Fuji Rock Experience Vol.11 Tricky / Joe Strummer
だんだん空が薄暗くなってくる。そしてまたまたホワイトステージに向かう。林道に何やら人だかりが。シナロケの鮎川さんとシーナさんがいて、ファンと一緒に写真を撮ったりしている。思わず私も写真を一緒に撮ってもらうようお願いし、鮎川さんが「どれ、オレが撮っちゃる」とか言って一緒に枠の中に入りながら自分でシャッターを切ってくれた。その後お2人と握手。うひゃー、感激!カッコよかったー。なんかすっかりミーハーになってしまった。シナロケなんてヤードバーズの曲をパクってるだけだ、と決めつけていた私は失礼な奴だった。ごめんなさい。そして、ありがとうございます。
スカンク・アナンシーと並ぶ私のフジロック99の裏メイン。それはトリッキーである。トリッキーは、今回最もお金を費やしてアルバムを買って聴きこんだアーティストだ。OCSもバーナード・バトラーも新作発表直前でのフェス出演となったが、トリッキーは新作『Juxtapose』が発表されたばかり。プラス初来日。絶好でしょう。
小降りだった雨は一時的にやんでいたのだが、ここに来てついに強い雨が降り出してきてしまった。慌てて用意していたポンチョをかぶってしのぐ。この夕立ちは10分ほどで収まった。結局、フェス期間中まともに雨が降ったのはこのときだけだった。
夜7時15分過ぎ、日も落ちてすっかり暗くなり、そしてトリッキーが姿を見せる。トリッキーはステージ向かって左に、女性voが向かって右側に立つ。そして淡々とライヴが始まって進む。が、ステージが暗すぎて様子がよくわからない。ホワイトステージは向かって右側にモニターが設置されているのだが、そのモニターを見ても真っ暗で様子が不明である。トリッキーが上半身裸らしいことをかろうじて判別できるぐらい。歯切れの悪さをぬぐえないままに淡々と曲が進んでしまう。ああ、これじゃ去年のゴールディーと同じだ。あの地の底からマグマが脈動するようなビートが、地の果てまですっ飛んでしまうようなリズムが、ここにはなかった。というか、感じることができなかった。トリッキーは既に野外フェスは出演済みなのかもしれないが、少なくとも私にはトリッキーに野外は不似合いに思えた。密閉されたライヴハウスでの方がトリッキーの持ち味がスパークするんじゃないかって。それとも私が期待しすぎてしまったか。
トリッキーは途中で切り上げて再びグリーンへ。ステージには日高社長が姿を見せ、自らジョー・ストラマーを紹介する。'97にはシークレットDJとして参加するはずだったジョー。今年は既にチベタンで自らのバンド・メスカレロスを率いての出演も果たし、活動としては新たなスタート地点に立ったというところか。そして・・・、
...ちゃっちゃっちゃっちゃっ...
『London Calling』だ!2曲目にいきなり!ロンドンは呼んでるぜ!ロンドンは燃えてるぜ!1979年に放たれたこの叫び。クラッシュはこの時期、パンクの初期衝動を越えてロックバンドとして新たなスタンスを切り開く時期にあり、この曲はその代名詞的存在であったはずだ。そしてもう20年の歳月が流れているのに、この曲、そしてこの曲を歌うジョー・ストラマーの姿。ナツメロではなくリアリティをもって私たちの胸に響く。感動だ。
それだけにはとどまらない。『ハマースミス宮殿の白人/(White Man) In Hammersmith Palais』が!『Brand New Cadillac』が!『Tommy Gun』が!クラッシュナンバーが次々に炸裂し、こっちは声にならない声を絞り出している。秋にはニューアルバムが発表され、そしてクラッシュのライヴアルバムも発売されるという。今後もジョーの動きから目が離せなくなりそうだ。ただ、1つだけ残念だったのは、演奏時間が短かったこと。日高社長との友情を重んじて、遅れているグリーンステージの進行の時間調整にひと役買ったのだろうか。
(99.9.18.)
Back(Vol.10) | Next(Vol.12)