Society Of The Citizens Vol.2 2008.8.24:JCBホール

前日の興奮と熱狂は疲労となって体内に蓄積され、なかなか回復しなかった。自宅を出る直前まで仮眠を取り、なんとかこの日のイベントにも耐えうるよう体調を整える。そして開場後は、前日とほぼ同じアリーナ右後方に陣取った。ステージのバックドロップのスクリーンには、この日出演するバンドの名前が繰り返し映し出されていた。なお、この2日間のイベントは収録されていて、10月にCSのフジテレビ721で放送される予定である。





Soil & "Pimp" Sessions

一部のメンバーがセッションとして参加しているのは観たことがあったが、ソイルとして観るのは今回が初めてだ。6人編成で、前日も観たサックスとトランペットのほか、ドラム、ウッドベース、キーボード、そしてフロントマンの「社長」という面々である。音はテレビでもよく流れている通りジャズを基盤にしているが、かなり「攻め」の姿勢を感じさせる。そして社長なのだが、この人は基本的に楽器を手にしないということを、この場で初めて知った。スピーカーでの盛り上げ役に徹することが多く、時にコンピューターを駆使して演奏に参加したり、基本インストの演奏の中にヴォーカルを入れたり、という役回りだったのだ。


そして、このソイルの演奏中にサプライズは起こった。聴き覚えのあるリフだと思ったらそれは『カリソメ乙女』で、となればもちろん林檎その人がマイクを手に歌いながら颯爽とステージに登場。林檎がレコーディングの際にソイルがゲスト参加していて、それがこういう場で改めてコラボレーションが実現したのは、観る側にとっては嬉しい限りだった。アッパーな曲調に乗るようにして林檎も体を弾ませながら歌い、曲が終わるとまた風のように去って行った。



セットチェンジ~椎名林檎+即席バンド

前日と同様、機材の入れ替え中にミニライヴはあるのだろうかと思っていたら、林檎、前日登場のスクービー・ドゥのヴォーカル小山、ソイルのキーボ−ドの3人で、やはり前日出演していたエレファントカシマシの『悲しみの果て』を披露。鍵盤弾き語りスタイルでの小山と林檎のデュエットという形だが、小山が前面に出て林檎は抑え気味、という格好になっていた。歌う前には林檎から少しMCがあって、彼女としては前日の2組の演奏にも結構満足していたようだった。



Zazen Boys

観るのはCountdown Japan 06/07以来で、つまりはベースが日向秀和から吉田一郎に代わってから観るのは今回が初ということになる。その吉田は坊主頭で、ドラムセットに寄り添うようにして向井の後方に陣取り、ほとんどアクションをすることなく淡々とベースを弾いていた。向井秀徳はサングラスをかけて登場するもすぐに取って、いつものメガネ姿になった(つまり二重にかけていたのね)。ギターの吉兼は幾分髪が伸びていて、ドラムの松下もかなりの長髪になっていた。


ライヴはいきなり『Riff Man』でスタートし、ビート合戦が繰り広げられる。バンドは9月に新譜『Zazen Boys4』のリリースを控えていて、そこからの新曲も披露。従来の生音志向から、エレクトリック志向への展開が伺える。それはそれで楽しみではあるのだが、ここではやはり聴き慣れた曲の方に耳が行き、その心地よさに浸った。そしてインプロヴィゼーションに差し掛かったとき、その一糸乱れぬ統制の取れた演奏をコントロールしているのは誰かというのを見極めるべく目を見張った。以前は誰が指示を出すようにも見えず、阿吽の呼吸でやっているようにも見えたが、ここでは他の3人が向井の方を向き、アイコンタクトで意思の疎通を取り合ってやっているように見えた。ラストは、前日にアコースティックバージョンで林檎と共演した『Kimochi』を、バンドバージョンで披露した。



セットチェンジ~即席バンド

機材の入れ替えが進む中、今度はスクービー・ドゥの4人がまるまる登場し、2曲を披露した。と言っても、ステージ向かって左の狭いエリアに4人が陣取っているので、ドラムセットはなく、ドラマーは代わりにコンパクトなドラムマシンを使っていた。この2日間で最も細かく働いていたのは、きっと彼らだ。その姿勢は、どこかで実を結ぶに違いない。



東京事変

先に書いてしまうと、セットリストは前日と全く同じだった。もうひとつ付け加えるなら5人の衣装も前日と全く同じで、衣装はともかく2日連続なのだからせめて1曲でも日替わりがあったらいいのに、という思いはあった。変わったのはMCくらいである。しかし、演奏も、椎名林檎のヴォーカルも、その充実度は前日を大きく上回っていたように思えた。2日間の締めであり、もっと言うならこれが今年の東京事変としてのラストのライヴになるかもしれず(年末のCountdown Japanフェスに出演する可能性は残っているが)、そういう締めくくり感がバンドを動かしているのだろうか。


『娯楽(バラエティ)』の冒頭の曲でもある『ランプ』は、軽快な曲調と林檎の少女っぽいキャラが際立つ曲で、ここでのオーディエンスのテンションの高さも尋常ではなかった。『ミラーボール』は、アレンジが精密になった印象があり、『Osca』はイントロだけで電流が走ったかのような衝撃があり、各メンバーのソロリレーで更に沸き立ち、と、最早異常とも言える空気が場内を支配した。『黒猫道』を経て本編ラストは透明感に満ちた『閃光少女』となり、アンコールは『丸の内サディスティック』で締めくくった。








MCにおいて、椎名林檎は夏フェスのことに触れていた。彼女自身は肌がかぶれやすく、日焼けにも弱く、ということを言っていて、どうやら野外フェスがあまり得意ではなさそうだ。また、フェスは複数のステージが同時に進行し、観たいアーティストがいてもバッティングしていて観れなかったり、ステージ間の移動も場合によっては楽ではないことがある。彼女は、ひとつのステージでやりたかったんですと言い、つまり「Society Of The Citizens」は彼女にとってのプチフェスのようなものなのだ。


今回はVol.2だったが、彼女は今後も継続したいと思っているそうで、それはもちろん望むところである。アジカンが主催しているナノ・ムゲン・フェスは、近年こそ横浜アリーナで開催しているが、スタートはライヴハウスだった。休んだ年もあったが、毎年コンスタントに開催することで少しずつその規模を大きくし、今や押しも押されぬフェスになった感がある。そこまでとは言わないまでも、「Society Of The Citizens」が今後も開催されていくことを願っているし、そうなればまた参加したいと思っている。




(2008.9.7.)

















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