ストレイテナー 2005.4.16:Liquid Room Ebisu

恵比寿のリキッドルームに入るのは、今回が初めてだった。入り口を入るとすぐ階段で、上がってみると広いスペースになっている。バーカウンターやコインロッカーがあり、物販もここに設置。リキッド入り口は、上がってきた階段のすぐ隣の階段を降りたところにあるという具合だ(以前のリキッドの階段地獄が懐かしい)。整理番号順に整列するというのはなく、開場時間になると係の人が番号を呼び、該当の人が階段を降りて入って行くという段取りだった。客層は若く、Tシャツ姿で首にタオルを巻いている、臨戦態勢のファンが多い。





 この日のライヴは、ストレイテナーのワンマンではなくゲストがいて、定刻過ぎに登場。そのゲストというのはスモウガスで、個人的には去年のソニックマニアで少し観ている。5人組で、ギター、ベース、ドラム(女性)、そしてヴォーカルが2人という編成だ。ライヴを引っ張るのは2人のヴォーカルで、狭いステージ上を右に左にと何度も行き来し、ジャンプをかまし、場内の熱を上げんと頑張っている。音はラウドなロックで、ヴォーカルはヒップホップ調。もろヒップホップという曲もあるが、ヘヴィーなサウンドとうまくバランスの取れた曲が多く、好感を持った。演奏は、リズム隊の技量の良さが際立っている。


 彼らはどうやらストレイテナーのメンバーとも気心の知れた仲のようで、ヴォーカルのひとりはホリエと最寄り駅が同じだとか、コンビニで立ち読みしているところを声をかけられたとか、そんなエピソードを披露。他には、ミニアルバムをリリースしたばかりとか、6月5日にここリキッドでワンマンライヴをやるとか、そんなようなことを言っていた。場内はストレイテナーTシャツを着たファンが圧倒的に多かったので、スモウガスへのリアクションはどうかなと思ったのだが、割かし好感触。そんなこんなで、彼らは約50分に渡ってライヴを繰り広げた。





 セットチェンジには約20分ほど費やされ、午後8時10分過ぎに再び場内が暗転。SEに乗るようにして、ストレイテナーの3人が登場する。オープニングはなんとアンダーワールド『Born Slippy』のカヴァーで、しかもこれをギターのシンプルなリフをイントロとして始め、ドラム、ベースを含めた編成だけで演奏。エレクトロニクスを駆使したダンスチューンの原曲とは異なるバンドバージョンで、聴いていて新鮮だ。ホリエの英語でのヴォーカルにも違和感がない。


 1曲挟んで、新譜『Title』の冒頭3曲を曲順もそのままに演奏。泣きのメロディと突き刺さるようなサウンドが相俟っている『Sad And Beautiful World』。上昇モードでサビは大合唱を誘う『Play The Star Guitar』。そして『泳ぐ鳥』だ。私は後方の一段高いところから観ていたのだが、ステージと同様にフロアにも視線が行く。そのフロア前方から中央部にかけてはモッシュ合戦が凄まじく、また曲に合わせるようにして、一斉に手を上の方にかざす仕草も美しい。場内のテンションは、一気に上がった。


 メンバーは3人ともTシャツ姿だ。ヴォーカル&ギターのホリエは向かって右で、間奏に入ると半身になって上体を大きく揺さぶりながらギターをかきむしる。ベースの日向は向かって左に陣取っていて、この人は終始暴れながら弾いている。首を前後に大きく振り、スペースを十分に使って歩き回り、時にはドラムセットの方を向きながら演奏することも。ドラムのナカヤマは、長髪を振り乱しながらスティックを叩き、またバックヴォーカルでホリエとのハーモニーを奏でている。最小限のバンド構成であるトリオなのだが、音のすかすか感はなく、それどころか音圧の分厚さに驚かされる。ホリエはギターを交換することはなく、1本で勝負だ。


 演奏は、曲間を切らさずに3~4曲を立て続けに演って、その後ミネラルを取ったり汗を拭いたりするなどの若干の休憩が入るという具合。演奏中はファンも大騒ぎしているが、それがメンバーの休息になると、一転してしぃんと静まり返る。次の一手が放たれるのを、じいっと待っているような緊張感が漂い、ことばを発するのがためらわれるような雰囲気だ。そして再び演奏が始まると、フロアも再び大騒ぎになる。CDで聴く限りではハードなサウンドとポップなメロディーとがちょうどいい塩梅になっているように思えたのだが、ライヴの場では徹底してハード、徹底してラウドだ。





 私がこのバンドを知ったのは、全くの偶然だ。2月の中頃だったか、CDショップに立ち寄ったときに曲が流れているのを聴き、日本人らしいが洋楽のテイストが多分に漂う、センスのいいバンドだと感じた。彼らが何者なのかを知りたくなり、レジの手前に「今流れているCD」として「Title/ストレイテナー」とあるのを確認した。帰宅後少し調べてみて、ソニックマニアの初日に出演していたことを知った。私は2日目は行っていたのだが、初日も行けばよかったと、後悔した。


 彼らは2月からワンマンのツアーも行っていて、東京圏の公演は全て完売状態。彼らの人気が、既に一部では尋常でなくなっていることを知る。音楽誌ロッキンオンジャパンでは、『Title』がディスクレビューのトップで紹介されていて、まさに彼らは今上昇気流に乗った状態にあることを痛感。そんな中、追加公演の発表があって、私はなんとかチケットを入手でき、この日この場にいることができたわけだ。こういう半ば勢いに近い流れで、しかも日本人のバンドで、私が単独公演を観に行くことは、非常に珍しい。


 彼らのたたずまいからは、決してカリスマ性もオーラも感じられない。若い兄ちゃんがバンドをやってます的な感じで、今どきこんな連中はプロアマ問わずいくらでもいると思う。ではあるが、ひとたび楽器を手にし演奏を始めたときに生まれる躍動感や圧倒的な音には、タダ者ではないと唸らされてしまう。いいタイミングで彼らに出会ったからかもしれないが、若くてイキがいいバンドのライヴというのは、すこぶる気持ちがいい。今この瞬間を楽しめる上に、今後もっと飛躍してくれるんじゃないか、もっとビッグになってくれるんじゃないかという、期待感も抱けるからだ。





 序盤のテンションの高さを切らすことのないまま本編が繰り広げられ、そしてアンコールも3曲。約1時間20分くらいのライヴになったが、時間うんぬんよりも密度の濃いライヴだった。MCは先のスモウガスに比べると少なめで控え目だったが、6月にはシングルをリリースし、同月末にはZepp Tokyoでワンマンを行うことをアナウンス。またMCにはなかったけど、今月末には仙台のArabaki Rock Festivalに、8月にはサマーソニックに出演。自らのツアーもこなし、野外フェスにも参戦し、と、精力的な活動は今後も続く。





 ゲスト出演のスモウガスといい、そしてストレイテナーといい、共に素晴らしいライヴだった。これでチケット代3,000円、チャージ代を加えても3,500円だなんて、なんてお得なライヴだったのだろう。そしてこの2つのバンドは、そう遠くないうちに日本のロックバンドの中で頭角を現し、より広く認知される存在になっていくのではないだろうか。




(2005.4.18.)



















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