東京事変 2005.12.13:The Garden Hall
1月に、ツアーに先駆けて行われるゲネプロに会員を招待するという企画がありはしたが、これはもともと会員のためにという企画ではなく、ゲネプロをうまく利用したものだった。そして今回、会員のための企画がついに実現し、4公演が行われる。会場はいずれもライヴハウスという、現在の東京事変の人気からすればありえないキャパシティ。私は2公演目に申し込んで当選し、期待を胸に会場まで足を運んだ。
定刻より少し遅れて客電が落ち、事変のメンバーがゆっくりと登場。まずは『クロール』でスタートだ。バンドは鍵盤とギターがメンバー交代していて、今回が「新生」東京事変のお披露目の場でもある。立ち位置も以前とは異なり、今まで林檎女史の向かって右側に陣取っていたベースの亀田が向かって左にいて、右の方に新メンバー2人がいるという具合。林檎女史の右にはギターの浮雲、その後方には鍵盤の伊澤だ。しかし伊澤は鍵盤を弾いておらず、打楽器でリズムを刻んでいる。
林檎女史からの紹介を経て、その伊澤がMC。来年リリースされる新譜のレコーディングで張り切りすぎてしまって腱鞘炎になったそうで、それで今回は鍵盤を弾くことはできないようだ。伊澤はバックヴォーカルもこなしていたが、曲によりステージに顔を出したり出さなかったりという状態。しかしそのキャラは、前任者のヒイズミがクールなキャラだったのに対し、結構やり手っぽいように見えた。
曲は『秘密』『入水』『遭難』といった、事変ファースト『教育』からの曲が披露される。しかしアレンジは生バンドスタイルとは大きく異なり、シックでジャジーなたたずまいだ。あ、だから今回のイベントのタイトルは「アダルト・オンリー」なのかな。ステージは後方がカーテンで覆われていて、これも大人の雰囲気を出している。終盤では懐かしの『丸の内サディスティック』が飛び出しもし、そしてもっかの最新シングル『修羅場』を最後に約30分程度で終了。少し短い気もするが、まあ企画ものってことだし、この後もいろいろありそうなので。
ステージには幕が降りてドタンバタンと音がし、第2部の準備がされている様子。そんな中、幕前の右前方に進行役を務める男女が登場。まずは事前に預かっていた林檎女史への質問を男性が読み上げ、女性が林檎女史になり変わって回答。主な内容は、自身の中で好きな曲は?(旧譜では『浴室』『茎(Stem)』、しかしそれ以上に新譜の曲には自信がある)、お子さんはロケンローに育ってますか?(オルタナの兆しあり。ロールしているかは不明)、好きな動物は?(もちろん黒猫)、といった感じに。続いては抽選会が行われて4人の方が当選して壇上に上がり、プレゼントを受け取っていた。
約15分の休憩を経て、再び進行の人が登場。新生東京事変のメンバーを今一度確認しましょうということで、なんとファッションショーが始まった。三浦なんとかさんというデザイナーの服を男性陣がまとい、伊澤~浮雲~ハタ~亀田の順に登場。ステージは、中央からフロアに向かって花道が突き出していて、登場した面々は花道を歩きながらピックをばらまきまくり、フロアに詰めているオーディエンスはそれに群がった。しかし、男性陣退出時のBGMがテレヴィジョンの『Elevation』だったのはなんでだ?
そして第2部へ。まずは林檎女史の声とバイオリンの音色だけが聴こえてくる。曲は『枯葉』のカヴァー。すると、幕前に紳士がバイオリンを弾きながら登場し、それに続いて林檎女史も登場。歌い終わると幕が上がり、するとステージにはオーケストラが(またたびオーケストラという名だそうだ)。バイオリンやチェロといったストリングス隊に、ドラム、木琴、ピアノという編成。20人以上はいただろうか。先ほどバイオリンを弾いていた紳士は、林檎女史の作品に参加経験のある斉藤ネコで、今度は指揮者に転じていた。
曲は『歌舞伎町の女王』『ダイナマイト』『意識』『茎(Stem)』『la salle de bain』など、ソロ時代の曲を中心に披露され、しかしそれらは全く別アレンジで再構築されている。またライヴハウスでオーケストラというのはミスマッチな気もするが、むしろこれはとても贅沢なことと喜ぶべきだ。後半になると、トランペットやホルンといった管楽器隊も加わり、更にスケール感が増幅された。しかしこうした大人数をバックにしても、林檎女史の声やパフォーマンスは全く見劣りすることがなく、エネルギーに満ち溢れている。
終盤の『夢のあと』では、更に情感がこもった熱唱ぶりを見せる林檎女史。そしてラストの『シドと白昼夢』でついに花道に繰り出し、へりに詰めているオーディエンスにハイタッチ。彼女はアーティストとしてファンとの間には線引きをしていて、まさかこんなスキンシップをする人だとは思わなかったので、かなりびっくりした。ファンの中にもいろいろな人がいて、盲目的にアーティストに信心する人もいれば、クールに構えている人もいるだろう。ただ、この日この場に集まった人に共通しているのは、彼女そして事変を並々ならぬ想いで支持しているということだ。そのことを彼女もわかっているからこそ、こうした行動に出たのだろう。
最後にもう1曲と言って(アンコールという扱いだろうか)『迷彩』となり、斉藤ネコは再び指揮からバイオリンに転じる。演奏の終盤になると、まずは林檎女史がステージを後にし、続いてオーケストラのメンバーも徐々にステージを去って行く。最後は斉藤ネコとドラムとピアノの人だけで演奏が続いて、そのまま幕が降り、降りてもなお少しの間は演奏が続いていた。
今回のイベントは「第1回」と題されていて、進行の人も林檎女史本人も、行うことが念願だと言っていた。とすれば、今後も第2回第3回とこうしたイベントが行われることを期待していいと思う。そして新生東京事変は、この後も動きが活発だ。来年1月には新譜がリリースされ、2月には東京と大阪でお披露目ライヴを敢行。更に4月5月には、ツアーを行う様子。ファンとしては、まだまだ楽しみが続くこととなる。
(2005.12.16.)