Fuji Rock Festival'03 Day 1-Vol.4 Death In Vegas/Underworld
陽が沈み、雨雲で真っ白だった空は、今度は漆黒の世界へと生まれ変わる。しかし相変わらず雨足は強く、そして冷たい。レッドマーキーに行ってみるが、だいたいこうした天候だと、ココを根城にする輩が出てきて、特に後方は場所取り合戦になっている(気持ちはわからないでもないが、正直言ってやめてほしい)。
ライヴはデス・イン・ヴェガスで、新譜にはリアム・ギャラガーなどが参加したこともあって、話題性もあるユニットだ。しかし私はしっかりと聴いたことがなく、時代劇風のユニークなPVを、テレビで観たことがあるくらい。まずはDJがいつのまにかスタートしていて、その間ステージではセットチェンジが淡々と進められる。
準備が完了したときにライヴの方に切り替わったのだが、思ったほどプログラミングや電子音が前面に出ておらず、むしろギターやドラムといった生音の方が際立っていて意外だった。ステージ後方にはスクリーンがあって、曲にシンクロした映像が次々に流れている。個人的にクライマックスとなったのは、終盤に演奏された、ニュー・オーダー『Age Of Consent』のカヴァーだった。
夕食を摂った後、オーディオアクティヴのライヴは、マーキー後方のスクリーンで観た。のだが、正直言ってよくわからなかった(ごめん)。そして再びグリーンへ。さすがにトリともなると、ステージ前に集まる人の数もハンパではない。増して私は、昨年はグリーンのトリを1度も観なかったので、ただただびっくりするばかりだ。
アンダーワールドはここ数年コンスタントに来日しているが、私はことごとくパスしていた。その理由は、初めて観た99年赤坂Blitzのライヴがとても素晴らしかったことと、いつかフジロックのグリーンステージに立つ日が来るに違いないと、ずっと信じて待っていたからだ。果たして、その願いは叶えられたのだ。先ほどのデス・イン・ヴェガスと同様、いつのまにかDJが始まっていて、オーディエンスの中には、既に小刻みに体を揺らして踊っている人も。それがやがて、そのままライヴへと移行。リック・スミスとカール・ハイド。この2人がステージに姿を見せたとき、場内は大きくどよめいた。
序盤で早くも『Rez』、更には新作からのシングルでバンドの新しい顔でもある『Two Months Off』と、惜しげもなく代表曲が発せられる。しかしだ。私が99年に観たときとは、まるで別のたたずまいになっている。以前はほとんどメドレーで怒涛の攻勢といった感じだったのだが、今回は1曲毎にはっきりと「間」ができてしまっている。そしてもうひとつ。アンダーワールドにとって重要な表現手段であるはずの映像技術が、ほとんど駆使されることがない。巨大スクリーンに映されるのは、機材を操るリックに、歌いながらダンスするカールの姿だ。
もともとこのユニットに対してあまり明るくない私は、ダレン・エマーソンが脱退したことの意味を、はっきりと理解していない。そりゃ、3人が2人になったのだから、ユニットにとっては大きな転機になったはずだし、それはどうしたって音楽性にも影響が出る・・・と考えるのが普通だ。でもって、私が受け止めるその差異だが、それは良くも悪くも「人間臭くなった」ということだ。音と光と映像とがシンクロし、モンスターのように襲ってきたのがかつてのユニットのありようとすれば、今の彼らは、そのモンスターはこうやって操っているんだというからくりを、隠すこともなくさらけ出しているように見える。
クライマックスはもちろん『Bone Slippiy』で、最早お約束というか、水戸黄門の印籠状態。わかっちゃいるけどやってくれ。やらなかったらタダじゃすまんぞ(笑)~という曲になってしまっている。もちろんオーディエンスも熱狂するに決まっていて、グリーンステージは巨大ダンスフロア状態と化す。この曲で本編を締めくくるのだが、サービスよくアンコールも披露してくれた。
待ちに待ったはずのアンダーワールドのライヴだが、終わってみればいろいろと考えさせられる結果となった。彼らがフジロックに生還し、グリーンステージに立つのが、あまりにも遅すぎたように思えた。この秋にはベスト盤をリリースするそうだが、もしかすると、音楽的にも転機を迎えているのではないだろうか。ただ逆に考えると、99年に観たということが、タイミングとしてあまりにも良すぎたのかもしれない。
何度も書いているように、この日は1日中雨降りだった。しかしアンダーワールドのライヴのとき、少しの間だが雨は止んでいた。往年の勢いを失った彼らが、人間臭く必死にあがいているのが、天に届いた瞬間ではなかっただろうか。
(2003.9.9.)
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