Fuji Rock Festival'04 Day 3-Vol.3 Keane/The White Stripes/Graham Coxon







再びレッドマーキーへ。本国ではチャート上位に食い込んでいるというキーンを観る。ヴォーカル、ピアノ、ドラムの3ピースで、ギターレスの変則的な編成だ。音はメロディ重視であり、コールドプレイを大人しくしたような印象がある。しかしこのライヴの場では、ドラムのビートにメリハリがあり、そしてぽっちゃりめのヴォーカルがマイクコードを握りしめながら歌っている。実はこのヴォーカルくん、前日の自分たちと同じ時間帯に出演していたヤー・ヤー・ヤーズのライヴを観に来ていた。そこで、パフォーマーとして日本のオーディエンスを前にしたときに如何にあるべきかというのを、カレン・O嬢から吸収したのではないだろうか。終盤では大ヒット曲『Somewhere Only We Know』を放ち、すっかり場内を魅了した。





日も落ちて漆黒の世界になったグリーンステージでは、ホワイト・ストライプスが気を吐いていた。ザ・ミュージックや少し前のジェットがそうであったように、このユニットもフジ参加2度目にしてマーキーからグリーンに進出。しかも、モリッシーがドタキャンを食らわしたことにより、3日目グリーンはこのホワイト・ストライプスがトリ扱い(つまりは大トリってこと)になるのだそうだ。


ステージ上には、メグのドラムセット以外に機材は見当たらず、ジャックはメグに寄り添うようにして、ギターを弾きながら長髪を振り乱して熱唱している。ステージ上はスペース余りまくりだ。視覚効果に凝ろうと思えばいくらでもできる状態にあるにもかかわらず、そうしたこともまるでない。トリと言うにはあまりにも異様にして異質な光景だが、このシンプルさが欧米ではウケたようだ。演奏もほとんど途切れることがなく、マシンガンのように次々に曲が放たれる。互いに見つめあいながら演奏する2人の姿が、なんだかエロティックだ。場内はしいんと静まりかえり、2人のパフォーマンスを吸い込まれるように観ているという状態だ。





グリーンステージを後にして、細長い林道を歩いていく。ここは夜になるとさまざまな形の提灯が点灯し、幻想的な世界に彩られている。アーティストのライヴはもちろん楽しみではあるが、ライヴ以外の空間に対するこだわりも、フジロックを素晴らしい野外フェスティバルたらしめている要因のひとつだ。そしてホワイト直前の川や橋の手前のスペースには、無数の光が周囲を囲む木々に照らされ、神秘的な世界を繰り広げていた。このときはただきれいだなと感じただけだったが、フジが終わってからSwitch Publishingという雑誌のフェス特集号を読んだ。そこに日高社長のインタビューが掲載されていたのだが、見出しは「今年のフジは雪を降らす」だった。この無数の光こそが、夏の苗場に降る雪だったのだと気が付いて、私ははっとした。





3日目の個人的な最大の目当ては、グレアム・コクソンだ。ブラー在籍時代からソロアルバムをこつこつとリリースしていたグレアムではあるが、そのライヴは日本どころか本国イギリス以外では拝めることはないだろうと思っていた。それが最新作の『Happiness In Magazines』では、音そのものが非常に前向きになっていて、いろいろゴタゴタしていたとは思えない、吹っ切れた内容だった。その前向きな姿勢はライヴ活動としても展開された様子で、今回の来日及びフジ参戦となった。


そして、冒頭からその前向きなエネルギーは炸裂した。グレアム自身、人前に立ってライヴができるという喜びに満ちたかのような力強い姿勢だったし、それを観ている方もただただ嬉しくなってきた。これが、ブラー脱退だのアルコール依存症だのと、一時音楽活動そのものが危ぶまれた人のパフォーマンスだろうか。演奏は非常に軽快にして心地よく、ハイジャンプするグレアム自身の調子もよさげな感じだ。きっと、この人は解放されたのだ。ブラーからも、いろいろなゴタゴタからも。純粋に音楽と向き合うことに集中できるようになり、そしてそれを他者に伝えたいという気持ちになっているのだろう。





さて、グレアムのライヴも後半になったとき、あることが気になってそわそわしてきた。というのは、グリーンステージでは夜9時半からモリッシーの代役となるアーティストが出演することになっているのだ。出演する人によってはグリーンまで観に行こうかと思い、Cool Soundというフジの各ステージの様子を伝えてくれる携帯サイトをチェックし、リロードしてみた。すると、ジーズ・チャーミング・メンなるバンドが登場し、演奏しているとのこと。バンド名から連想できるように、なんとスミスのトリビュートバンドだ。


キツい。これはキツい。洒落になってない。モリッシーのドタキャンがフジ開催2週間前だから、トリクラスのアーティストを代役に持ってくることが難しいとは思っていたが、しかしこれはあんまりだ。ホワイトステージにいて携帯サイトを見ている私でさえ悲嘆に暮れているのだから、その場にいてこのバンドが登場し演奏する瞬間に居合わせた人たちのショックの大きさといったら、如何ほどになることだろう。


(2005.2.1.)
















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