Summer Sonic 2002/Day 1-Vol.3 Guns N' Roses







幕張メッセから千葉マリンスタジアムまでの移動には、歩いて約15分程度要した。そして1階の1塁側スタンドに入ってみるが、そこには驚くべき光景が広がっていた。アリーナは、両サイドにわずかに空きがあるだけで、他はほとんどみっちり埋まっていた。そしてスタンド席も、1階と言わず2階と言わずほぼ満席に。野外フェスというより、まるでガンズの単独ライヴだ。


 ガンズはそれだけ"待たれていた"バンドであり、ガンズだけを目当てにサマソニに参加したファンも多かったのかもしれない(もしかすると、ガンズ観たさに東京と大阪をはしごするファンもいるのかも)。今年のサマソニは、ガンズが出るということがフェスのあり方を象徴していると言ってもいいだろうし、それは正しいと私も思う。それでもって、結局席を探し回ることはやめて、そのまま1階スタンドの空いている席に陣取った。開演までは少し時間があるので、この間に夕食も摂った。


 開演予定は7時。しかし、一向に始まる気配はない。アリーナを中心に「ガンズ!アンド!ローゼズ!」という掛け声が何度も沸き、スタンドからはウェーヴが起こった。そうして時間は経過して行くが、やはり始まる気配はない。そのうちに場内にはダレた雰囲気が漂い、アクセルほんとに来てんのか、ドタキャンして帰っちゃったんじゃないのか、という不安がよぎる。こんなにたくさんの人を集めたあげくにライヴなしだったら、それはそれで伝説だ。でも、そんな呑気なことは言ってはいられない。





 やっと場内が暗転し、ステージからは閃光が漏れてきた。やった!始まる!時計を見ると・・・、なんと7時47分!私も過去のライヴで30分待ちというのは何度か経験があるが、50分近くも待たされたのは初めてだ。ったく、待たせすぎだぞバカヤロー!これならフレーミング・リップス全部観れたじゃねーかバカヤロー。ったく、ほんとに"愛すべき"バカヤローな奴らだなこいつらは。ガンズ・ン・ローゼズは。アクセル・ローズは。


 しょっぱなは、『Welcome To The Jungle』だ!これだけ待たされてダレた空気が漂っていたにもかかわらず、イントロが響いただけで場内は一変。アリーナは大モッシュ大会となり、サビでの合唱もものすごい。アクセルは「99」とプリントされたTシャツ姿で、サングラスをかけている。そうして早くも歌いながらステージ上を右に左にと走り回り、そこでまた歓声が沸く。


 そして『It's So Easy』『Mr.Brownstone』と、お馴染みのガンズナンバーが立て続けに披露。キーボードのディジー・リードは"準"扱いだとしても、やはりオリジナルメンバーはアクセルひとり。そして今のアクセルを支えるのは、ケンタッキーのバケツと不気味なお面をかぶったバケットヘッドと、ナイン・インチ・ネイルズのロビン・フィンクという、2人のギタリストだ。確かに演奏自体は申し分ないが、しかし思うのはスラッシュの不在であり、ダフ・マッケイガンの不在だ。時計の針は逆には動かないんだな、あのときはもう戻っては来ないんだなという、なんとも言えない空しい気になってしまう。





 しかし、そんな複雑な思いはアクセルによって払拭された。次の曲はと言って自ら紹介をし、放たれたのは『You Could Be Mine』!耳に残るフレーズが炸裂し、再びサビの大合唱だ。映画「ターミネーター2」の主題歌として、この曲が世に出たのはもう10年以上も前のこと。当時最も流行ったエンターテイメント映画の主題歌に、当時最も勢いのあったバンドが起用された。それは正しいことだと思うし、のみならず10年以上の時を経た今、たとえメンバーが替わったとしても、この曲はリアリティを以って響き渡っている。


 そしてたて続けに、電撃のイントロが。多くのギター小僧たちがこぞってコピーしたであろう、『Sweet Child O' Mine』だ!現在はK-1戦士ピーター・アーツの入場テーマとしてお馴染みなのだろうが、元々はガンズの看板の曲のひとつだ。その電撃のイントロを発するはロビン・フィンクで、メンバーが単にアクセルのバックに留まらず、バンドとして機能していることがうかがえる。続く『Knockin' On Heaven's Door』は、前半のクライマックスとなった。場内はライターの光で埋まり、神秘的な空間が出来上がったのだ。


 たとえメンバーが次々に抜けようとも、解散の危機が訪れようとも、アクセルはバンド名に関する使用権をしっかりと離さず握っていた。来るのか来ないのかわからない、プロモーター泣かせの暴れん坊のようでいて(実際その通りなのだろうけど)、その一方でアクセルという人は、とてもデリケートな一面も持ち合わせているのではないかな。確かにここにはスラッシュもダフもいないが、しかしこうした形で存続しているガンズを、私は受け入れたい。いや私だけでなく、この光の中に包まれている人の多くが、そう感じたのではないだろうか。ガンズは、還って来たんだ!





 中盤では、バケットヘッドのギターソロやヌンチャクさばきなどがあった。こんな余興をするくらいなら、もっとシンプルにして凝縮したライヴをすればいいのにと思わないでもないが、実際こうした間がないとアクセルは持たないのかもしれない。そして、新曲もかなり披露。もちろん今までに聴いたことがないので、騒ぐというよりはどんな曲なのかを見定めるという感じになる。感想は・・・、それまでのガンズの曲を思い起こすと、パンチに欠けているという物足りなさがあり、そしてメロディーを重視した美しさが目立つ。アクセルが前面に出過ぎることはなく、バンドとしてのまとまりがにじみ出ているように思った。


 終盤は、アクセル自らがピアノを弾きながら歌う『November Rain』、アクセルの口笛がイントロの『Patience』で再び熱狂の度合いを増し、新作のタイトル曲でもある『Chinese Democrasy』を経て『Nightrain』で締めくくられた。これで終わってもよかったと思うが、アンコールで再びメンバーが登場。アクセル、かなりゴキゲンの様子だ。そしてほんとうのラストとなったのは『Paradise City』だった。





 50分遅れて始まったライヴは約1時間45分に渡って行われ、最後はスタジアムの外からたくさんの花火が上がり、こうしてサマソニ初日は幕を閉じた。ガンズが来るか来ないかは、実際のところかなり不安だったのだが、この後はレディングへの出演も決まっているし、ここでのライヴはどうしても外せない位置づけになっていたはずだ。アクセルもそれをわかっていただろうし、実に9年ぶりとなる(そして私にとっては初となる)ライヴが成功に終わって、ほんとうによかった。そして、ガンズを呼び込んでのフェスを成功させたサマーソニックは、過去2年からは一段高い、次のステップに踏み込んだと思う。

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(2002.8.24.)
















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