Factory収録(Number Girl他) 2002.5.3:フジテレビV4スタジオ

フジテレビ系で深夜に放送されてきた音楽番組「Factory」。何度か放送時間や放送回数の変更を繰り返してきたが、この4月からは地上波でもレギュラー番組として復活。私はRossoやロザリオスのライヴをテレビで観る一方、次回の出演バンドがナンバーガールやエレファントカシマシであることを知り、収録に応募した。申し込みはネット上で可能なのだが、当選の通知はTELで本人宛にされるとのこと。当たるかどうかはわからず、耐えて待つ身となったが、4月29日の夜に携帯宛に当選の通知が来た。そして収録当日、フジテレビの8番ゲート前に集合。まずは控え室に通され、そこでしばし待たされた後、今度はスタジオの方に案内された。


 整理番号が後の方だったこともあり、スタジオに入ったときはフロアは既に人でぎっしりだった。7~800人ほどの客が集まっているのだろうか。仕方なく左後方に陣取るが、あまり背の高くない私は、背伸びしなければステージ上がほとんど見えない状態。そしてテレビで観る限りではステージも狭そうだったのだが、実際はかなり奥行きがあった。バックには、番組タイトルである「Factory」の文字がどど~んと構えていた。





 スタジオ内ではスタッフからの注意や案内といったアナウンスはまるでなく、時間が午後5時45分になったところでオープニングアクト登場。ぱっと見でわかったのはギターの土屋公平、コーラスの加藤いづみだけで、他はベースにピアノ、そしてスキンヘッドの外人によるパーカッションという編成だ。そしてフロントは、誰だかわからない女性アイドル。2曲を演奏し、そのいずれもがRCサクセションの曲。フロントのアイドルは、フォルダー5のAkinaだと後でわかった。バックは「LOVE LOVEあいしてる」に出演していたときのメンツで、どうやらこの番組では、職人で脇を固めてアイドルに歌わせるというスタイルで、オープニングを進めて行くようだ。





 20分ほどのセットチェンジを経て、今回番組の司会を務めるナンバーガールの向井秀徳が登場し、演歌の花道調に(笑)最初のバンドを紹介。そして出てきたのは、恐らく番組オンエアではラストになるであろうエレファントカシマシだ。向井が現れた時点で、オーディエンスは一斉に前の方に押し寄せ、続くエレカシで更に前に押し寄せる。私はこのスキに右後方へ移動し、ステージがよく見えるポジションを確保した。


 エレカシは、前日2日に新譜『ライフ』をリリースしたばかり。この後ツアーも控えているのだが、実質今回のFactoryがリリース後の初ライヴとなるらしい。宮本浩次は黒のシャツに黒のパンツ。右手にマイクを持ち、左手でフロアを指差し、ギラギラした目つきで『奴隷天国』を歌う。挑戦的で、危ない雰囲気が漂う。


 しかしそれは序盤だけのことで、MCはソフトに。そしてギター弾き語りで即興の歌を歌う。みなさん~ここまでどうやって来ましたか~♪私はクルマで来ましたが~フジテレビの入り口前を通り過ぎてしまいました~♪といったような感じだ。約45分のステージで、新作からと過去の曲とが半々くらいだった様子。一部の曲ではキーボードのサポートも入っていた。ラストはシングルカットされている『あなたのやさしさをオレは何に例えよう』。私個人としてはエレカシにはあまり明るくないのだが、それでも宮本の表現者としての力量はさすがと痛感。そしてもうひとつ目を見張ったのは、ギターの人がジェフ・ベックばりに体をかがめ、異様に低い位置でかきならしていたことだった。





 セットチェンジの間に、演奏を終えたエレカシと向井、そしてキタキマユとの対談の様子がステージ後方のモニターに映し出されるが、音が小さくて何をしゃべっているのかよく聞こえなかった。続いてはインディーバンドが2組。まずは一見ヴィジュアル系のインビシブルマンズデスベッド。音の方はガレージロックだが、ヴォーカル&ギターのフロントの人が異様に怪しい。コロッケがスリムになって王子様になったような感じで、歌はともかく、体を小刻みに揺らしながらすり足で動くさまがちょっと気持ち悪い。スピーカーによじのぼったり、一度楽屋に引っ込んだかと思えばなんと布団を持ち出してきてフロアにブン投げたりとやりたい放題で、最後には笑ってしまった。個人的にはちょっと・・・なのだが、テレビ的にはこういうのもアリなのかな。今後ブレイクするかもよ。


 そして次なるバンドはdowny(ダウニー)。今度はステージ後方に白いスクリーンが下ろされ、曲に合わせて映像が展開。ギター×2、ベース、ドラムというオーソドックスな編成で、最近2作のレディオヘッド、あるいはモグワイを思わせるようなギターインストのたたずまいになっている。いちおうヴォーカルもあるが何を歌っているのか聞き取れず、というよりはことばを伝えるためではなく、楽器の一部としての歌なのだろう。悪くはないのだが、前述の洋楽バンドを聴いている人ならば、わざわざ改めて手を出すだろうかという疑問が残った。





 セットチェンジの合間には、スタッフからミネラルウォーターが配られた。収録中はスタジオから出ることを許されず、その場に座る以外に休む手段もない。時間は既に9時を回っていて、ここまで3時間半以上も立ちっ放し。ひざの裏や足の裏が痛い。当然ノドも乾く。なので、せめてこれくらいのケアがなくっちゃね。そしてこれまでは向井がバンドの紹介をしてきたが、ここではキタキマユがステージに姿を見せた。向井秀徳、28歳、ヤケクソです~というMCのもと、収録のトリとなるナンバーガールが登場する。


 フロアは更に前方に人が押し寄せる格好になった。この日の収録、ナンバーガール目当てのファンが最も多かったのだろうか。『Tatooあり』でスタートし、出だしからものすごい高いテンションだ。そのバンドに呼応するかのようにフロア前方はモッシュ大会となり、ボディーサーフやダイブも続出。ミネラルを撒き散らして最後はそのペットボトルを放り投げる始末。いつのまにか黒人セキュリティが柵の外に陣取っていて、落ちてくるオーディエンスを裁いていた。


 私もこれまでで最もステージに近いところまで移動。個人的にナンバーガールのライヴは3度目となるのだが、今回が最も近い距離でバンドを観る格好になった。中尾憲太郎とアヒト・イナザワのリズム隊のプレイもはっきりと見て取れ、そして田渕ひさ子については指使いまでが手に取るようにわかった。細い体で重そうなギターをしょっているにもかかわらず、そのプレイは丹念であると同時に凄まじい。私はこの人のギタリストとしての力量を、改めて痛感した。


 そしてそのすぐ横で暴れまくる向井。ラップとお経の狭間を行くかのような『Num-Ami-Dabutz』のヴォーカル、そして搾り出すような咆哮。私はこれまで、向井のヴォーカルを少し弱いと感じていたのだけれど、この日はそうした物足りなさも感じなかった。ナンバーガールの魅力は、ハードなギターサウンドの中にどこかもの悲しさを感じさせるところだと、これまでは思っていた。だけどここでの音は直球勝負で、ひたすらハードだった。エレカシ同様、彼らも新譜『Num-Heavymetallic』をリリースしたばかりで、この後はツアーで全国を駆け巡ることになる。今回はそのスタート地点でもあり、その場に立ち会えたことの喜びを、噛み締めずにはいられない。











 テレビ収録で、それぞれが30分から45分というコンパクトなライヴではあったが、その密度は普段のライヴと少しも変わらなかった。とりわけトリのナンバーガールについては、無料で観させてもらったのが申し訳なくなるくらいに素晴らしかった。今回の収録は、地上波ではダイジェスト版として5月7日と21日にフジテレビ系で放送される予定。CSでは完全版を放送とのことで、既に4日深夜に前半を放送済み。18日に後半を放送する予定だそうだ。

















(2002.5.6.)



















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