Neil Young & Crazy Horse 2003.11.15:日本武道館 Second Set & Encore
簡潔にセットチェンジが行われる中、スクリーンには映画『Rust Never Sleeps』の映像が流れ、場内からはどよめきが起こる。今から25年前、パンクの嵐が吹き荒れる中を白いTシャツ姿で髪も短いニールが、ギターをガンガンに弾くそおん姿がりりしく映る。やがて映像が馬が中央になったエンブレムマークとなったとき、バンドが再登場した。
まるで映像を引き継ぐように、曲は『Hey Hey,My My』でスタート。第一部はほとんどの客が座っていて、『Be The Rain』のところでぱらぱらと立ち上がったような具合だったのだが、第二部は最初から総立ち状態だ。ニールはダンガリーシャツの右の袖を通しておらず、はだけてしまっている状態だが、それでもお構いなしでギターを弾き、ディストーションを効かせまくっている。
第一部では、キーボードだったフランク"ポンチョ"サンペドロもここではギターを弾き、そしてビリー・タルボットとニールの3人とで、寄り添うようにしておのおのの楽器を弾く。この3人の位置取りが、ちょうどラルフ・モリーナが陣取るドラムセットのまん前となり、これがステージ外側の小さなスクリーンに映し出される(ステージ中央のスクリーンは、エンブレムマークのままだ)。この絵面こそ、私の目に焼きついているニール・ヤング&クレイジーホースの絵面だ。
ディストーションプレイは延々と続き、結局10分近く演奏。続くはボブ・ディランの『All Along The Watchtower』で、しかしこれもギターによるイントロが長い長い(笑)。ニールでこの曲といえば、多くのファンは、今から11年前のボブ・ディラン30周年記念コンサートを思い起こすことだろう。シニード・オコーナーが罵声を浴びて退場した後を受けて出てきたニールが、不穏な空気を払拭して余りある、ド迫力プレイをやってのけたのを。
第一部はもともと1曲1曲が長尺だったのだが、この第二部は、もともとの曲をディストーションで延々と繰り広げ、結果としてどの曲も10分くらいの長い曲に仕上げている。『Sedan Delivery』もまた然りで、ニールは演奏の最中にダンガリーシャツを脱ぎ捨てると、ギターソロの合間をぬって足で脇の方に寄せる(笑)。そして第二部ラストは、『Love And Only Love』。ニール夫人を含むザ・マウンテイナーズが再び登場し、サビのところでコーラスを。夫妻で音楽活動をしているアーティストは決して珍しくはないのだけれど、こんなふうにお互いをサポートし合えるなんて、素敵だな。
アンコールは、『Powderfinger』で幕を開けた。ニールの甲高い声も映えていて、クレイジーホースとのコンビネーションも抜群。みんないい歳のはずなんだが(失礼)、クールな大人たちというよりは、やんちゃな悪ガキがそのままミュージシャンをやり続けているような、そんな印象を受ける。だからこそ時には喧嘩もするんだろうし(映画(イヤー・オブ・ザ・ホース』にそんなシーンがある)、しかしそれでも、お互いは長い間いい相棒であり続けているのだろう。
さてお次は、『Rockin' In The Free World』。演奏は相変わらずのディストーション炸裂。もちろんニールがノリにノッてアドリブでやりたい放題やっているんだろうが、それにしてもなんとパワフルでタフなのだろう。そして目の前の壮絶パフォーマンスを観ながら、あることに想いを馳せる。もちろんこの曲はニールのキャリアを代表する曲のひとつで、これがライヴの締めくくりになっても何の不思議もない。しかしだ。ファンとしては、どうしてもあの曲を演ってほしいと期待してしまう。これで終わるのか、それともまだ先があるのか、あの曲は果たして演ってくれるのか・・・。
終盤の延々としたギターソロが続き、ステージを照らすライトも慌しくなってくる。やがてニールはここまでずっとかぶっていたキャップを脱ぎ、そしてまたまたギターを弾き続ける。すると今度は、ステージの上の方からするすると何かが降りてきて、フランク"ポンチョ"サンペドロの前に止まる。それはキーボードだったのだが、これで私は確信した。ここまでやったのだから、これで終わりなんてありえない。必ず「この次」はある。そしてその曲とは、あの曲以外にない。
場内の歓声はここまで何度となく高くなったのだが、このイントロが響いたときこそがピークだった。そしてそれに応えるように、ニールはマイクスタンドの前に立って歌う。私は2年前にフジロックで観たのでそれ以来なのだが、本来ニールを聴き続けてきた多くのファンにとっては、14年ぶりの待ちに待った公演になったはずだ。そして、グランジのゴッドファーザーとして若いバンドからのリスペクトを得るに至り、その若いバンドを経由する形でニールを知り、今回初めてライヴを観ることになるファンも少なくないはずだ。冒頭にも書いたが、どれだけ集客できるかは実は私も疑問だった。
最後は割にあっさりと切り上げてしまい、めくるめくギターソロを期待していたファンの方からすれば、やや拍子抜けの終わり方だったかもしれない。というか、むしろここまであまりに飛ばしすぎでやりすぎた余り、さすがに息切れ気味だったのではないだろうか。ただこの日の公演が来日最終に当たり、そこで『Rockin' In The Free World』~『Like A Hurricane』という最強リレーを持ってきてくれたことは、日本のファンに対するニールなりの礼儀だったのだと、私は受け取っている。
(2003.11.16.)
previous...
Neil Youngページへ