Triceratops 2005.4.9:横浜Blitz

前売りチケットは完売しなかったらしいのだが、それでも場内にはかなりの人が集まっていて、すかすかがらがらでのライヴにならずに済みそうでよかったと勝手に安心。女性ファンが大多数かと思ったらそこまで極端でもなく、男性ファンも結構いた。開演前のBGMは、テレヴィジョンやピストルズなどのパンク勢から、やがてエアロスミスやストーンズ、ツェッペリン、フーなどのロックベテラン勢になり、予定時間を10分ほど過ぎたところで客電が落ちた。





 ステージ向かって左の袖の方から3人がふらっと登場し、それぞれ持ち場についてスタート。オープニングは『Now I'm Here』で、ならし運転のごとくじっくりと歌い演奏するというモード。それが続く『Parachuter』『Ace』ではタテノリになる。CDで聴く限りポップなメロディーと歌詞重視のように思えたが、ライヴの場で音は幾分かラウドで、耳はそれほど歌詞には行かない。


 ギター&ヴォーカルの和田、及びベースの林はTシャツ姿、ドラムの吉田は白いシャツ姿で、衣装というよりほとんど普段着。アーティストというより街中にいそうな兄ちゃんのようで、しかしこの飾らないさまの方が、かえって彼ららしいと思う。ステージには特に凝ったセットはないが、ライトが後方に並べられていて、これが曲のイントロやサビのところなど、随所で効果的にステージやメンバーを照らす。


 トライセラは3月あたまに新譜『The 7th Voyage Of Triceratops』をリリースしていて、それにリンクする形でツアーを開始している。ツアーは約2ヶ月に渡っていて、この横浜公演は中間点くらいに当たるのではないだろうか。バンドの方も各地を転戦してきて脂が乗ってきた頃と思われ、また場所が横浜ということで、初日の川崎以来の東京圏でのライヴとなっている。こうしたことが関係しているのかいないのか、客のノリは思った以上によく、漂う雰囲気もあたたかい。





 やがてMCコーナーになり、和田の長いしゃべりが始まる。今回新譜をリリースしたことで、トライセラが書いてきた曲が通算100曲を超えたのだとか。アルバム2枚目くらいから100曲を超えることを目指していたそうで、それが今回やっと到達したと感慨深げ。そして、これらの中から自分でベストを作るとしたら、必ず入る曲だと言って『Guatemala』を演奏。続いては曲の解説となり、ギターのコード進行がシンプルであり、これに同じくシンプルなベースラインとドラムが絡み、シンプルなアレンジの中に、えも言われぬ感動が生まれるのだと和田は力説。だけど最後には、「わかんねえだろうなあ~」だって。


 そして、和田はギターをドブロに交換。とても重いのだそうだ。鉄でできたアコギだと林や吉田がツッコミを入れ、続く『Big Bag Blues』で独特の金属音を発する。和田は子供の頃は内気でおとなしかったそうで、それがギターと出会ったことで自分が変わることができたと自ら話す。ギターの虜になったアーティストは数多くいるだろうけど、その思いをファンに向かって切々と語る和田は、憎めないキャラクターだ。





 ただしゃべってばかりでもなく、この後は怒涛の演奏攻撃が。これまでは割かし原曲そのままに演奏していたのだが、この後は1曲1曲のヴォリューム感がたっぷりになってきている。どの曲だったか、間奏でベースソロを繰り返し、続いてはドラムソロを何度か繰り返して、次いで和田のギターソロが延々と続くという具合だ。ヴォリューム感が増し、放たれる1曲1曲がクライマックスの様相を呈するようになり、いつライヴが終わっても不思議ではないような感じになってきた。


 そんな感じになってきてはいるが、バンドは手を緩めることなく、なおも曲を連射し演奏を続ける。この終盤に来てのダメ押し感というのは、正直予想外であり、また素直に凄いと思う。これはCDを聴いただけでは決してわからず、実際に会場に足を運んで自分でライヴを体感してこそわかる、このバンドの良さなのだろう(なんでライヴアルバムを出さないのかな)。和田と林はステージ上を右に左にと行き来してオーディエンスを煽り、途中和田のギターからコードが抜けてしまって、慌ててスタッフが出てくるひと幕もあった。そんなこんなで、やっと本編が終了する。





 アンコールは、『Fever』『ロケットに乗って』の2曲。本編が新譜からの曲中心であり、特に終盤は演奏そのものに重きを置いていたのに対し、ここでは決めとなる曲を出して、イケイケのなんでもアリのような状態に持ってくる。ダテにキャリアを重ねてきてはいない。ダテに100曲も作ってはいないなあと感じさせる。


 メンバーが下がり、これで終わり的な雰囲気が一瞬漂うが、フロアからは更なるアンコールを求める拍手が鳴り止まない。この状態が少しの間続いた後、3人は再登場。新譜のラストとして収められている曲『Any Day』で、アコースティックのシンプルな演奏で、バンドは静かにライヴの幕を引いた。時計を見ると、なんと開始から2時間20分が経過している。MCが長いことは長かったが、それでも2時間オーバーのライヴになるとは思っても見なかったし、本編終盤以降はかなり密度の濃い内容になって、非常に満足度の高いライヴになった。





 この日のライヴのチケットを取った後、私はトライセラがリリースした全てのアルバム、7枚のオリジナルと1枚のベスト、を順番に聴いた。初期の作品には勢いがあり、ギターもガンガンに鳴っていたのだが、それが徐々におとなしくなり、小さくまとまっていき、また決めになるような曲も見当たらないような印象を受けた。バンドの活動としては順調と言えるのかな、大丈夫なのかな、という不安を私は覚えた。それがライヴでは、地味に思えた曲も生々しくなって見事に輝いていたし、和田を中心として、3人が3人ともあらん限りの力を出し切ってくれていて、私が覚えた不安はどこかに吹き飛んでしまった。トライセラトップスは、まだまだ大丈夫だ。そして、これからもやってくれるはずだ。




(2005.4.11.)



















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