Boom Boom Satellites 2006.7.2:Studio Coast
バンドは5月にリリースした新譜『On』にリンクするツアーを約1ヶ月に渡って行っていて、この日はその最終公演になる。のだが、日曜日であるにもかかわらず、開場が7時に開演が8時という、なぜか遅めの設定だ。スタッフが、ハンディカメラで開場前の外の様子をそれとなく撮影している。そして開場となり中に入ってみると、フロアの右中段にカメラが設置されていて、左前方にもカメラをコントロールするクレーンが設置されていた。収録して、後でCS辺りで放送するのかな。
定刻より少し遅れて客電が落ち、超満員の場内からは怒号にも似た歓声が沸き、フロアは前方から中段までにかけて大きく揺れ動き、ひしめき合う。そんな中をメンバー3人が姿を見せ、新譜『On』の冒頭の曲でもある『Kick It Out』でライヴがスタート。川島のヴォーカルは力強くそしてエコーがかかっていて、疾走感に溢れつつも幻惑的な雰囲気が漂い始める。
メンバー配置は、ステージ向かって右にギター&ヴォーカルの川島、左にベース&プログラミングの中野が陣取り、2人の中間の後方にサポートのドラマーが陣取っているという具合。そして、特筆すべきはステージセットだ。メンバーや機材の後方に鉄骨が扇形に設営されていて、ステージの後方をまるまる覆っている。そして鉄骨の合間に設置されているスポットライトが曲にシンクロして閃光あるいは点滅し、観る側の視覚を奪う。いや、これだけなら他のアーティストのライヴでもありそうな装飾なので、さほど驚きはしなかった。ところが曲が間奏に差し掛かったときに、鉄骨群がまるごと巨大スクリーンになって映像が映し出されたものだから、仰天してしまった。生音の演奏と映像のシンクロが、あまりにも見事だったのだ。
曲は『Girl』『Pill』『Generator』と、新譜『On』から立て続けに連射される。ベースとプログラミングを巧みに使い分け、自らもノリノリの中野は調子よさそうで、ドラマーもいつものように乾いたビートを的確に刻んでいる。川島のヴォーカルはエモーショナルで、そしてギタープレイもアグレッシブだ。メンバーのプレイは肉体性に溢れていて、更に『Moment I Count』になると、巨大スクリーンはステージで演奏している川島や中野の姿を大きく映し出し、またフロアで踊り狂っているオーディエンスの熱狂ぶりも捉えて、興奮の度合いは一層高くなる。
プレイそのものは肉体的だが、発せられる音そのものはCDで聴く以上にかなりデジタルなアレンジになっていて、更に後方の巨大スクリーンの映像がプラスアルファとなり、まさにデジタル色を前面に押し出したパフォーマンスに仕上がっている。新譜『On』や前作『Full Of Elevating Pleasures』は、決定的な曲がいくつも生み出されている反面、それまでのデジタル色が後退して代わりにロック色が強くなった。この変化はバンドが活動し続ける上でのある意味必然的なことなのかと、そう受け止めていた。
しかし少なくともこの場においては、ロック色とデジタル色がかなりいい塩梅で融合している。『Dive For You』などの決定的な曲は、原曲が持つロック的な要素を活かしつつもデジタルに加工されていて、より圧倒的な勢いを以って観る側に迫ってくる。一方もともとがデジタルな曲はより一層デジタル色が濃くなり、場内を巨大なダンスフロアと化すことに成功している。川島と中野も、曲によっては2人同時にステージ前方に躍り出て、首を激しく振りながらそれぞれギターとベースをかき鳴らすほどの入れ込みようだ。
終盤は『Nothing』『Play』『Loaded』と、またもや『On』からの曲で畳み掛けて、本編を締めくくった。そして興奮の余韻醒めあらぬ中、アンコールに突入する。そこで来たのが、またもや決定的な曲『Rise And Fall』。前作『Full Of Elevating Pleasures』の冒頭を飾り、また去年のツアーではオープニングとして演奏されることの多い曲だったので、個人的にはここで繰り出されたことに納得している。後方のスクリーンは再びステージやオーディエンスを捉え、その狂乱ぶりがまざまざと映し出される。
アンコールは『Ghost And Shell』で締められ、メンバーは礼を言いながらステージを後にした。が、後方のスクリーンには『On』のジャケットが映し出され、そして客電がつく気配もない。こりゃまだ次があるなと思い待ち構えていたら、再度登場してくれた。そしてオーラスになったのは、『Dress Like An Angel』だ。川島によるイントロのリフが強烈なこの曲はこれまた決定的で、だけどこの日のライヴの流れからすると演奏されずじまいになるのかなとも思ったのだが、それが最後の最後にダメを押す形で披露されたのだ。そして今度こそ終了となり、メンバーが去った後のスクリーンにはバンドのロゴが表示され、続いて「Good Luck~Good Bye」というメッセージが映し出された。
私がブン・ブン・サテライツのライヴを観るのは、フェスティバルやら洋楽アーティストの前座やらを含めると、今回が5回目になる。去年観た単独公演も非常に素晴らしい内容だったが、今回はそれをも凌ぎ、最も凄まじくそして最も素晴らしいライヴになった。アルバム制作ではロックへ接近する傾向が見られるが、ライヴの場ではロック的なアプローチを活かしつつも、全体的にはデジタルで押し切るという、観る側にとって願ってもない手法を取ってくれた。この日でツアーは終了したが、この後は恒例になりつつある各地のフェス参戦もあり、また去年のフジロックでのパフォーマンスをDVDとしてリリースもし、彼らの勢いはまだまだ留まるところを知らない。
(2006.7.8.)