Fuji Rock Experience Vol.1 Phish / Neve
日高社長の友人なるミュージシャンが2曲ほど演奏した後、ロケット・フロム・ザ・クリプトが登場する。大人数編成による骨太ロックという感じで、レニングラード・カウボーイズを連想させる。私はまだこのときはグッズを買っていたのでほとんど後半しか見れなかったが、結構いい感じだ。去年のミジェットとは音楽の方向性が全く違うが、個人的にはこっちの方がいいかな。
続いてはフィッシュが予定時間より10分早く登場する。ある意味、今年のフジロックの目玉であろう。90'sのグレイトフル・デッドと呼ばれ、全米ツアーでは数万のフィッシュ・ヘッズが集結するという。そして、そのライヴも3~4時間と型破りである。自身のオリジナルだけでなく、ピンク・フロイドの『狂気/The Dark Side Of The Moon』をまるまる完全コピーしてしまうなど、次に何をやらかすかわからない、期待感を抱かせる連中だ。フジロックの掲示板への英語の書き込みは、そのほとんどがPHISHのHPから流れてきたものであった。最も奥のステージ"Field Of Heaven"では、3日間に渡ってトリを務めることも決まっている。PHISHをどこでどれだけ見るかが悩みの1つだったのだが、私は結局このときのグリーンステージで最初の1曲を見ただけで終わってしまった。gの音色が気持ちよかった。
そして、林道を歩いてホワイトステージに向かう。下見したときに比べると、草が刈り取られ、整地されてはいるものの、やはり狭い。移動に要する時間は約10分くらいか。ホワイトステージにはほとんど日陰がなく、身の置き場を探すのに苦労するところだ。地面から舞う砂埃で目が痛い。
私自身にとってのフジロック99はNeveでスタートだ。ロス出身の新人バンドで、しかしそのサウンドにはUKギターバンドに通ずるようなところもあり、結構期待している。'97がサマーキャンプ、'98がステレオフォニックスなら、'99のフジロックブライテストホープはNeveだろう、と勝手に決めつけている。ホワイトステージはさすがにグリーンに比べると人も少なく、容易に前まで行ける。
午後1時、いよいよスタート。アルバム『Identify Yourself』からの曲を叩きつけるように演奏する。暑くて汗かきっ放しなのだが、この照りつける太陽が、周囲を囲む山々が、木々が、とても気持ちいい。そして、Neveのストレートで元気なパフォーマンスがこの雰囲気にフィットしている。gの兄ちゃん、金髪で目つきも鋭く、何やら危ない匂いを漂わせている。ステッカーばらまきまくり。そして放水も盛ん。Neveはフジロックの後クアトロで単独公演を行うが、この開放的な空間をこれほどまでにライヴの血肉として取り込んでいるのに、これが密閉されたハコで放たれたらどこまで凄まじくなるのか。
約45分、演奏が終わってメンバーは引っ込むが、自然に「Neve!Neve!」というアンコールが発生する。初日のまだこんな早い時間、しかもホワイトステージ。これは異常だ。そして、これは快挙だ。Neveは勝利したのだ。私たちはNeveにすっかり魅せられたのだ。果たしてアンコールはあるのか。
gの兄ちゃんがステージの袖でうろうろしている。なんかまだ演りたそうな感じだ。煽れ!煽れ!Neveコールが一層甲高く、そして大きな拍手の渦がそれにプラスされる。
そしてっ、出てきたっ!それだけじゃない。ノイジーなgのイントロは何だか聴き覚えがあるぞ。
『Another Blick In The Wall』!!
こう来たかNeveよ!やってくれるぜ。フロイドのそれというよりは、昨年トム・モレロが参加したユニット"クラス・オブ・1999"のバージョンに近いアレンジだ。サビの部分、ワンコーラスずつメンバーが順順に引き継いで歌う。しかし、なんと気持ちのいい連中なのだろう、こいつらは。
当初、私はNeveの出演がホワイトステージであることに不服だった。グリーンでも充分演れるさ、こいつらなら。と、根拠のない確信が私にはあった。だけど、もうそんなことはどうでもよくなっていた。連中は間違いなく、このフジロック99に爪痕を残したのだ。
(99.8.29.)
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