Korn 2006.4.20:Zepp Tokyo

 この日の公演は、ビンやカンはもとより、ペットボトルの持ち込みも禁止されていた。入場時に強制的に買わされるドリンクも、ふだんのZeppならペットボトルが配布されるところを、今回はプラスチックのカップにあけられて配布された。Kornの音やスタイルから、興奮したファンがステージにモノを投げ入れるのを防止すべく、このような措置が取られたのだろう。


 開場は予定より30分遅れたのだが、開演の方は定刻より15分ほどの遅れに。まずはオープニングアクトで、10イヤーズというアメリカの5人組バンドだ。ステージはカーテンで覆われており、その前にドラムセットをはじめとする機材がセッティングされていて、彼らはそこで演奏。ヴォーカルがドレッドヘア、2人いるギタリストは、ひとりがスキンヘッド、もうひとりがモヒカンと、見た目とってもわかりやすい(笑)。音はもろヘヴィーロックだが、メンバーの若さがいい方に作用していて好感が持てた。彼らはこの夏のサマーソニックにもエントリーされていて、アウトドアステージの一発目辺りで蹴散らしてくれそうだ。





 セットチェンジを経て、約30分後に再び客電が落ち、場内は怒号と歓声の渦に。イントロのSEが流れるが、なかなかメンバーは登場せず、早くもじらしモードだ(笑)。やがてステージを覆っていたカーテンが左右に少しだけ開き、高い段にセットされたドラムセットがお目見えし、デイヴィッドがドラムを叩いている。そしてジョナサン、マンキー、フィールディーの3人も登場し、『It's On!』でスタートだ。ステージの両サイド、マンキーとフィールディーの後方には、Kornの歴代アルバムのジャケットが飾られていた。


 Kornを観るのは2004年のソニックマニア以来なのだが、まずジョナサンの変貌ぶりにびっくり。ソニックマニアのときはかなり肥えていたのだが、今回は全体的にかなりスリムになっている。黒を基調とした衣装でキルトをはいていて、ちょうど股間の辺りにアディダスのエンブレムがある。マンキーはドレッドヘアで巨漢、一方のフィールディーは意外や結構華奢だ。ヘッドが脱退してしまったが、バンドは後任ギタリストを入れることなく4人での活動を決意。つまり今回のKornは、バンドとして次のステップに足を掛けているのだ。





 3~4曲くらい演った後だろうか、ステージを覆っていたカーテンがついに全開になった。そしてあらわになったのは、4人のサポートメンバーたちだ。マンキーの後方にはドラマーとバックヴォーカル。フィールディーの後方には、キーボード及びプログラミングの人と、ギタリストだ。そしてこの4人、新譜『See You ON The Other Side』のジャケットに描かれている、ウサギや馬などのマスクをかぶっている。


 ギタリストはマンキーの代役であり、プログラミングは新譜で試みた新展開を表現するためだろう。ドラムはデイヴィッドとのツインになることで、より重厚さを増していてこれが圧巻。95年のキング・クリムゾン以来の感動を覚える。そしてバックヴォーカルは、曲によりパーカッションもこなしている。ヘッドが抜けたのは大きな打撃のはずだが、この場においては、バンドはそれを逆にプラスに転化させることに成功している。


 曲は新譜に偏ることなく、キャリアを通して満遍なくセレクトされ演奏されている(これはKornのライヴではいつものこと)。個人的には、シングルカットされている『Here to Stay』や、『Clown』『Divine』といったファーストアルバムからの曲が聴けたのが嬉しかった。そして曲間にも必ずSEが流れ、場が間延びすることはない。オーディエンスのノリも最早尋常ではなく、1階フロアは前方のみならず中盤でも暴れ放題だ。ペットボトルを場内持ち込み禁止にしたのは、やはり正しかったのかもしれない。


 中盤では、ジョナサンがバグパイプを抱えて吹きながら登場し、『Shoots And Ladders』となる。それまではステージ中央で歌っていたジョナサンだったが、ここでは右に左にとゆっくり歩み寄り、その音色を隅々のオーディエンスにまで届けんとする。そしてここからメドレー形式で何曲も連射され、場内の雰囲気はいよいよ尋常ではなくなってきた。演奏のヴォルテージも徐々に凄まじくなり、マンキーとフィールデイーは立ち位置が入れ替わったりもしている。フィールディーの重低音ベースは今やお馴染みだが、今回はマンキーがかなり頑張っているという印象がある。





 終盤は新譜からシングルカットされた『Coming Undone』で畳み掛け、そして『Got the Life』で本編が終了。そしてアンコールに突入し、ここでついに『Twisted Transistor』が放たれた。バンドがこれからもやって行くんだという決意がにじみ出た、「新生」Kornの名詞的な曲だと思う。更には『Hypocrites』を経て、『Freak On A Leash』へ。Kornのサウンドとしての魅力は、ラウドでヘヴィーであるにもかかわらず、ポップで聴きやすい部分があることだと思っていて、この曲などまさにその代表格だ。


 そして曲間がまたSEでつながれるのだが、デイヴィッドのドラミングがそれを打ち破った。更に緻密にシンバルを叩き、いよいよ「あの」曲『Blind』が来るのだと、場内は色めきだった。サポートのギタリストがジャラジャラッ♪と弦をかきむしり、それにフィールデイーのベースが絡み、やがてマンキーもそれに加わり、こうした過程を経て徐々に緊張感が高まってくる。このじらされ加減がまたたまらなくて、なんだかマゾ的な快感だ(笑)。


 そしていよいよジョナサンが躍り出てきて、「アァァ~ユゥゥ~レェェェディィィ~」という、まるで咆哮のように歌い始める。これでスイッチが入ったように場内は更に暴れ出し、「what if I should die?」のところでは大合唱になる。この一体感は何だ、この凄まじさは何なのだ。ファーストアルバムの1曲目であるこの曲が、未だにKornの原点であり、そしてファンにとっても最も待ち望んでいる曲であることの証なのだろう。そして曲が終了し、4人のメンバーはフロア前方に詰めているオーディエンスとタッチを交わしたり、ピックやスティックを投げたりしている。その間サポートメンバーだけでアウトロを弾いていて、Kornの4人がステージを去った後もアウトロはしばし続けられた。





 客電が落ちてカーテンが開いたときから、私はニヤニヤしていた。そしてライヴの最中、顔はずっと緩みっぱなしだった。もし他の人に見られていたら、かなり危ない人だと思われたに違いない。ではなぜ、終始ニヤついていたのか?実績や格、そして何よりその力量からして、Kornはどう考えてもアリーナクラスのバンドだ。そのKornをライヴハウスというキャパシティで観られたのが、たまらなく嬉しかったのだ。きっと今回の来日公演に足を運んだ人も同じような気持ちを覚えたに違いないと確信するし、Kornがどれほど凄まじいライヴバンドであるかを知っていながら、今回残念ながら足を運べなかった人は、そのことを後悔し続けることだろう。





(2006.4.23)
















Kornページへ



Copyright©Flowers Of Romance, All Rights Reserved.