Fuji Rock Festival'02 Day 2-Vol.1 DRAGONDOLA
初日はとても暑かったが、2日目の朝は幾分和らいだようだ。やはり初日と同じように朝9時前後に会場入りし、同じポジションにシートを敷く。グリーンステージでは、マイクチェックやセットの配置に加え、この日トップの渋さ知らズオーケストラの面々と思しき人たちがリハーサルをしていた。ライヴの前にタネがわかってしまうのもなんだかなあと思ったが、渋さは47人という大所帯でもあるので、オーディエンスを前にしてリハをするのも責められない。逆に考えれば、フジロックに出演するアーティストのほとんどは、リハーサルなしでライヴに臨んでいるはずだ。
しかし私は、結局渋さのライヴを観なかった。なぜかというと、ドラゴンドラの乗り場を目指していたからだ。フジロックの魅力は、何も4つのステージで繰り広げられるライヴだけではない。お化け屋敷や、子供たちの遊び場"Kids Land"。巨大オブジェが立ち並び深夜にはバイクショーも行われる"The Palace Of Wonder"など、ステージ以外にもブースはいっぱいある。その中のひとつがこのドラゴンドラ。コレは昨年冬に苗場スキー場の新たなアトラクションとして作られたゴンドラで、かなり高いところで稼動し、会場を一望できる乗り物だそうだ。
しかしこのドラゴンドラ、何せ情報が少ない。チケットの売り場はキャンプサイト入り口手前のテントになっていて、そこで乗り場の位置や所要時間を尋ねる。乗り場までは徒歩約15分で、ゴンドラに乗っている時間は約22分。すいていればそのまま乗れるが、すいているのか混んでいるのかは、行ってみなければわからないという具合だ。
乗り場を目指し、キャンプサイトの中を歩くことになった。毎年ホテルに宿泊している私にとって、キャンプサイトの中に足を踏み入れるのはこれが初めてだった。遠くから見てもかなりのテントの数だとわかるのだが、実際近くを通ると、大小さまざまなテントが密集していた。しかも、これがかなり奥の方まで広がっているし、山の傾斜も結構きつい。キャンプする人たちのためのトイレやお風呂、水場などは入り口付近にあるのだが、近いところに陣取れた人はともかく、奥の方の人たちは出てくるだけで大変だ。しかし、ほんとにこの中にジョー・ストラマーはいるのだろうか(ジョーは今年家族を連れて、完全プライベートでオーディエンスとしてフジロックに参加している・・・はず)。そして川を隔てたところに位置しているレッド・マーキーでは、ちょうどこの日一発目の少年ナイフのライヴが始まったところだった。『バナナチップス』の、歌声と演奏が聴こえてきた。
そうして15分ほど歩き、最後はかなり急でかなり狭い坂道を経て、やっと乗り場にたどり着いた。混んでいるどころかガラガラで、利用者もまばら。すぐさま乗れた。ゴンドラはブルーのボディーで、4人乗りになっていた。もちろん冷房などないのだが、窓が少しだけ開けられていて、涼しい風が入ってきた。静かで密閉された空間に身をゆだねながら、外の景色を観察する。まず最初に見えたのはグリーンステージ。裏側から見る格好になり、ステージを取り囲むようにしてレジャーシートやタープが敷き詰められているのがわかった。続いてはグリーンとホワイトを結ぶ林道、更にホワイトステージ~アヴァロンフィールド~フィールド・オブ・ヘヴンという、フジロックを形成する舞台を一望する。
こうしてフジロック会場の上を過ぎたが、一向にゴールとなる地点は見えてこない。果たしてどこまで行くのだろうと、少し不安になる。しかしゴンドラは淡々と進み、見下ろすと次なる光景が。サッカー場のようで、どうやらどこかの学校が合宿でも行っているらしい。続いては一気に高度を下げ、渓流ギリギリにまで接近。水がきれいそうで、魚がいても不思議じゃないと思った。もう少し進むと、今度はダムが見えた。前夜祭のときに雨が降ったものの、好天続きで水が減っているように見えた。こうしてゴンドラは高度を上げたり下げたりしながらゆっくりと進み、そしてゴールとなるステーションに到着した。
ゴンドラを降りてびっくり。空気がひんやりしていて、ちょっと肌寒い。山の上とわかってはいるが、よほど高い地点なのだろう。レストランがあって、お茶がてらにひと休み。店内は冷房完備で、なお涼しくなった。お店を出ると、今度は外で少し休む。ブランコやベンチ、ハンモックなどがいくつかあって、ハンモックに身を横たえてみる。そして、青い空を見た。フジロックの会場の中にいると、次はどのアーティストを観るとか、お昼とかトイレとかであちこち移動し、のんびり過ごしているつもりでも結構せかせかとせざるをえない。だけどここにいると、ほんとうに落ち着くし、ほんとうにのんびりできる。時間が経つことさえ、忘れてしまいそうだ。
帰りのゴンドラに乗るときに、ステッカーをもらった。チケットは行きのゴンドラに乗るときにまるまる渡してしまうので、これがドラゴンドラに乗ったという証になるのだ。そして帰りは、行きのときより時間が経つのが早く感じた。途中に何があるのかを既にわかっているからかもしれないし、会場の全景を写真に撮っていたからかもしれない。すれ違うゴンドラに乗っている人たちとは、お互いに手を振り合った。
ドラゴンドラ自体はとても楽しかったし、乗ってよかったと思っている。だけど、乗り場にたどり着くまでが大変。まるで罰ゲームのような(笑)道のりで、ここまででかなりの体力を消耗してしまう。それと、会場内でも情報が入手できるようにしてほしい。オアシスのInformationでもチケットを売るとか、案内図を用意しておいてチケットと一緒に配布するとか、乗るまでの待ち時間を逐次知らせるとかだ(あの様子だと、恐らく混むことはなかったと思うけど)。自力でその場まで行ってみなければ状況がわからないというのは、あまりにも不親切すぎると思うし、敷居が高すぎるよね。
(2002.8.9.)
Back(Day 1-Vol.5) | Next(Vol.2)