Fuji Rock Experience Vol.10 清志郎 / Ocean Colour Scene / Bernard Butler
ほとんど何の前触れもなく、あるパンキッシュな曲が始まる。ようく歌詞を聴くと、何とこれは『君が代』だ!『君が代』を国歌として定める法案が半ば強引に可決されたが、それに対する清志郎なりの回答、そして問題提起とでも見ればいいのか。ラフィータフィーはまだアルバムを発表してはいないが、もしこの曲が収録されて発表されたら、『Love Me Tender』のときのようにまた物議を醸すな、と思った。
(予定通りに、とでも言えばいいのか、ポリドールレコードはこの『君が代』収録のアルバム発表を許可せず、結局インディーレーベルから発売されることとなった。『Love Me Tender』~『Covers』のときと同じように。自由はシステムに組み込まれ、抑圧は11年経った今でも変わらないということなのか。)
ブラック・クロウズが90'sのストーンズなら、オーシャン・カラー・シーンは90'sのスモール・フェイセズだろうか。はたまた地味なオアシスか(失礼)。進行が遅れたことと関係しているのかいないのか、出演順が入れ替わって早めの登場となる。もちろん代表曲を惜しげもなく披露。『The Riverboat Song』を。『The Day We Caught The Train』を。アンコールは、これも最早お決まりになりつつあるビートルズの『Day Tripper』。
しかし、その場ではもちろん楽しんだのだが、後になって振り返ると、個人的には残るものが少ないライヴだったかなあと思っている。何が悪いということもなかったのだが、しかし何かが足りない。新作発表直前のフェス出演というタイミングなのか(新曲も数曲演奏していたとのことだけど)。あるいは、一時はポール・ウェラーと組んでのフェス出演も噂されていて、そこに期待してしまったこともあったからだろうか。というより、私は『Moselley Shoals』でシーン復活を遂げた96年の来日公演をクアトロに見に行っており、そのときの感動を今でも強く引きずっているためかもしれない。
夕食がてらにNew Band Stageまで足を伸ばす。こちらはいよいよWinoがこのステージの大トリとして出演しようというときで、せめて1曲だけでもと思い、地べたに座って和牛串焼を食べながら少しの時間待ってみる。がしかし、なっかなか出てこない。時計とのにらめっこになり、夕方6時になったところで諦めてグリーンステージに戻る。むむー。
ある意味3日目の目玉的存在でもあったホールがコートニー・ラヴの映画撮影のためとかでドタキャンに。そのキャンセルの発表が本番まであまりに近すぎたことから、その代役は恐らく日本のバンドになるだろうと予想していたのだが、抜擢されたのはなんとバーナード・バトラーである。Smashやるじゃん、と少し感心(笑)。この時間帯になると日差しも和らいでいて、あまりタフそうでない(ごめん)バーナードにはおあつらえ向きかも。しかしOCSと同様、バーナードも秋に新作発表を控えた状態でのフェス出演となり、タイミングがどうもなあ、というもやもや感は否めない。
この3日間、ここまでずっと天候には恵まれていた。それが、ここへ来てなんだか雲行きがあやしくなってきていて、ついにぽつぽつと雨が。そんなあ、と一瞬'97の悪夢が頭をよぎる。と、そこでステージは『Not Alone』が。細身の体を前後にくねらせ、サビのところを高らかに歌い上げるバーナードの勇姿。その歌声が天まで届いたのか、雨は本降りにならず、なんとか持ちこたえていた。
(99.9.18.)
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