Fuji Rock Festival'04 Day 1-Vol.4 Chris Robinson & The New Earth Mud/Lou Reed
今年のフジロックのラインナップにクリス・ロビンソンの名前を見つけたとき、なんだか嬉しくなった。現在活動停止中のブラック・クロウズのフロントマンであり、クロウズとしては99年のフジにも出演している。今回は自分のソロプロジェクトとしての出演で、そして舞台はグリーンではなく、フィールド・オブ・ヘヴンだ。
夜のヘヴンには何度か行ったことがあるが、ミラーボールが光りながら回っていて、その光が敷地を取り囲む木々に反射し、幻想的な世界を作り出している。日中のまったりした雰囲気のヘヴンとはまた異なる、時間が止まったかのような不思議な空間だ。クロウズでは90's版ローリング・ストーンズのようなオーソドックスなロックをやっていたが、果たしてクリスのソロでこの舞台でどうなるか?
期待と不安が入り混じる中でヘヴンに足を踏み入れたのだが、そこで繰り広げられていたのは、グレイトフル・デッドやフィッシュを思い起こさせる、まったりとしたゆる~いジャムセッションだった。長髪でヒゲも伸び放題のクリスは、まさにヒッピーのようないでたちで、いつ終わるともなく延々とギターを弾いていた。クロウズのロックとはほど遠く、しかしクリスが、今自分のやりたい音楽として楽にやれているという姿勢が、観ている方にまで伝わってきた。
ホワイトステージではトリのベースメント・ジャックスが開演間近だった。先ほどの東京事変のときよりは人の数が少なくなっている感じで、やっぱり事変の方をトリにすべきではなかったのだろうかと、思ってしまった(当初は東京事変がトリと発表されていたのだが、後にベースメントジャックスと入れ替わったのだ)。せっかくなので少しだけでもライヴを観ようと思ったのだが、開演時間になっても一向に始まる気配がないので、しびれを切らしてしまい、ホワイトを去ることにした。
ルー・リードが初日グリーンステージのトリにエントリーされたのを知ったとき、私は首をかしげた。確かに超大物ではあるし、伝説の人ではあるし、多くの若手~ベテランアーティストにリスペクトされ、フォロワーも星の数ほどいる。アーティストの「格」としては申し分ない。がしかし、92年以降の全ての来日公演に足を運ばせてもらっている身としては、グリーンは不似合いだと言わせてもらいたい。ルー・リード/ヴェルヴェッツの音楽は、解放感のある大舞台よりも、密閉された空間でこそ生きてくると思うのだ。トリには違いないとしても、ホワイトステージ、いやレッドマーキーが適切だったのではないか。
グリーンステージに戻ってみた。まず、人の数は先ほどのピクシーズのときよりも少なくなっている。それでも何万人かの人がいるはずなのだが、とてもそうとは思えないくほど静かだ。曲はちょうど『Ecstasy』『The Day John Kennedy Died』の辺りで、まさに静かなたたずまいの中で聴くような曲だ。やっぱり・・・。ステージには、凝った装飾など何もない。またフェスでは、みんなが知っている曲を連発するのが正しいと私は思っているのだが、この人はそんなようなことに気を使う人ではない。今現在の自分のあるべき姿をひたすらに追求し、ダイレクトに表現するタイプのアーティストだ。それがわかっているからこそ、グリーンのトリは不似合いだと思ったのだ。
去年の来日公演のときはドラマーが不在で、代わりにコーラスの巨漢の男性がいたり、果てはこの人のカンフーの先生が出てきて演舞をするという、非常に変則的(かつ貴重)なスタイルで行われていた。のだが今回はドラマーもちゃんといて、通常に近いバンド編成のようだ。ベースは恐らく「盟友」フェルナルド・ゾーンダースだろうし、チェロの女性は曲により妖しい音色を発している。ルー・リード本人は黒いTシャツ姿のシンプルな格好で、しかしその袖から覗く上腕は、とても還暦を過ぎているとは思えないほどに鍛え上げられている。
静けさに包まれたまま本編が終了。このまま終わってしまうのかなと思ったら、アンコールで御大は再登場し、まずはポエトリー・リーディングを披露。緊張感が漂い始め、先ほどまでの幾分だれたような雰囲気が払拭されてきて、なんだかほっとする。そして、ここでなんと『Sweet Jane』を。場内からは歓声が沸いたが、個人的には疑問が浮かんだ。この曲はリー・リードの代名詞的な曲として、ほとんどのライヴでは1曲目に演奏されてきた曲だ。それがアンコールでということは、果たしてこの日のライヴはどういう出だしだったのだろう(『Modern Dance』だったらしい。意外)。ラストは『Perfect Day』で締めて、ライヴは終了。個人的には複雑な想いが駆け巡ったルー・リードのライヴだが、ファンの人、あるいは名前だけ知っていてこの日初めてライヴを観た人は、いったいどのように感じたのだろうか。
こうして初日が終了。正確にはオレンジコートではオールナイトフジが行われていて、レッドマーキーでもライヴやDJなどが行われているのだが、ここでホテルへと戻ることにした。ゲートを出たところにあるパレス・オブ・ワンダーには、ルーキー・アー・ゴーゴーというステージがあって、日本の若手バンドが演奏中だった。付近のテント内には人だかりができていて、誰かいるのかなと思って遠めに覗いてみたら、ケミカル・ブラザーズのエドがいた。結構大柄で、長身だった。
(2005.2.1.)
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