横浜外道大安祭 2003.10.4:横浜赤レンガパーク特設ステージ
ほんとうはフジロックフェスティバルで外道を観るつもりだったのだが、雨で足場が悪くなっていたことや、同じ時間帯に気になるバンドが別にあったことなどのため、結局パス。しかしパスしたのは、外道を観る機会はきっとまたあるはずと信じてのことで、そしてそのチャンスは意外に早くやってきた。今回は、外道をメインにしたイベントだ。
会場は、横浜赤レンガパーク特設ステージ。赤レンガ倉庫を含む敷地内を赤レンガパークというらしく、ステージは倉庫1号館の手前に設置されていた。白いテントで四方を囲んでいて、中に入ってみるとライヴハウス程度の広さ。これなら、後ろにいてもステージはよく見える。ビデオカメラが数台あり、クレーンまで持ち込まれていて、DVD化の予定でもあるのだろうか。場内は、物販のほかにドリンクも売っていたのだが、「外道テキーラ」なるお酒も売っていた。どんな味なんだ?
まずはトップバッターとしてザ・ホームシックスが登場。札幌出身の4人組で、全員が黒づくめの衣装。2曲目で外道の『コウモリ男』を披露したが、実は今月下旬に外道のトリビュートアルバムがリリースされ、忌野清志郎などのビッグネームに混じって、彼らもこの曲のカヴァーで参加している(ことを、入場時にもらったビラを読んで知った)。
さて、彼らのオリジナルはもろガレージロック。垢抜けていないミッシェル・ガン・エレファントみたいで(苦笑)、だけどその垢抜けていないところがまた新鮮でよかったりして。野外フェスを始めとして、日本なり海外なり、メジャーブレイクする前のバンドを観る機会というのが個人的にも増えてきた。その中にはそのとききりで以降名前を聞かなくなったバンドもいれば、徐々に力をつけてきているバンドもある。彼らは外道に見込まれたのだし、またその外道は50前後でバリバリやっているんだから、頑張らなくっちゃね。
2組目は電撃ネットワーク。個人的には今年のフジロックで初めて彼らを観たのだが、そのときはレッドマーキーがぎゅう詰めで、私は外のモニターから観ていた。今回はそのときとは客の人数も熱狂ぶりもまるで異なり(フジの熱気の方が異常なのかな)、ステージもはっきりと見える。後方にキーボードの人がいて、そしてパフォーマー4人が横一列に並んでパーカッションを(叩いているのはドラム缶)。
さていよいよパフォーマンスだが、毒を持ったサソリを口に入れたりとか(最初にステージを降りてサソリを客に見せて廻った)、バーナーでタバコに火をつけたりとか、ドライアイスを食べたりとか、爆竹仕込みのオムツをはいて火をつけたりとか、フジでもやっていたけど手にアロンアルファを塗ってドラム缶を持ち上げたりとか、ロケット花火を口に向けて放ったりとか、相変わらず無茶をする。締めは草刈り機のような機材の先端にトイレットペーパーをつけて、客に向かって飛ばしていた。無茶やってる割には、この人たちのMCは結構あったかい。
場内にはタイムテーブルの紙があちこちに貼ってあったのだが、そこに記されている時間よりも、心持ち早めに進んでいる。セットチェンジもてきぱきと進み、待ち時間が長い。すると、予定よりも早くギターウルフが登場。3人とも黒の革ジャン姿で現れ、「仁義なき戦い」のイントロが流れ出すと、髪にクシを入れる(お決まりのポーズなのかな)。
ヴォーカルは何を歌っているのかよく聴き取れず、というかそもそも歌っているというよりがなっているという感じ。だけど歌は最小限であったために、そのことはあまり気にならなかった。ほとんどの曲がインプロヴィゼーションを主体にしていて、特にギターソロは延々と続く。曲間を切らすこともほとんどなく、よってテンションが落ちることもほとんどない。そうして『ジェット・ジェネレーション』や『オールナイトでぶっとばせ』などを文字通りぶっ飛ばし、予定時間よりも早く彼らのライヴは終わった。私がギターウルフを観るのは実に6年ぶりのことだが、彼らのスタイルは基本的にほとんど変わっていない。
この日のイベント、開場午後2時の開演2時半という早いスタート。よってここまでは太陽が出ている中でのライヴとなったのだが、メインの外道の番となると、時間的にちょうど日没に。後ろを振り返ると、ランドマークタワーや観覧車、クイーンズスクエアなどに彩られた夜景がきれいだ。そしてステージには、あの「鳥居」がお目見えした。
笑い声がリピートされるSEが響く中、外道のメンバー3人が登場。中野良一がドラムセットの真後ろにある大きなどらを鳴らし、これが合図となってライヴスタート。ベースの松本慎二(ナイトホークスの人)が向かって右に、そして加納秀人は左だ。加納は白の着物姿で、そして連獅子を舞う人が着けるような白ヅラをかぶっている。
まずはインスト曲だが、いきなり加納のギターソロが炸裂。そしてこの音が屋外だと、気持ちよさが倍増される。この日は天候にも恵まれて、ほんとうによかった。加納はギターを弾きながらステージ上を頻繁に動くのだが、そのステップがちょこまかしていて、なんだかかわいい(笑)。いい歳のはずだが、体は細いし特に足はめちゃめちゃ細い。
続く『逃げるな』でやっと加納のヴォーカルが披露されるが、この人の持ち味はやはりギターだ。『いつもの所でブルースを』では、体をくねらせながらギターを操りダイナミックな音を発するが、指先の動きは最小限。ドラムの中野がリードヴォーカルを取る『悪魔のベイビー』では、間奏で女の子3人がステージに登場。あまり歌うでもなく踊るでもなくて、よくわからない(この曲では、必ずこういう演出なのかな)。
外道コールや手を頭の上で振りかざす外道ダンスというのもあって、バンドとオーディエンスは一体になる。客の年齢層は正直かなり高めなのだが、一方で若いファンというのも少なくなく、また女性が多いのにもびっくりだ(ギターウルフファンが多かったのかも)。本編ラストは『香り』で締め、アンコールは『ビュンビュン』。もう少し観たかったという気もするが、ライヴそのものは圧巻だった。
音楽的には洋楽の要素をふんだんに取り込みつつ、しかし単に影響を受けただけでなく、日本らしさというのも意識的に出して行っている外道。そして個人的には、スリーピース編成だということに共感を覚える。今年になって作品が次々にリリースされ、かつライヴ活動も精力的になっているのは、レーベルがソニーになって、資金力も豊富になったからかななんて下衆な勘繰りもしてしまうのだが、本物を観てしまえば、そんなからくりなんてどうでもよくなった。いい音楽は、いつの時代にも通用するのだ。
(2003.10.5.)