Mansun 98.9.18:On Air East
『Second Coming』The Stone Roses
『(What's The Story)Morning Glory?』Oasis
『Modern Life Is Rubbish』 Blur
『The Bends』 Radiohead・・・
以上、90'sを代表するUKバンドのセカンドにして傑作の評価の高いアルバムである。しかし、『Six』は、これらのどのアルバムよりも衝撃的、にして、完成度の高いアルバムだと思った。よもや、20世紀も終わりに近づいたところで、こんな度肝を抜かれるような凄いアルバムがイギリスから届けられようとは思いもしなかった。
なのに・・・。
こんな日に限って次々に仕事が飛び込んでくる。なかなか仕事を切り上げられず、結局渋谷に着いたのが7時10分。小走りで息を切らしながら会場に向かう。On Air Eastが見えてきた。当然のこと、ライヴはもうスタートしている。ドンドコ言ってる音が聞こえる。7時17分ぐらいに入場する。チケットの半券を切ってもらい、期待に胸を膨らませながら、ドアを開けた。
ありゃ!?
静かだ。
客が。
それも、演奏にのまれて見入ってるわけでもない。ただ突っ立って見てるような感じだ。もしかして前座なのか?で、次に視点はステージへ。いや、前座ではない。ポールだ。チャドだ。やっぱりマンサンだ。でも、こんなはずはない。こんな後ろの隅っこの方なんかで見ているからダメなのだ、と考え、前の方ににじり寄って少しでもステージに近づいてみることにする。
延々とインプロを演奏しているのだが、はっきり言って冗長なだけで散漫だ。いったいどうしたというんだ。マンサンはライヴバンドではなかったのか?わずかにステージ直前の客だけが騒いでいるのみではないか。
アルバムタイトル曲である『Six』が演奏される。まだ見ぬ生命が息吹を始める瞬間のようなイントロ、その後急加速で成長して生き急ぐその一生を凝縮したかのような演奏、この1週間、私の頭の中でぐるぐる回っていた曲で、期待していたのだが、ライヴ映えしていない。曲そのものが難解すぎてライヴでは再現不能なのか。2月のオアシスの武道館公演、『D'You Know What I Mean?』もそうだった。バンドが一段上の高みに上り詰めたことを示す曲で、ともにアルバムの頭を飾るに足る素晴らしい曲なのだが、『D'You Know ~』にも、目の前の『Six』にも、ぞくぞくするモノがない。クるものがない。ただなんとなく演奏しているようにしか見えない。
曲はアルバム『Six』一辺倒、ではなく、ファーストからも選ばれて満遍なく演奏されている。しかし、そのサウンドの核となっているのはやはりgだ。なのに、ポールはほとんどgを弾かない。なんかうろうろステージ上を歩き回っていて、時折袖の方へ行ってスタッフに耳打ちしたりしている。戻ってきてまた歌ってみるが、ヴォーカルも弱い。弱くてよく聞こえない。そういえばkeyもないな。ハウリングもひどくて音割れが凄い。
さっと引き上げるメンバー。時計を見る。7時45分。早い。早いぞ。私は遅れてきたので、ここまで30分しか見ていない。なんか、他の客もあっけにとられた感じで、慌ててアンコールを求める拍手をする。が、それもまばらだったりする。後でわかったことだが、ほぼ定刻通りに始まったらしい。それにしたって短いよ・・・。
もちろんアンコールで出て来る。『Legacy』を含め4曲ほど演って、そして終了した。トータルで1時間5分くらい、ということになる。短い。というか、単に演奏時間が長い短いだけではなく、この時間の間に彼らは何かを残すことができたのだろうか。彼らはこの極東の国の狭い箱の中で、何かを感じ取ることができたのだろうか。彼らは最後まで客にコミュニケーションを求めることはなかった。かと言って、演奏そのもので客をねじふせたわけでもなかった。ここは武道館でも東京ドームでもない。On Airなのだよ。前の方で見たとか、後ろの方で見たとか、そんなことじゃなく、これぐらいの客全員ををねじふせられなくってどうするの?アンコールではそれまでより盛り上がった客が増えていた。それだけが唯一の救いなのか。
帰りの電車で『Six』を聴き直す。やはり、いい。全身総毛立ちになる。
本当に同じバンドが作ったアルバムなのか?
同じバンドのライヴだったのだろうか?
私の期待が大きすぎたのか?
遅刻した私が悪いのか?
最初から見ていれば違った感触を得られたのだろうか?
・・・予想だにしない結果だった。
(98.9.20.)