浜田省吾 2001.11.25:代々木競技場
初めて浜田省吾のライヴのチケットを取ったのは、まる5年前の11月の代々木公演だった。しかし急遽職場から土曜出勤を強いられ、泣く泣くチケットを手放した。2度目は今年10月の横浜アリーナ公演。このときは、取った1週間後に友人から結婚式の通知が来てしまい、やはり泣く泣く手放した。が、代わりにこのチケットをお譲りした方からは熱い感想をいただいていた。私にとっては今回の代々木が3度目の正直であり、中学生のときに『ラスト・ショー』のヒットで浜田省吾を知ってから実に20年を経て、ついに初のナマライヴ体験である。
開演時間きっかりに客電が落ち、マーチ風のイントロ(ローリング・ストーンズ『Rock'n Roll Circus』のオープニングと同じもの)が響く。ステージは6本の太い鉄骨がアーチ状に伸びていて、バックの大きなスクリーンには古い映画のモノクロ映像が流れる。浜田が今行っているツアーのタイトルは"ON THE ROAD 2001"。このツアーは4年越しで断続的に行われ、今年は9月1日より再開している。そのテーマは"THE SHOGO MUST GO ON"。浜田が贈るロックン・ロール・ショウなのだ。
ステージが少しだけ明るくなり、ドラムセットの少し前方から人影がせり上がってくる。それが浜田省吾その人で、アコースティックギターを弾きながら歌い出す。曲は、新作『Save Our Ship』の冒頭を飾る『青空』。バックの映像も天空に広がる青い空と白い雲になり、やがてそれは曲が終わる頃には夕暮れへと変わって行った。続いては『裸の王達』。バックの映像は燃えさかる炎となる。
きょうは2001年の11月25日
産経新聞にはどんな記事が載っているのか・・・
アフガン攻防、景気対策、強盗などの犯罪・・・(以下略)
世の中ではさまざまなことが起こっています
非常に厳しく、辛い世の中、
しかし私たちは、この辛い世の中をしのぎ、
耐えて行かなくてはならない
何があっても、ショウは続く!
何があっても、ショウは続けなくてはならない!
THE SHOW MUST GO ON !
THE SHOGO MUST GO ON !
力強い浜田のことば。突き上げられる拳。応えるオーディエンス。これが浜田省吾の世界なのか。初めての私には何もかもが新鮮であり、そして同時に意外でもあった。私は浜田省吾という人はもっとクールで、もっとストイックなライヴをする人だと思っていた。オレの音楽がわかるヤツだけがついて来ればいい・・・といったふうにほとんど何も語らず、淡々と演奏を続けるのでは、と勝手に予想していた。しかしそうではなく、自らのライヴを"ショウ"と位置付け、エンターテイメントとして成立させんとしている。そこにあるのは、ファンを愛すればこそ、ファンを楽しませようとすればこそという想いなのだろう。
序盤は新作を中心に、90'sにリリースされたアルバムからの曲が続く。80'sにおいて既に何度かピークを迎えている人だけに、90'sから現在までは、作品を産み出すに当たって背負うプレッシャーは相当なものであったに違いない。その浜田を支えるバンドはかなりの大所帯だ。浜田の右にはギタリストが2人。左にはサックスとピアノ(この人はCharや井上陽水のツアーもこなしているのだそうだ)。後ろは高い段になっていて、向かって右はキーボードとベース。浜田の真後ろにはドラム。そして後段の左は、女性4人によるストリングス・カルテットである。こうしたメンバーのバックアップを受けて、浜田は力強く歌い上げる。今日ここに来てくれた女性たちのために、と言って歌った『モダンガール』。と来れば次は男の番だ。
男には、大切なものが2つある
ひとつは、女だ
もし世の中に女性という存在がなかったら、
男の人生はとても空しく、そして寂しいものになってしまう
だからオレたち男は、女性のことをとても大切にしなくてはならない
もうひとつ、
それは時にいろいろと形を変えるが、
やっぱり、これだ
そう言って、ビートルズの『Money』をワンコーラスだけ歌う。「that's what I want...that's what I...that's what I...that's what I...」と連呼し、次の瞬間に響いたのは電撃のイントロ。そう、今度は浜田自身の『Money』だ!唸るギター、響くバスドラ、オーディエンスの歓声は嫌が上にもヴォリュームが上がり、場内は最初のピークを迎えて興奮の坩堝と化す。
疾走感に溢れながらどこかなつかしさを感じさせる『DANCE』を経て、打ち込みを駆使した、キャリアを通じてもかなり異色と言える『境界線上のアリア』で第1部が終了。この後約15分の休憩となる。浜田自身の口から、この日のライヴがかなり長時間に渡って行われることが告げられた
The Shogo Must Go On ...