Fountains Of Wayne 2003.10.5:Club Citta
チケットの整理番号が早かったので、久々に前にかぶりつこうかなという思惑もあったのだが、クラブチッタ15周年記念に引っ掛けてなのか、前座バンドが2組もエントリーされている。なので、やめた(実際は3組プラスDJ)。よって開演時間ぎりぎりに入場し、中盤辺りに陣取ることに。ステージ向かって右手前にはDJブースがあって、元ホフ・ディランの小宮山雄飛によるDJプレイがされていた。
そしてほぼ定刻通りに客電が落ち、外人2人組が登場。楽器はギターとドラムで、まずはアコースティック。ギター&ヴォーカルの人は容姿や着ている服がグラムロックっぽいが、しかし音の方はソフトなギターポップやカントリーだ。このユニットスタイルは、ホワイト・ストライプスを思い起こさせる。演奏時間はわずか15分程度で、作品が11月にリリースされるとか、1月にまた会いましょうとか言っていた。そして・・・、終わって帰宅して調べてからわかったのだが、これは実はジョンスペのジュダ・バウアーのソロプロジェクト、20マイルスだった。ジュダと気付かずにずっと観ていたとは・・・。不覚。
続くは、アジアン・カンフー・ジェネレーション。4人組の日本のバンドだ。メジャーデビューしたばかりだが、既に一部ファンの間では話題沸騰。フジロックのルーキーステージにも出演していた。くるりを少しハードにしたようなたたずまいに思え、いい意味での「青春」臭さが漂う音だ。演奏もしっかりしていて、好感が持てる。彼らの固定ファンもいたらしく、それ相当に声援も飛んでいた。今回はオープニングアクトということで、30分にも満たないコンパクトなステージだったが、今後益々ブレイクしそうな予感。この場で観れたのは貴重だったかもしれない。
セットチェンジの間は小宮山雄飛のDJでつながれるのだが、この人の選曲はビーチ・ボーイズが多かった気がする。他にはスマパンの『Today』、珍しいところではトレイシー・ウルマンの『They Don't Know』なんて曲も。そしてお次はまだFOWではなく、デヴィッド・ミーンという人。たったひとりでギターを弾きながら、やや甲高い声で歌う。曲はシンプルで素朴なポップソングながら、だけど妙に存在感が漂っている。固定ファンができるかもだ。途中クリスが登場し、2人でFOWの『A Fine Day For A Parade』を演奏。アダムがこの人の作品をプロデュースしているそうで、今回の抜擢もそういった人脈でなのだろう。
こうして開演から約2時間が過ぎ、ようやく真打ちであるファウンテンズ・オブ・ウェインが登場。ここまでどのオープニングアクトもそれ相当に魅せてくれ聴かせてくれたのだけど、しかしやはりメインは格が違う。ステージに出てきただけで、場内の空気を一変させてしまった(もともと、彼ら目当てのファンばかりだからというのもあるだろうけど)。
ステージは、中央にギターとヴォーカルのクリス。メンバーの中では最も長身で、サングラスにテンガロンハットといういでたちだ。髪型のせいもあるのか、ちょっと老けたようにも見える。左には長髪でサングラスを着けたギター、クリスの後方にはドラム。そしてベースのアダムは、クリスの向かって右という配置。クリスは時折日本語を交えてMCをし、理解不能だがメンバー全員でスライスチーズをオーディエンスに向かって投げまくったりもしていた。曲の方は、序盤は『Hat And Feet』や『Utopia Parkway』などソフトめが多いが、それでも場内のテンションは意外に高い。
そしてテンションの高さは、中盤から更に尋常ではないものになってくる。印象的なギターのリフで始まる『Denise』はまだわかるが、『Leave The Biker』や新作で最も「らしい」曲だと思っていた『Stacy's Mom』までもがハードなアレンジで演奏され、オーディエンスもモッシュしまくり。これが4年前にタワーレコードでアコースティックミニライヴを演ったのと同じバンドのライヴなのだろうかと、我が目を疑うくらいだ。
『Radiation Vibe』では、間奏のときにメドレーでカヴァーを何曲か披露。『Survival Car』で本編を締め、アンコールも2回。『Sink To The Bottom』のとき、サビのところでクリスはマイクから離れ、オーディエンスに歌わせていた。「短い」と言われていた今回の来日公演だったが、バンドの調子がよかったのか、露払いが絶妙だったのか(こんなにオープニングアクトが多かったのは、来日公演中この日だけだ)、時間にすると1時間15分くらい。会場のキャパシティなどからすれば、妥当なヴォリュームだと思う。個人的には、決して短いとは感じなかった。
ファウンテンズ・オブ・ウェインは、クリスとアダムの2人が作ったバンドだ。しかしステージを観る限り、アダムは驚くほどに控えめだ。IVYとしても活動し、かつ数々のアーティストのプロデュースをしている、才能のかたまりのような男であるにもかかわらず、ここでは徹底して黒子に回っている。他2人もいたって地味で、つまりこのバンドは良くも悪くもクリス次第という気がする。
今年リリースされた新作『Welcome Interstate Managers』は、FOWらしいソフトでポップな曲もあれば、サイモン&ガーファンクルのようなフォークもあり、末期スタイル・カウンシルのようなしっとりした曲もあるかと思えば、その次はハワイアン調の曲ときたもんだ。更にはオアシスみたいな曲もあって、よく言えばバラエティに富んでいるが、個人的には迷走しているのかなあと感じている。
ただ少なくとも、この日のライヴにおいてはそうした迷いは感じられず、吹っ切れて演奏できていたように見えた。全般的にハードだったのはかなり意外だが、もしこれが今後の方向性になっていくのだとしたら、バンド自身重要な局面に差し掛かっていると思うし、その場に居合わせられたのは貴重だった(って、大袈裟かな)。
(2003.10.8.)