Society Of The Citizens Vol.2 2008.8.23:JCBホール

東京事変が主催するイベント、Society Of The Citizens。Vol.1は2年前に行われていたのだが、その日私はブンブンサテライツのライヴとかぶっていたため参加できなかった。なので今回は、2日間に渡って行われるVol.2は両日行くことに。その初日であるこの日は会場に早めに到着し、開場前の先行販売でグッズをゲット。入場時は冷たい雨風にさらされ少しへばったが、場内に入ると持ち直し、開演時間になるのを待った。





Scoobie Do

ギター、ベース、ドラム、ヴォーカルという、オーソドックスな編成の4人組。小山というヴォーカルが頻繁にMCをして盛り上げ役を担っているのだが、若干痛いというか、空回り気味というか(でも、彼らの単独ライヴではこれでにぎわうのかな)。言っていることは変態チックだが、肝心の本人が好青年なので変態になり切れておらず、中途半端なのだ。


さて演奏の方だが、ドラムとベースのリズム隊が結構しっかりしていて、バンドのリーダーだというギタリストもぐいぐい切り込んでくる感じで、意外と言っては失礼だが安定感があり、聴いていて安心できた。そしてその中心軸にいるのはやはりヴォーカルの小山で、歌っている最中にもコール・アンド・レスポンスを仕掛け、ハンドマイクを手にステージ上を右に左にと動き回り、と奮闘する。今一つ垢抜けていないが、キャリアを重ねれば将来的に「化ける」かもしれない。なお、終盤では2日目出演予定のソイル&"ピンプ"セッションズのサックスとトランペットの2人が加わっていた。



セットチェンジ~椎名林檎×向井秀徳

ステージ上では機材の入れ替えが淡々と行われる中、いつのまにか向かって左前方に椎名林檎がお目見え。そしてその横に立つのは、翌日Zazen Boysとして出演する向井秀徳だった。向井はアコースティックギターを構えていて、Zazenの『Kimochi』をデュエット。向井と林檎が交互に歌うという形を取りつつ、サビでは原曲で向井が歌うキーを林檎が歌い、向井はキーを落としてハモるという格好に。


シンプルなアレンジだったが、林檎が思ったよりも早く、しかもセットチェンジ中という意表を突いた形で登場したというサプライズ、更にはこの日の出演者ではない向井登場というサプライズ、そして2人の共演という、三重のサプライズが相俟って、短い時間ではあったが非常に感動的なひとときになった。



エレファントカシマシ

過去に1度だけ、2002年のFactory収録でライヴを観たことがある。宮本浩次は、ぼさぼさ頭に白いシャツという、宣材写真まんまのいでたちだ。私にしてみれば、このバンドについてはテレビや雑誌で観る以上の情報を仕入れていないはずなのだが、『悲しみの果て』や『風に吹かれて』など、思った以上に聴いたことのある曲が多く、キャリアの長さと実績、それにプライドを感じさせるライヴに思えた。


しかしここでの最大のサプライズは、サポートメンバーだった。ステージには総勢6名がいて、あれエレカシってこんなにメンバーいたっけ?と思いながらずっとライヴを観ていた。中盤で宮本がひとりひとりメンバーを紹介するコーナーがあったのだが、バンドは4人で、2人がサポートだとわかった。ギタリストとは中学のときからの同級生だと肩を組みながら紹介し、サポートのひとりであるキーボーディストは、年下だが頼れるプロデューサーと言っていた。そして、向かって右端で淡々とギターを弾いていたのだが、なんと「第一期」東京事変のメンバーだった、ヒラマミキオだったのだ!事変時代はサラサラの長髪がトレードマークのようになっていたのだが、ここでのヒラマは髪が以前よりは少し短めになり、後ろで束ねていた。表情は渋味を帯びていて、職人ミュージシャンという佇まいに変貌。かなり印象が変わっていて、気がつかなかったのだ。



セットチェンジ~即席バンド

さすがにこのタイミングで椎名林檎が出ることはありえないと思いつつ、誰か出るかなあと半分期待していたら、この日最初に演奏したスクービー・ドゥのギターとベース、それに飛び入りしていたソイルの2人がステージ向かって左に登場して狭く陣取り、4人でのミニセッションが少しの間繰り広げられた。その間機材の入れ替えは淡々と行われていて、ドラムセットが向かって右に、キーボードセットが向かって左に設置され、いよいよそのときが来るなと思い、心の準備を整えた。



東京事変

ここまでの2組のバンド演奏とセットチェンジは割とテンポよく流れてはいたのだが、やはり「待たされた感」はあった。そんな中、ついに東京事変の出番である。客電が落ちてSEが響き、メンバーがゆっくりと登場して持ち場につく。すると早速『某都民』のイントロが始まった。ギターの浮雲が最初のフレーズを歌い、鍵盤の伊澤が引き継ぎ、そしていよいよ椎名林檎のパートに。まずは声だけがフロア内に響き、やがて彼女が歌いながらステージに登場した。


演奏は、そのままメドレーで次の曲になだれ込んだ。ん?新曲?と一瞬思ったのだが、実はシングル『キラーチューン』のカップリングの『B.B,Queen』だった。聴けたのは貴重で、この1曲で元は取ったようなものだ。MCも適度にはさむが、浮雲や伊澤はあまり気の利いたことも言えず、ベースの亀田が助け舟を出し、ドラムの刀田はスクービーのMCをパクるなどして、なんとか間を持たせることに成功する。


メンバー紹介ソング『歌舞伎』に続き、『Osca』でライヴはピークを迎える。聴けば聴くほど不思議な曲で、およそシングルカットしたとは思えない凝った曲調なのに(確か浮雲自身もインタビューでそれに近いことを言っていたはず)、いつのまにかこれが林檎のヴォーカル、各メンバーのソロパートを映えさせる曲として機能し、オーディエンスもそれに呼応しているのだ。というわけで、ライヴは『キラーチューン』『閃光少女』など、シングルを中心とした選曲で進められて本編が終了。アンコールはソロ時代の『丸の内サディスティック』で、事変になっても根強く歌われていることを嬉しく思ったのだった。








今年は椎名林檎のデビュー10周年に当たり、それにリンクしていくつかのパッケージがリリースされているし、11月には記念公演も予定されている。一方で東京事変としてのリリースはなく、ライヴもライジング・サンとこのイベントのみに留まっていて(ライジングはソロ名義と事変とで2日連続出演だった)、実質的に今年はクールダウンの年なのかなという気もしている。なので今回のこのイベントは非常に貴重であり、かつありがたい企画だと思っている。トータルとして初日は上々の出来だったと思っていて、対バンが初日と入れ替わる2日目にも期待が持てる。




(2008.9.7.)

















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