Rooster 2006.7.1:Studio Coast
去年1年だけで実に4度も来日した、UK新人バンドのルースター。単独公演だけでなくサマーソニック出演も果たし、またアヴリル・ラヴィーンの前座として武道館のステージにも立った。その彼らが、6月21日に早くもセカンドアルバム『Circles And Satellites』をリリース。それにリンクし「World Premiere Party」と題されたライヴが、この日の公演だ。
がしかし、レコード会社やプロモーターの力の入れ込みようも、空回りの感が否めない。というのは、国内最大規模のライヴハウスであるスタジオ・コーストを会場に選んだはいいが、明らかに集客に苦戦していたからだ。レコード会社やプロモーターからはインヴィテーションが出され(私はプロモーターのインヴィテーションで入場)、開演間近になってようやく場内は8割くらいの入りになり、なんとか格好がつく形になった。
定刻より若干遅れて客電が落ち、黄色い歓声が飛ぶ中メンバーがステージに姿を見せる。早速『Unexpectedly』でライヴはスタートし、序盤はリリースしたばかりのセカンドアルバムの曲を中心にして進む。メンバーは、中央にヴォーカルのニック、向かって右にベースのベン、左にギターのルーク、ニックの後方の一段高くなったドラムセットの中にデイヴという配置。そして左後方には、サポートのキーボードが陣取っていた。
演奏は、ほとんどの曲がデイヴのドラムから始まり、この人が刻む重いビートがサウンドの屋台骨になっていることが伺える。それにからむのが、ワイルドなリフのルークのギター。この2人のコンビネーションがサウンドの要になっているように見える。ベンは淡々とベースを弾いているが、そのルックスからか女性ファンからの声援が最も多い。そしてニックだが、歌いながらステージ上を右に左にと歩み寄り、また日本語MCもあって、パフォーマーとしてバンドを牽引している。ファーストの頃は長髪だったらしいが、現在はさっぱりとした短髪だ。
セカンド『Circles And Satellites』からの曲は、よく言えばメロディー重視で耳当たりがいいが、しかしはっきり言えばパンチに欠けていて少し物足りない。メンバーまだみんな若いんだし、もっと勢いで押しまくって攻めて行ってもいいんじゃないかなと思う。対してファーストからの曲はメリハリが効いていて、ライヴ感もたっぷり。『Staring At The Sun』や『Standing In Line』は場内のノリもよく、中盤のピークになった。
演奏そのものもほぼ原曲に忠実なのか、コンパクトに進められる。時折ルークのギターソロが飛び出すことがあるが、それまでもコンパクトで、ライヴならではのインプロヴィゼーションというのも見られない。一生懸命やっているのは伝わっては来るが、生真面目さが出ているというか、もっと暴れて、もっと訳がわからなくなるくらい無茶苦茶にやってしまってもいいと思うのに。ううむ。
・・・と、こんな不満を漏らし、そして期待をしてしまうのは、このバンドの音にレッド・ツェッペリンやAC/DCといった、70'sの大御所ハードロックバンドの影響が感じられるからだ。今どきこういう音を出すバンドがUKから出てくるというのがまず珍しいし、かと言って、実はアメリカの若いバンドにもこうしたバンドは実はほとんどいない。強いて挙げるならば、ジェットやダットサンズといった、オーストラリア勢に似通っているだろうか。こういうバンドは、大きなステージでもやっていけるような、スケール感を備えた表現力を発揮する方向に化けられる可能性があると思うのだ。
終盤、ローリング・ストーンズの『Satisfaction』をカヴァー。メロディーラインは崩し気味で、あの独特のリズム感をなぞらない解釈はむしろ新鮮だ。必ずしも原曲に忠実な完コピではなく、彼らなりのアプローチで歌い演奏する姿は見事だった。そして本編ラストはデビューシングルであり、もっかのところ彼らの最大のキラーチューンである『Come Get Some』。ルークによるうねるリフになんとも言えない味わいがあって、このバンドはこういう曲をもっと生み出せばいいのになあ、なんて思いながら聴き惚れていた。
アンコールでは、ニックはサッカーイングランド代表のユニフォームを着て再登場(この日の夜イングランド−ポルトガル戦があったが、きっとオンタイムで観たんだろうな)。曲は『Home』『Good To Be Here』などセカンドからの3曲を披露し、ラストになるとニックはユニフォームを脱いで上半身をさらし、ユニフォームを手に持って振り回しながら踊り、更にはスティックを握って、デイヴがドラムを叩いている脇でシンバルを叩いたりもした。
ファーストはパワフルでワイルドな曲が多かったが、セカンドではメロディアスな曲が増えている。曲作りのアプローチを変えたのは、深読みすれば一発屋に終わらないための表現力の追求なのだろう。しかし個人的には、変に凝ったことをするよりも、ファーストのアプローチのままで押しまくる方が彼らには似合っていると思う。特にギターのルークが、もっと前面に出て来て、もっと暴れて、もっと弾けるようになって、ニックと対等に渡り合うようになれば、このバンドはもっと面白くなる。
(2006.7.4)