Jimmy Eat World 2005.4.4:Shibuya O-East

 それまではバンド名くらいしか知らなかったのだが、去年の秋頃にオンラインで新譜『Futures』を全曲フル試聴したことがきっかけとなり、以降気にかけるようになった。フジロック'04に出演していたことも後になって知り、ビデオで確認。そんな折、単独来日が決定。公演日がウイークデーというのは私にとっては厳しいのだが、それでも開催直前になって、行くことを決断した。





 まずは定刻通りに、オープニングアクトがスタート。オーシャンレーンという、日本の4人組だ(ベースとドラムはサポートらしい。また、途中からギタリストがひとり加わった)。これまでも何度か洋楽アーティストのオープニングを務めたことがあるらしく、今回はJEWの全公演をサポートするとのことだ。


 美しいメロディラインとエッジの効いたギターには好感が持てる。のだが、バンドとしてのコンビネーションはちぐはぐに見える。そして、ヴォーカルが弱い。あまりにも弱すぎる。ヴォーカル&ギターが2人いて、曲によりリードヴォーカルが入れ替わるのだが、ひとりの方はサウンドにかき消されてほとんど聴こえず、もうひとりの方ははっきり言って下手だ。そして2人に共通しているのは、何を歌っているのかわからない点。彼らはフジロックへの出演も決定しているのだが、いったいどのステージに出るのだろう?強いてプラス材料があるとすれば、若そうということくらい。今後どれだけ立て直せるかが、鍵になってくると思う。





 この後セットチェンジに約30分が費やされ、時刻が午後8時になろうかというときに客電が落ち、ジミー・イート・ワールドの4人が登場する。そして出だしは『Futures』~『Just Tonight...』という、新譜『Futures』の冒頭2曲だ。これは個人的に予想通りの展開であり、かつとても嬉しい。何かが始まるという予感が漂う曲調の『Futures』、イントロのリフが印象的な『Just Tonight...』で、早くも場内の温度は上がった。上々のスタートだ。


 バンドの軸になっているのは、2人のギター&ヴォーカルだ。ステージ中央のジム・アドキンスは長髪を振り乱しながら高いキーで熱唱し、アクションも大きい。その左に陣取るトム・リントンは、対照的にアクションはほとんどなく、歌うときのキーも低めだ。ジムの右にいるベーシストは非常に地味で、熱い曲を発しているひとりとは思えないほどに淡々と弾いている。ジムの後方に収まっているドラマーは、激しくそしてメリハリのあるビートを刻み、サウンドの屋台骨を支えている。


 O-Eastのキャパシティは存じ上げないが、洋楽アーティストの公演として使用されるライヴハウスとしては、最小の部類に入るに違いない。ということもあってか、場内はすし詰め状態で、開演前から蒸し蒸ししていた。開演後、いつのまにか冷房が入っていたが、しかしそれでもオーディエンスの熱が冷めることはない。個人的に、こうした環境に浸るのも、こういうノリを体感するのも、ずいぶん久しぶりだ(もちろん嬉しい)。





 序盤から中盤は、1曲1曲をほとんどアルバム収録の原曲と同等に演奏。スキルの高い演奏力に感心させられ、そして安心もさせられる。原曲と同等のアレンジでありながら、ライヴならではのスピード感に溢れ、場内の密度が濃くなっていくのが感じられる。MCは少なめで(日本語による挨拶もあった)、次から次へと曲を連射する状態がずっと続く。そのせいか、たまにメンバーがミネラルを摂るなどのインターバルを取っても間延びすることはなく、むしろ観ている方にもひと息つくのにちょうどいい感じだ。


 彼らはエモコアなのかメロコアなのか、それともエモパンクなのか。そんな棲み分けなど意味がないかもしれないが、少し考えてみたい。まず、パンクの匂いは希薄だ。次に、曲によってはエモーショナルに歌い上げることもあるにはあるが、でもこのバンドの売りは、激しくも美しいメロディーラインにあると思う。なので、メロコアになるんじゃないだろうか。非常に耳当たりのいいメロディーなのだが、だけどそれは売れ線のサウンドとは、一線を画している。


 その核になっているのは、なんと言っても2本のギターだ。リードギターとリズムギターは曲によって入れ替わるが、この2本のギターはぶつかり合うでもなく、といってバラバラでもなく、絶妙なバランスを取りながら、メロディーをぐいぐい引っ張っている。UKギターバンドというのはおおよそ想像がつくが、USギターバンドとなると、ミクスチャーの要素があったり、ディストーション炸裂だったりと、多種多様だ。そんな中でのJEWのギターというのは、ストレートでありかつパワフルだと思う。





 スタート時からのテンションが落ちることのないまま、終盤に突入。間奏になるとアドリヴ演奏が炸裂し、1曲1曲のヴォリューム感が出てきていて、観ている方にもぐっとくるものがある。そうして、約1時間で本編が終了。通常のライヴで考えれば1時間は短いのだろうが、このライヴに限ってはあまりにも濃密な1時間だった。そしてすぐさまアンコールに突入し、相変わらずのテンションの高さでライヴは続く。


 『Pain』では、これまで徹底して地味だったベーシストもサビのコーラスに加わり、ジムとトムとのトリプルコーラスとなって、更にヴォルテージを上げる。そしていよいよ、そのときは来た。JEW必殺の『Sweetness』だ。JEWを知らないロックファンでも、この曲だけはどこかで耳にしたことがあるに違いない。ライヴでも必ずやハイライトを飾るであろうと予測していたし、バンドはここぞというところでこの曲を放つであろうと思っていたのだが、彼らはその照準をアンコールのラストという局面に合わせてきた。ジムの甲高い歌声が冴え、「オーオーオーーーーー」というところでは大合唱になり、もちろんギタープレイも魅せて聴かせた。そうして場内が何度目かの沸点に達したところで、ライヴは終了した。





 ジミー・イート・ワールド。本国での立ち位置はよくわからないが、少なくとも、日本ではまだまだ一部の熱狂的なファンの人気を博すという程度に留まっていたと思う(私も遅れてきたファンの部類だし)。だけどこれからは、もっと多くの人に語られ、もっと多くの人に曲を親しまれ、そしてもっと評価されていいはずのバンドだ。





(2005.4.7.)



















Copyright©Flowers Of Romance, All Rights Reserved.