Fuji Rock Experience Vol.3 The Black Crowes
日が傾き、気温がだんだん下がってきて過ごしやすくなってくる。そして午後7時前にブラック・クロウズが姿を現す。私としては前作『Amorica』のときのプロモビデオを少し観たぐらいの予備知識しかなかったのだが、友人に作ってもらったオリジナルベスト(選曲は1月のシークレットギグに沿っているのだそう)を聴いて、徐々に傾いてきた節がある。シンプルでオーソドックス。アメリカ南部を思わせる土臭いサウンド。ある意味60's~70'sに出尽くしてしまったスタイルのような気がするが、これを90'sに体現することの難しさに敢えて彼らは挑戦しているのではないか。
ちょうど日没と重なり、薄明るかった青空が、みるみるうちに夜の銀世界へと様変わりする。耳に残るブルース・ハープの音色。コーラスも従えた大所帯のバンド編成。そして、マイク・スタンドを振り回すクリス。その様は、90'sのストーンズというよりは90'sのロバート・プラントだな、などとイメージしていたら、なんとツェッペリンの『In My Time Of Dying』が始まってしまって思わずびっくり!でも、もちろん大歓迎に決まってる。
過去のフジロック、アメリカのハードコア系バンドやデジタル系のユニット、またはオルタナ系バンドは多数出演していたが、クロウズのようなストレートにダイナミズムを表現できるバンドは出演していなかった。今だから言うが、昨年のフジロックの出演バンドが発表になったとき、正直私は「物足りない」と感じていた。それは、出演バンドが上記のバンドたちに偏っていた(ように私には思えた)からだろう。今年のフジロックに出演したバンドの中で、クロウズの存在は、私の中にぽっかり空いていた穴を埋めてくれた、そんなバンドだ。
そして、ついにメインディッシュを平らげるときがきた。私は前日スカイパーフェクTVの取材を受けたとき、最も楽しみなバンドは?と聞かれてもちろん迷わずレイジと答えていた。新譜の発売が遅れに遅れ、とうとうフジには間に合わなかったが、だからといって、それが何だというのだ。2年前、あの極限状態の天神山で見たレイジ。あれを体験してしまったら、以後レイジに埋没しないわけがないだろう。レイジは麻薬だ。そして私はレイジ・ジャンキーだ。レイジを聴いてラリってしまう、目の焦点を失ってしまう、危ない奴だ。
(99.8.29.)
Back(Vol.2) | Next(Vol.4)