Sonicmania'05 Marilyn Manson
ヴェルヴェット・リヴォルヴァーのライヴが終わると一斉に人が引いて、反対側のマウンテンステージの方に流れていった。しかしマウンテン側は既にマリリン・マンソン待ちのファンですし詰めになっていたようで、そこに更にダメを押すように人が押し寄せていった。一方オーシャンステージは撤収作業が始まっていて、そして時間は経過していく。予定時間になっても始まる気配はなく、結局15分以上押したところでやっと客電が落ちた。
不気味なSEが少しの間流れ、そして幕で覆われたステージの奥の方から揺れる光が見えてくる。やがて幕が上がって、右手でシャンデリアを揺らし、左手にマイクを持ってつぶやきながら、マンソンが登場する。この出だしだけで、場内はマンソンワールドと化した。そしてオープニングは、『The Love Song』だ。ラヴソングというタイトルでありながら、甘ったるさは全くない。
続いては、マンソンの絶叫で始まる『Irresponsible Hate Anthem』、更には『Disposable Teens』へ。マンソンは左の前髪を垂らし、対して右は即頭部まで見事に刈ってしまっているという、異様な髪型だ(しかしこの人がやると違和感が全くない)。衣装はモノトーンカラーで、シックな印象だ。バンドはギター、ベース、キーボード(鍵盤がブランコで吊られていた)、ドラムという編成だが、今回は当然のことトゥイギー・ラミレスもジョン5もいない。よって、マンソン本人がバンドをも牽引している感がある。
そして『mOBSCENE』となるのだが、この曲ライヴでどうすんだろうと不安半分期待半分で私は注目。というのは、原曲ではサビを女性コーラスに任せているからだ。まさかこの曲のためだけに女性ヴォーカルを動員することもないだろうし、はて・・・?するとなんと、マンソンがとった手段は「客に歌わせる」だった。まずは自分がつぶやくように歌ってみせて、そして演奏をスタート。サビに差し掛かるとスタッフが出てきて、マイクでオーディエンスの声を拾う。前方に陣取ったファンはかなりの信者と見え、ちゃんとサビを合唱していて違和感を感じさせない。
この人は音楽だけでなくヴィジュアル的にもこだわりを持っている人だ。ライヴの場となればあれこれやらないはずはなく、『Tourniquet』では早くも竹馬を駆使。安定感のある竹馬のようで、自在にステージを動き回る。歌はというと、ヘルメットにヘッドフォンマイクがついていて、それで歌っているのだ(位置を気にしていたけど)。
『Personal Jesus』はベスト盤『Lest We Forget』に収録されている新曲で、かつデペッシュ・モードのカヴァーである。原曲を聴いたことはないのだが、少なくともここでは完全にマンソンオリジナルのように聴こえてしまう。続くはイントロのリフが印象的な『Great Big White World』。こちらは『Mechanical Animals』のオープニング曲なのだが、ベスト盤から漏れてしまったのがもったいなく、かつライヴの場で映えてくる佳曲だと思っていて、演ってくれて嬉しかった。
『The Fight Song』では、ステージ後方の電飾にヒトラーはじめさまざまな人物の肖像画が浮かび、続く『The Nobodies』では紙吹雪が舞った。『The Dope Show』を経て『Rock Is Dead』になると、今度は紙テープがステージからフロアに向かって飛ばされる。この人のライヴでは、難しいことは考えずに、こうしたいろいろな仕掛けをエンターテイメントとして楽しむのが正しいと思う。私がこの人のライヴを観るのは、今回が3度目になるのだが、99年のときはそれで失敗したし、2001年のときは逆に満腹感でいっぱいになった。今回のライヴは、展開も私の感触も、2001年のときに近い。
いよいよ終盤。『Sweet Dreams』は、ユーリズミックスのカヴァーでありながら今やマンソンオリジナルのような輝きと不気味さを放っている。そして本編ラストは『The Beautiful People』。イントロのドラムとそれにからむギターのリフが印象的な出だし、そして囁くように歌われるサビなどインパクトありありで、私がこの人の代表曲だと感じている曲だ。
アンコールでは、これまたこの人のライヴではお馴染みの演説台が登場。マンソンはその台の上に立って演説をするように『Antichrist Superstar』を歌い、そして訴えるように拳を振り上げる。時には糸で操られているかのように上半身をだらーんとさせ、よろけたり、あるいは台のへりにかぶさったりする。こうしてライヴは終わりを告げ、それはすなわちソニックマニア'05の終演につながった。
曲数自体は結構演ってくれた気もするが、時間にすると少し短かった気がした。開演が遅れたために曲が少しカットされたのか、あるいは遅れたことには関係なく予定通りのセットリストだったのかはわからない。がしかし、そうした不満はちっぽけなことで、この人が今だ巨大な存在感を誇り、エンターテイナーとして機能することを、まざまざと見せ付けられたステージだったと思う。
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