Summer Sonic 2007/Day 2-Vol.2 Brett Anderson/Bloc Party/Manic Street Preachers
フェスティバルという場は実績を築き上げたアーティストにとっての再出発する場としても機能するようで、フジロックにジャーヴィス・コッカーが出演したように、サマソニにはブレット・アンダーソンが出演する。もっとも、ブレット自身は実はサマソニとは結構縁が深く、2002年にはスウェードで(私はこのときガンズを観に行っていたため観れず)、2005年にはティアーズで、それぞれ出演している。
バンドを率いてはいるが、中心に位置しそして前面に立つのは、もちろんブレットその人だ。中盤まではソロ時代の曲を歌うブレットだが、その世界観はダークでヘヴィーで内省的であり、ある意味初期のスウェードに立ち戻ったのかなと思える反面、ポップ色が薄いためにライヴとしては結構微妙なものになっている。するとなんと、中盤で『Can't Get Enough』が披露され、更に畳み掛けるように、終盤は『Everything Will Flow』~『Trash』~『Beautiful Ones』~『Saturday Night』と、スウェードナンバー4曲を固め撃ち。場内はそれなりに熱狂したのだが、個人的には複雑な思いを抱いてしまった。
なんだかんだ言いながら、ブレットはスウェードをやりたいんじゃないか。そしてそれをするには、強力なパートナーの存在が必要なのではないか。最適なのはバーナード・バトラーということになろうが、恐らくそうするには引っ掛かりがあって、だから2年前のときはスウェードではなくティアーズという形になったのだろう。実際、スウェードの歴史においてバーナード在籍期間というのは短期になってしまっているし(今回演奏された5曲が、いずれもバーナード脱退後というのもなんだか意味深)。バーナードと組むのが難しいとしても、リチャード・オークス辺りを引っ張り出してみてはどうだろうか。
この後はダンスステージでホット・チップを少しだけ覗き、再び屋外へ。インドアのグッズ売り場は初日に覗いて欲しいものはほぼ購入できたが、ではアウトドアはというと・・・、出向くのが遅かった。売り場敷地内にはほとんど人がおらず、そしてグッズもほとんどが完売状態で、売っているのはヤノカミ関連くらいだったのだ。仕方なく売り場を後にし、再び千葉マリンスタジアムへ。
マリンステージでは、ブロック・パーティーのライヴ最中だった。数年前には次代を担うUKロックの旗手的存在として売り出された彼らも、いつのまにか中堅的なポジションに。活動そのものは順調かつ堅実な様子で、ポストロック調のギターと、ファンク色も見られるケリーのヴォーカルは、個人的に嫌いではない。のだが、やはり決定打となるような曲あるいはフレーズを欠いているのが物足りず、バンドの立ち位置をどっちつかずのグレーな状態にしているのではないかと思う。そのケリー、終盤ではステージを降りてモッシュピットの中央奥にまで走り、PAまで行き着いて熱唱するなど気を吐いてみせた。
そして次が、2日目の個人的目玉であるマニック・ストリート・プリーチャーズだ。残念なことに、アリーナは先ほどのブロック・パーティーのときより人が減ってしまったのだが、それでも熱心なファンが前方に詰めていて、花でデコレーションされたニッキーのマイクスタンドがセッティングされたときにはどよめきが起こった。バックドロップには新譜『Send Away The Tigers』のジャケ写が飾られた。
ほぼ時間通りにバンドが登場し、そしてなんと、いきなり戦闘モードの『You Love Us』でスタート。ドラマーのショーンは中央奥に陣取り、前方向かって左のジェームスはサングラスをかけ、向かって右のニッキーは白い衣装にスカート姿で、黒のボクサーパンツを見せパンにしている(笑)。そして今回は、ギタリストとキーボーディストという、2人のサポートを動員していた。
曲は『From Despair To Where』を経て、新譜からシングルカットされた『Your Love Alone Is Not Enough』へ。原曲ではカーディガンズのニーナとデュエットしているのだが、この場においてはもちろんジェームスが全てのヴォーカルを担っていて、そのメロディーの美しさはマニックスの健在ぶりを伺わせる。更に『Everything Must Go』~『Ocean Spray』~『If You Tolerate This Your Children Will Be Next』という、キャリアを横断するように各曲が発せられ、ジェームスのヴォーカルが冴え渡り、ニッキーはステージ上を右に左にとゆったり歩きながらベースを弾いていた。
通常のマニックスのセットであれば、中盤にジェームスのソロアコースティックを挟んでいる。しかし、出演順や時間帯やステージの大きさなどから言って、この場でそれをするのは得策ではないなあと思っていた。バンド側もそうしたところを考慮したのかしないのか、バンドモードのままで押し切る戦法に出ていた。ライヴでは必殺ナンバーとなりオーディエンスを暴れさせる『Motown Junk』から、決定的なアンセム『A Design For Life』へとつないだ。そして個人的には、この次の曲がハイライトになった。ファーストからの『Little Baby Nothing』である。
ポルノ女優のトレイシー・ローズを迎えてデュエットしているこの曲は、それが初期のバンドの宣伝文句にもなっていたのだが、そういうゴシップねたを抜きにして、純粋に曲として美しく聴きやすく、優れていると思うのである。しかし、これまで何度かライヴを観てきた中で、この曲を聴けたのは2003年のグレイテストヒッツツアーのときだけで、バンドとしてはあまりこの曲を演奏したくないのではと勘繰っていたところだった。それが放たれてしまったのだから、狂喜するなというのがムリな話だ。
バンドはなおも攻め手を緩めることなく、終盤は『You Stole The Sun From My Heart』を経てラストには『Motorcycle Emptiness』を。そしてこの曲を演奏する前、ジェームスは「次の曲をリッチー・エドワースに捧げる」と言った。リッチーが失踪して、いつのまにか12年も経ってしまったが、バンドは今でもリッチーの居場所を残しているように思えた。そういう優しさや誠実さを持ちながら解散の危機を克服し、今なお第一線として活動を続けていることが感動的なのだ。この日は1時間のステージだったが、単独で再来日もしてくれそうなので、近いうちにまた彼らの勇姿を拝めるはずだ。
(2007.9.17.)
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