Country Boy』『How High?』といったお馴染みの曲も要所で放たれた。ギターロックでありながらもダンスグルーヴ感を醸し出せるのが、このバンドの売りだと思っていたのだが、この日は少し様相が異なっていて、1曲1曲を丹念にじっくりと演っているように見え、それがまた新鮮だった。


ラストはもちろん必殺の『Sproston Green』で、いつ終わるとも知れないハモンドオルガンのプレイが延々と繰り広げられ、オーディエンスを別世界へと誘った。・・・ただ、惜しむらくはこの次に出演するダフト・パンク目当てと思しき客がライヴ中にどんどん前の方にやって来て、そのたびに気が削がれてしまったことだ。まあ、こういうことが起こってしまうのも、フェスならではなのかもしれないけど。


(2006.8.17.)
















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