ムーンライダース/Damon & Naomi 2005.6.23:NHK505スタジオ

NHK-FMで毎週水曜日夜に放送されている、ライブビートという番組がある。洋邦を問わずさまざまなアーティストのスタジオライヴを流す番組で、個人的には1年ほど前から聴き親しむようになった。収録は不定期にNHK内のスタジオで行われていて、今回試しに応募してみたところ、当選し観覧ができることになった。





 テレビの音楽番組の収録というと、フジテレビのFactoryには2度ほど参加している。NHKだと、5年半ほど前にポップジャムの収録に参加したことがある。このときは、会場はNHKホールだった。今回はNHK内のスタジオで、入るのはもちろん初めて。控え室というのも特になく、荷物を持ったままスタジオに入室。天井こそ高いが、アマチュアバンドが出演するようなライヴハウスくらいの狭さだ。


 時間近くになるとスタッフが登場し、簡単な説明をする。この日出演するムーンライダースとデーモン&ナオミの略歴を紹介し、観覧の応募状況についても触れる。今回は応募が多く、抽選になったとのこと。ムーンライダース目当ての人が多いらしい。そういえば、かなり年配の方も少なくない。鈴木慶一はこの番組のパーソナリティーも務めているので、ムーンライダースファン=番組ファン、という図式になっているのかもしれない。





 時間きっかりに、まずはデーモン&ナオミが登場。デーモン・クルコワスキーがアコースティックギター、ナオミ・ヤンはベースとキーボードを担当。他にサポートが2人いて、ひとりはサックス。もうひとりはギターで、つまりはドラムレスだ。このギタリストは栗原道夫という人で、日本のゴーストというバンドに所属。ゴースト自体デーモン&ナオミと親交が深く、ツアーで競演したり一緒にアルバム制作をする仲らしい(更に調べたら、ゆらゆら帝国のアルバムやツアーにも参加している人だとわかった)。


 デーモンがささやくようにカウントを取り、それを合図にして演奏が始まる。ヴォーカルは曲によりデーモンとナオミが交互に担当し、ナオミがリードのときはデーモンがコーラス、といった具合。ドラムレスでアコースティック主体ということもあるのか、曲調はソフトで浮遊感を感じさせ、独特の空気感を醸し出している。客の方も、発言はおろか咳払いすることもはばかられるような雰囲気で、ステージにじいっと魅入っているという感じだ。


 中盤になり、更にサポートの人が登場。栗原と同じくゴーストからで、馬頭将器という人だ。やはりアコースティックギターで、デーモンとのコンビネーションにより優しいギターの音色に厚みが増す。ナオミはベースからキーボード重視になり、なんと日本語詞で2曲ほど歌っていた。相変わらずのソフトなギターポップで、ただ間奏になるとサックスの音色が踊ったり、栗原のギターソロが唸ったりと、それなりに見せ場を作る。


 私はギャラクシー500のアルバムはひと通り聴いているのだが、デーモン&ナオミの作品については未聴だった。とはいえ、ギャラクシーの冷たくも激しいギターロックの世界観は多少なりとも継承されていると思っていたので、正直このギターポップ然としたたたずまいには面食らった。しかしよくよく考えてみると、ギャラクシーでギターを弾いていたのはディーン・ウェアハムの方だし、ギャラクシーの軸となっていた部分はディーンすなわちルナの方に継承され、デーモン&ナオミはより自由に音楽性を追求していくようになったのかな。結局彼らのライヴは、約1時間くらいで終了した。





 約15分のセットチェンジを経て、いよいよムーンライダース登場。メンバーは6人だが、立っているのはギターの白井良明とバイオリンの武川雅寛の2人だけで、他の人は椅子に座ってスタンバイ。やっぱり、歳・・・なのかなあ。それはともかく、客の方も今度は幾分テンションが上がっている感じがしていて、そんな中で演奏がスタートする。


 今年で結成29年だそうで、メンバーおのおのの芸達者ぶりが当たり前のように披露される。サウンドの傾向は曲により変わり、フォーク~ギターロック~サイケデリック~フュージョンといった、さまざまな面を見せる。白井のギターが軸になっている曲があれば、武川のバイオリン~トランペットが映える曲もあり、鈴木慶一の朴訥としたヴォーカルにも味がある。そして驚くべきことに、全般的に音が若い。音響もクリアで、6人それぞれが発している音が手に取るようにわかる。さすがはNHK。


 MCは、やはり鈴木慶一が担当。ドラムのかしぶち哲郎は現在療養中だそうで、カーネーションというバンドの若くて渋い人が代役を担当。また、座っているのはこれがラジオ番組の収録なので視覚よりも音重視で、またこの方がミスが少ないから、だそう。そして、足を捻挫しているそうだ(お大事に)。久々にPVを作ったらどこかの番組で1位になって、PVも作ってみるものだ、なんてことも言っていた。


 個人的には2001年のフジロックでムーンライダースのライヴを観たことがあるのだが、そのときは重鎮、職人という雰囲気が漂っていて、存在感の大きさをひしひしと感じたステージだった。しかし今回は、狭いスタジオ内で間近で観ているという物理的な好条件もあってか、まずは演奏そのものの精度の高さに唸らされ、そして発せられている音が少しも古びておらず、今の時代の感覚に合ったかっこよさを備えていることに驚かされた。風格と余裕を漂わせながらも、今なお第一線で勝負せんとする意気込みが感じられた。


 よもやのアンコールもあり、こちらのライヴも1時間程度で終了。今年のライヴ活動はこの日の収録を以って全て終了するそうで、この後はクールダウンに入るらしい。一方、来年は結成30年を迎えるので、それにリンクして何かやりたい、ファンにはお金を使わせるようなことをいろいろしたい、と鈴木は言っていた。まだまだ元気でいろいろやってくれそうだし、この人たちのように歳を重ねることができたらいいなあ、と思った。






 トータルで約2時間半に及んだ収録は、トラブルもなく無事終了。ステージの左奥には白い大きなボードがあって、出演者のサインで埋め尽くされていた。またライヴ中は、番組スタッフがデジカメで演奏の様子を撮影。これは、後日HPの方にアップされるのであろう。今回の収録は、ムーンライダースが7月6日に、デーモン&ナオミは7月13日に、それぞれ放送される予定だ。


(2005.6.26.)



















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