Oasis 98.2.20:日本武道館
オアシスの武道館公演、私は20日のに観に行って来た。今や伝説となりつつある九段下駅から連なる「チケット譲ってください」のカードを首からさげた人たち、そしてダフ屋さんたち。しかもこの日は強い雨だった。しかし私は車で行ったため皇居側の道路から入り、それを目の当たりにすることはなかった。それでも駐車場の中にもダフ屋が何人かいて、「余ってないかい?」と何度も呼び止められた。オアシス恐るべし、と改めて痛感。この日に備えてオアシスのCDがヘヴィーローテーションになっていたのは言うまでもなく、オアシスのビデオを観、本「グローリー・オブ・オアシス」を通勤の電車の中で読み(オアシスの本はいくつか出ているが、この本はバンドの元ボディーガードが書いたもので、暴露本のようなドロドロした面はなく、バンドのツアーの様子が表わされている。また、この時点での全アルバムと全シングルの解説、更にはアールズコートのライヴレポートもあってお薦めです)、一緒に見に行く友人には毎日のようにメールを出してお互い盛り上がり、Webで来日前のアメリカ公演のセットリストを入念にチェックし、そしてついにこの日が来た。
同じ職場の人が初日(18日)に観に行っていて、スタンド席は座って見てる人が多かったとか、前座は流して観るようにした方がいいとか、ネガティヴな情報が多かったので少し心配していた。前座はその通りに流し(もっと小さい箱ならそれなりに盛り上がれたかもしれない。武道館はYou Am Iにはちょっとキツかったかも)、いよいよ本命が登場する。
てっきり『The Swanp Song』がイントロでくるのかと思ったら、いきなりの『Be Here Now』だった。アルバム『Be Here Now』は、曲名も曲調もストレートで断定的で今までに輪をかけて自信に満ち溢れている。そのタイトル曲をもってきて、まずはつかみはOKってところか。そして『Stand By Me』『Supersonic』『Roll With It』『D'You Know ~』とヒットシングルを連発。もはや日本ではTVとタイアップしなければ曲なんて売れないのに、洋楽の曲でこれほどまでにわかりやすく、みんなで歌える曲が連発しているのはやはり奇跡に近い。リアムは相変わらず腰を落として手を後ろに組んでほとんど直立不動で歌い、ノエルは脇でgを奏でる。しかし他の3人はほんっとに地味だった。不思議なバンドだ。
ノエルのアコースティックでは、なんと『Setting Sun』を、しかもなんだかエスニックなアレンジで演っていた。これ贔屓目に見ればライヴでは世界初では?あと、後半に演るはずの『It's Getting Better(Man!!)』はカット。この時、私はもしや『All Around The World』を持ってくるのでは!?と期待してしまったが、結局なし。会場外にはWowowの中継車があり、ステージでもビデオカメラが撮りまくっていたので、これ後でやるのかな?(→5/16に放送しました)
個人的には、2年半前の公演(95.8.22 Club Citta)と常に頭の中で比較しながらのステージだったが、この日私が感じたのはライヴハウスクラスからアリーナクラスへと変貌を遂げたバンドに対する「興奮」や、バンドとオーディエンスが一体となって合唱することへの「感動」、ではなく、オアシス=ノエル'sバンドになってしまったのかと思える程の「驚き」だった。随所に炸裂するギターソロ。『Supersonic』のイントロ、『Cigarettes & Alcohol』のアウトロでの『Whole Lotta Love』(!)や『Heartbreaker』(!)のフレーズ、『Champagne Supernova』で延々と繰り広げられたいつ終わるとも知れないパフォーマンス…。
しかし、圧巻だったのはアコースティックの『Fade In-Out』から『Don't Look Back In Anger』へとなだれ込んだときで、この時は武道館を軸にして地球が自転しているのではと思える程全身がシビレてしまった。2年半前のノエルはただのっぺりと歌っているだけで、情けない『Whatever』や『All The Young Dudes』を聴かされて何じゃこりゃって感じだったが、今やリアムをも完全にねじふせた感があって(『Don't~』の後の『Wonderwall』でのリアムはその前のノエルに負けていた。そう思った。)、むしろ逆に先行きを心配したくなった程。
それにしても・・・、Webで既に確認済みだったとはいえ、トータル95分はやはりちょっと物足りなかった気がする。武道館でこんなに短かったライヴは始めてだ。リアムはベストコンディションには見えなかった。前回の来日公演よりよかったのは当たり前だが、それでも疑問符はつく。もしかしてまたもや過度期の来日だったのか。
今回のツアーは3月で終え、バンドはオフに入り、年末にシングルにのみ収録だった曲を集めてアルバムをリリースするという。アルバム『Be Here Now』は、間違いなくバンドのこれまでの活動を総括する作品であり、この後彼らがどういう方向に向かうのかとても興味深い。U2やパール・ジャムが克服してきたハードルを彼らがどうやって乗り越えるのか?考えられる次作の方向性としては、1つは自らのルーツに立ち返った作品。もう1つは時代の音と向き合い、それを吸収した"問題作"。そんなことを思いながら武道館を後にした次第です。
(98.2.21.)
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