Fuji Rock Festival'06/Day 1-Vol.1 忌野清志郎/Global Cool/ザ・クロマニヨンズ
11時近くに会場入り。毎年のように、グリーンステージではテーマ曲『田舎へ行こう』が流れた。がしかし、今年はこの曲が懐かしくも少し寂しく聴こえてしまったのは、私だけではないはずだ。忌野清志郎は、今年自身のバンドに仲井戸麗市を迎えた編成で活動していて、フジロックには3日目グリーンステージのトリ前としてブッキングされていた。のだが、開催2週間前になって、当の清志郎が喉頭ガンのため入院。フジロックはもちろん、他のフェスや自身のツアーも全てキャンセルとなってしまったのだ。
この人の人間及びアーティストとしての素晴らしさは、私も感じているつもりだし、そのきっかけになったのは他ならぬフジロックだった。98年に最初に出演したときは、そこそこテレビに出ていて芸能界に片足を突っ込んでいる(ように思われた)清志郎は、オーディエンスには決して好意的には受け止められなかった。しかし清志郎は、自らのパフォーマンスそのものでそのアーティスト性を立証し、当初は反感の方が強かった場内のムードを、ライヴの最中にひっくり返してしまったのだ。フジロックはこれまでに劇的な瞬間を数多く刻んできたが、このときの清志郎もそのひとつだった。
98年以降、毎年何らかの形で出演し続けている清志郎は、いつのまにかフジロックの顔的な存在になっていた。全てではないが私も何度も観たし(特に2002年は)、フジでこの人のステージが観られることは、半ば当たり前のように感じていた。それが、今回こうした形でその姿が観られなくなるのは、とても残念だ。もちろん理由が病気では仕方がないことで、ただ幸いにも早期の発見だったと聞いているので、ゆっくり治療をし回復に努めてほしいと思っている。
グリーンステージには、毎年お馴染みの2人のMCが登場し、その2人にナビゲートされる形で日高社長が現れ挨拶をした。そして今年のフジロックは初日をグローバル・クール・デイとしていて、今度はその団体の人が日高社長の紹介で登場した。フジロックは単なる音楽イベントではなく、環境問題に取り組んできた野外フェスティバルだ。それは、天神山スキー場で行われた第1回のときに大量のゴミが発生してしまい、翌年その場所の使用ができなくなったという苦い経験があったこともその一因だ。そして、2年目以降環境問題に取り組んできた成果は、いちおうではあるがあったと思っている。
グローバル・クールは、二酸化炭素排出削減などで地球温暖化の防止を呼びかける、世界的な団体だそうだ。代表の人は数年前からフジロックに関わっているそうだが、今回はよりこの団体や団体の活動のことを知ってもらおうと、ある著名人をこの場に連れてきていた。その著名人とは、なんと俳優のオーランド・ブルームだった。オーランドは彼女であるケイト・ボスワース(映画「スーパーマン・リターンズ」のロイス・レーン役)を同伴し、ここでの声明のためだけに来日したとのこと。声明そのものは短くシンプルだったが、この場にいた多くの人が興味を示したに違いない。そして、興味を示してもらうことこそがこの場合の著名人の役割であり、欧米の著名人はそのことを承知した上で活動しているはずだ。日本も、今後そういう方向に向かうのかな。
この後は朝食兼昼食を摂り、そして移動を開始。林道を歩き、ところ天国の脇を通過し、橋を渡ってホワイトステージにたどり着いた。初日の昼とは思えないくらいに多くの人が集まっていた上に、更にどんどん人がやってきて、早くも入場規制寸前の状態に。こういう事態を引き起こした張本人は、「新人バンド」のザ・クロマニヨンズだった。
一週間前に大阪のフェスに出演しているクロマニヨンズは、その時点で正体がバレていた。もちろん私もネットなどで情報を得ていたのだが、実際にこの目で確かめるまでは少し不安だった。そしてついに時間になったが、ステージに登場したのはやはりあの2人だった。甲本ヒロトと、マーシーこと真島昌利だ!2人の姿が確認できただけで場内はどっと沸き、まだこちらが戸惑っているうちに彼らは演奏を始めてしまった。
バンドは2人にベースとドラムを加えた4人組で、これはブルーハーツともハイロウズとも同じ編成だ。マーシーはトレードマークのバンダナを額に巻いてギターをかき鳴らし、ヒロトは最初こそ黒のライダース革ジャンを着てシャウトしていたものの、すぐに脱ぎ去って上半身裸になった。そして肝心の曲だが、さすがにハイロウズを引きずっているきらいはあるものの、どの曲もコンパクトでパンキッシュで、そして疾走感に溢れていて、初めて聴くはずなのに既に知っているような感触がある。
実は私がヒロトとマーシーのライヴをしっかりと観るのは、第1回のフジロック以来となる。フジロック開催10回の象徴は、2日目にトリとして登場するレッチリのはずだったが、個人的には思わぬところで第1回の天神山を思い出すことになった。回を重ねるにつれて常連となるアーティストが出てくる一方、解散したり音沙汰がなくなったりするアーティストも少なくない。そんな中で、バンドこそ変わってしまったが、相変わらずロックしロールし続けている2人を観て、たまらなく嬉しくなった。ライヴは時間を持て余す形で予定より早く終了してしまったが、ヒロトは最後にしっかりズボンを下ろしお尻を出していて(笑)、思わずニヤニヤしてしまった。
(2006.8.23.)
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