Fuji Rock Festival'02/Day 1-Vol.1 American Hi-Fi/東京スカパラダイスオーケストラ
これも毎年のことだが、朝から暑い。起きて荷物の準備をし、ホテルを出て会場に向かう。9時前後にゲートをくぐり、毎年陣取っているところにレジャーシートを敷いた。去年はこの後すぐさまグッズを買いに行ったのだが、暑い中を2時間も並び、そして買うのにも30分かかった。もうこんな思いをするのは嫌だと思い、今年は混み具合の様子を見て、すいているときに求めると決めていた(今年はグッズの売り方についても改善が成され、売り場を分散したり、クレジットカードを使えるようにしたり、Tシャツをテント前に掲げて待ちながらでも見れるようにしたりしていた)。
なのでまずは朝食。オアシスのワールドレストランに行き、エスニック牛丼を食べる。ワールドレストランは、日中はどのお店も混み混みで長い列ができるのだが、さすがに朝早い時間だとすいている。というか、まだ開いてないお店の方が多かった。10時半を過ぎた頃、会場が苗場に移ってからのテーマ曲となっている忌野清志郎の『田舎へ行こう』が流れ出す。続いて流れたのは、『Summertime Blues』のザ・フーのバージョンだった。先日亡くなった、ジョン・エントウィッスルさんへのトリビュートの意が含まれているのだろうか。そうして時刻は11時となり、ステージには進行を務める司会の2人が姿を見せた。今年は日高社長からの挨拶はなく、いきなりライヴがスタートする。
グリーンステージの一発目は、4人組のアメリカン・ハイファイだ。イキのいいギターロックで蹴散らし、オープニングにはもってこいといった感じ。ライヴが始まると、ステージ前に人が走って行く光景も毎年のことで、早くもステージ前方のモッシュピットには人が集まりつつある。ギターとヴォーカルを務めるフロントマンのステイシー・ジョーンズは、なんとかつてはヴェルーカ・ソルトのドラマーだったそうだ。
ヴェルーカ・ソルトといえば、とにもかくにもルイーズ・ポストとニナ・ゴードンのフロントの女性2人に話題が集中した。バンドはガールポップ扱いされていたし、実際私もそう思っていた。その後ヴェルーカはニナが脱退し(ソロ活動に転向)、ルイーズがバンドを引き継いで活動しているが、あまり際立った活動ができていない(特に日本には伝わって来ない)。こうした状況の中、ステイシーがスティックをギターに持ち替えてバンドを始動させたのは、アーティストとして生き残るための手段としては正しかったと思うし、何よりもこの環境、このオーディエンスを前にした気持ちのいいライヴが、そのことを証明している。ステイシーに、ニルヴァーナを経てフー・ファイターズを始めたデイヴ・グロールをダブらせる人は、少なくないのではないか。そして付け加えるならば、ニナと"ルイーズ"ヴェルーカも、いつかはこのステージに立ってくれる日が来てほしいと思う。
続いては、東京スカパラダイスオーケストラ。今年は奥田民生や田島貴男、チバユウスケらとのコラボレートもあり、話題には事欠かない。私自身は過去のフジロック参戦時に彼らのライヴを観たことがあって、それは'98のホワイトのシークレットと(このときはほんのちょっとだったけど)、'99グリーンの2日目オープニングのときだ。特に'99のときはドラマーの青木達之さんが亡くなった後で、中村達也を迎え入れての参戦だった。メンバーの死を乗り越えんとするバンドの姿は、当時スカパラをあまりよく知らなかった私でも、心を揺り動かされた。
例によってバンドは大人数で登場し、しかも全員スーツ姿。この暑いのに・・・。だけどこれも、彼らのポリシーなのだろう。管楽器の音が野外という会場に映えるのは昨年のKEMURIでも体感しているが、それは彼らのライヴでも同じだ。現在は元フィッシュマンズの人がドラマーを務めている様子で、きっとバンドは何度目かの充実した時期に差し掛かっているのだろう。ステージ前は先程のアメリカン・ハイファイ以上に人が集まり、とても初日の出だしとは思えないほどの密度となった。約50分のステージは今の彼らにとっては短すぎたのかもしれないし、力量のほんの一部を披露したに過ぎないのかもしれない。それでも、今やフジロックの常連バンドのひとつとして定着しつつある彼らの姿を見れて、私は満足だった。
(2002.8.5.)
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