Fuji Rock Festival'07/Day 1-Vol.2 Ocean Colour Scene/Muse







個人的に、今年のフジで観れるのをとてもとても楽しみにしていたバンドのひとつが、オーシャン・カラー・シーンだ。バンド活動は必ずしも順調とは言えず、デビュー後しばらくは不遇の時代を強いられた彼らだが、それが歓喜と賞賛で迎えられたのが、96年にリリースされたセカンド『Moseley Shoals』だ。この年の暮れに来日もしていて、私が初めて彼らを観たのが渋谷のクアトロでだった。バンドは99年のフジロックにも出演しており、私が観るのもそのとき以来になる。





ひょっとしたら、私と同じような想いを抱く人などあまりいないのではと思っていたのだが、フタを開けてみればレッドマーキーはほぼ満員の入りだった。バンドが登場するやいなや場内はどっと沸き、バンド側もその勢いに応えるかのように、オープニングはコレしかないという『The Riverboat Song』のイントロをかき鳴らした。この時点で、ライヴがいい出来になることがほとんど約束された。


メンバーチェンジを経た現在のバンドは5名。フロントには、サングラスをかけたヴォーカルのサイモン。向かって右が、新メンバーであるベーシストとギタリスト。2人とも若そうだが、そのプレイぶりにはバンドに忠誠を尽くさんとする姿勢がにじみ出ており、好感が持てる。後方に陣取るドラムのオスカーは、サッカーイングランド代表のユニフォームを着ている。そして向かって左の前方で嬉々としてギターを弾いているのが、スティーヴ・クラドックだ。スティーヴはOCSだけでなく、ポール・ウェラーのバンドメンバーとしても活動しているのだが、そのときと今とではまるで別人のような動きになっている。


ポール・ウェラーのバンドマンであるときは、ウェラーに忠誠を尽くすべく淡々とギターを弾くさまが印象的だったのだが、やはり自分のバンドということもあるのか、ここではかなり自由に好き放題やっている。ピート・タウンゼントばりに腕をブンブン振り回したりジャンプしたり、と、この人こんなにオーバーアクションする人だったっけ?と首をかしげたくなる暴れっぷり。だけど、それはもちろん観ていて嬉しいに決まっていて、この人をはじめメンバーの元気な姿を目の当たりにできているだけでも、言いようのない幸福感がこみ上げてくる。





選曲も、キャリアを総括するかのような代表曲のオンパレードだ。フェスティバルには熱狂的なファンも集まれば、アーティスト名や2、3の曲は知っているが、ライヴを観るのはこの場が初めてというファンも少なくない。そういう状況において有効なのが、アンセムの連射だ。そして連射をするには、そもそもアンセムとなる曲をたくさん生み出していなければならない。それをなしえているアーティストというのは実は限られているのだが、OCSはもちろんイエスだ。


『The Circle』『You've Got It Bad』『Hundred Mile High City』『Profit In Peace』と、次から次へと出るわ出るわ。バンドがそのキャリアにおいて生み出し世に放ってきた数々の名曲たちは、時の移り変わりによって色褪せることもなく、2007年の今もなお、輝きを放っている。もちろん往年の名曲ばかりでなく、今年リリースされた新譜『On The Leyline』からの曲も披露されて、それらは名曲たちと違和感なく溶け込んでいる。途中機材が不調で耳障りなハウリングが響きライヴが中断しかけたのだが、その微妙な空気を振り払うように、サイモンが声のヴォリュームをひときわ上げて歌い出したことで難なく払拭された。やはり、この人たちはライヴ巧者なのだ。





そして、この場にいた多くの人が望んでいたクライマックスの瞬間が、最後の最後にやってきた。問答無用の『The Day We Caught The Train』で、骨太の曲が多いOCSにあって、この曲は穏やかに始まりプログレ的な旋律も備えるむしろ異色の曲である。がしかし、その中に凝縮された世界観はまさにタイムレスであり、コーラスはオーディエンスも参加しての大合唱となった。ライヴはここで終わってしまい、メンバーはあっさりとステージから引き上げ、アンコールの拍手もそこそこに客電がついてしまった。


とてもいいライヴだったが、欲を言えばアンコールで出てきてほしかったのと、もろスタイル・カウンシルという曲調の『Up On The Downside』が聴きたかった。ただ、その代わりと言ってはナンだが、『The Day We Caught ~』を始める前にサイモンのMCがあって、そこでこの人は「See you soon...」と言っていた。ということは、近いうちに単独の来日公演が実現することを期待してもいいと思う。





グリーンステージに戻ってきた。時間的にはちょうど日没とシンクロし、そしてミューズが始まるというタイミングだった。彼らにとっては、2002年以来のフジ参戦である。がしかし、予定の時間になってもライヴは始まらず、結局25分遅れでスタート。このときになるとすっかり陽は落ちていて、その中を3人が登場。オープニングは『Knights Of Cydonia』で、スクリーンには特殊効果が施されたマシュー・ベラミーが映し出されていた。


序盤は機材の調子が今ひとつのように見え、ライヴの凄まじさがなかなかダイレクトに伝わって来なかった。しかし、それも徐々に曲が進むにつれて持ち直すようになり、やはて広いステージの中、たった3人でかき鳴らしているとは思えないほどの音量が発せられ、音圧が観る側を襲った。状況が許すのであればフルで観たかったのだが、他のアーティストとのバッティングもあったため、私は前半を観ただけで移動を開始した。去年サマーソニックで観ていて、今年3月にも単独を観ているというのもあったので。


(2007.8.5.)
















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