椎名林檎(Pop Jam公開録画) 2000.1.24:NHKホール

ダフ屋がうようよしている。ポップジャムは入場無料で、ハガキ応募による抽選によって会場に入場できる仕組みだというのに、これはゆゆしき事態だ。足元見やがってからに。私は開演20分ぐらい前に中に入り、ロビーにて少し食事。そして5分前に着席する。テレビ番組の収録に参加するのは生まれて初めてだが、スタッフによる前説で拍手の練習などさせられると、おおこれがテレビかや、と妙な感慨に浸ってしまう(笑)。


 同番組は毎週土曜日夜11時から放送されているNHKの音楽番組で、この日は2/5分と2/12分を収録する。ステージ前は広くスペースが取られ、クレーンやテレビカメラが多数配置。そして、カンペを持ったスタッフが陣取っている。ステージ上は三日月のようなセットが両脇に備え付けられ、司会者とアーティストがトークをするブースは向かって左側に設置されているという具合。





 午後7時20分。場内が少しだけ暗くなり、ナレーションによって収録がスタートする。トップはイエローモンキー。途端に場内大騒ぎ。ワーッ、ギャーッ。・・・う、うるさいっちゅうの(笑)。黄色い声が炸裂しまくって曲がまともに聞こえない。私の後ろの列も、イエモンファンの女の子が6人連なっていてギャーギャー騒ぎ立てている。個人的にはフジロック97以来のイエモンのナマなのだが、本人たちはともかくファンの気合いが凄まじいのを改めて実感する。


 イエモンが終了し、セットがチェンジ。司会である柘植アナウンサーと爆笑問題のトークとなるが、私のいるところが3階席だということと、イエモンファンの絶叫が収まらないことからトークがほとんど聞こえない。こうした中、かろうじて聞き取ることのできる柘植アナの声に神経を集中させてみる。




 「ポップジャム初登場・・・」




 「カリスマ女性ヴォーカリスト・・・(おいおい)」




 ん、まさか・・・、と思ったら、あのイントロだ。




 な、なんと『本能』っ!!




 いつのまにかバンドがスタンバっていて、そしてステージ右側袖の方から林檎嬢が姿を見せる。うおおおおっ。ちょっと早いが、ついに出た!場内は、意外や先程のイエモン登場時にも匹敵する大ヴォリュームの歓声。そして彼女の手には拡声器が!




I just want to be with you tonight・・・




 林檎嬢のいでたち、イナズマのようなプリントの入ったオレンジの長袖シャツ。それにジーンズというラフな格好だ。髪には若干パーマがかかっているようにも見える。前かがみというか、若干体をくの字にしならせたような感じでマイクスタンドにへばりつくようにして歌い上げる。マキシ2枚が1/26に発売されること。この収録の放送日が2/5であること。・・・などから、披露されるのはマキシからだとばかり思っていた。なので、不意打ちを食ったというか、嬉しい誤算というか。よもやのナマ『本能』に打ちのめされる快感。衝撃。そして、そのすぐ後にいいようのない喜び湧き上がってくる。


 曲を歌い終わり、林檎嬢のMC。ココ(NHKホール)は自分が今まで演った中でいちばんデカい会場で・・・、とぽつりと漏らす。少し圧迫感を感じている様子である。昨年クアトロで初めて林檎嬢のライヴを観たとき、私は(この時点での)林檎嬢は、クアトロのような密閉感ありありのハコでこそその魅力が最大限に生かされるという印象を持った。あれから10ヶ月弱経過したが、今の彼女ならホールクラスのハコで、数千人の客を前にしても充分すぎるくらいのパワーとオーラを放っている(学エクの昭和女子大は既にホールだったし、ね)。


 続いては自らギターを手にしての『ギブス』。言わずと知れた、1/26に発売されるマキシのかたっぽである。登場時の大熱狂とは打って変わって、場内がしんと静まり返る。まるで、観客ひとりひとりと林檎嬢との間に目に見えないパーソナルな回線が張られ、つまり3000本の回線がホール内を飛び交うかのように、みんなして林檎嬢を食い入るように見つめている。この切々とした音色、どことなくレディオヘッドチックだな、なんてことも思ったりする。やがてスパークするサビの部分へ。熱唱しながらギターをかきならす。ギターの位置がかなり低い。ああ、今日ここに来てほんとうによかった。自分が洗われる感じがした。














 演奏が終わり、続いては林檎嬢と爆笑・柘植アナとのトークとなる。相変わらず聞き取りにくいのだが、ポップジャムに初出演しての感想、曲やアルバムタイトルのネーミングについて、"新宿系"ということばのルーツについて、拡声器について、・・・などの話題で話がはずんだ。トークの締めとして、次に登場するグレイプバインの曲を林檎嬢が自ら紹介する。




 この後はモーニング娘。に多大な時間が割かれる。てっきり林檎嬢は御役御免になったのかと思いきや、再び登場。林檎嬢はイエモンのファンでもあるそうで、この収録分のトリとして再登場したイエモンと初対面を果たす。正直こうまで林檎嬢が露出するとは思わなかった。歌うだけ歌って後はとっとと帰ってしまうのでは、と予想していただけに、番組側の好意的とも思える姿勢もなんか嬉しかった。














 私にとってのポップジャムはもちろん林檎嬢に終始していたのだが、それでも収録は最後まで見届けた。2/12収録分では郷ひろみがさすがと思わせるスター性を随所に発揮し、知念里奈と鈴木あみが花を添え、アジアツアーの合間を縫ってプロモ来日しているサヴェージ・ガーデンが口パクで曲を披露した。





























 もちろんたった2曲なんてヴォリュームとしては物足りない。それにテレビ番組の収録という限定された状況の中では、林檎ワールドを如何なく発揮というわけにはいかなかっただろう。それでも、10ヶ月ぶりに観たナマ林檎は一層たくましくなっていた。一層美しくなっていた。単なるキワモノ、一発屋に終わらない、底知れぬ才能と実力の片鱗を見せつけてくれた。それが確認できたことが嬉しかった。この4月からは2度目の全国ツアー「下剋上エクスタシー」がスタートする。そのときに、また林檎嬢にお目にかかれるのが楽しみである(チケット頑張って取らなくては)。




(2000.1.25.)




































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