Audioslave 2003.1.30:Zepp Tokyo

昨年秋にアルバムをリリースした、オーディオスレイヴ。そんな彼らのナマを拝めるチャンスは、思ったよりも早くやってきた。しかも会場は、ライヴハウスのZepp。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのとき、これまで日本でのライヴは、フジロック'97の前夜に赤坂ブリッツで行われた以外は、いずれも大きな会場でだった。今回チケットが売り切れにならなかったのは少し意外だったが、その代わり、場内には今や遅しと待ち構える熱いファンたちが集まった。女性客も結構見かける。





 定刻を過ぎた辺りから、場内の熱気が少しずつ濃くなってくる。BGMが終わる毎に、歓声と拍手が沸く。そんな状態が20分ほど続き、ついに場内が暗転。真っ暗なステージに4人の人影が現われたそのとき、更に歓声が高くなった。クリス・コーネルがマイクスタンドを掲げ、そしてライトがトム・モレロの後方から当てられ、ギターを抱えたシルエットが浮かび上がった。


 オープニングは、ミディアム調の『Light My Way』。いきなりガツンと来る曲を持って来ず、少し意外。だけどコーネルのヴォーカルが軸のこの曲は、むしろライヴのスタートとしてはぴったりなのかもしれない。続く『Set It Off』では、「オイ!オイ!」という掛け声が自然発生。オーディエンスのリアクションは、思ったよりもはるかに敏感だ。


 ステージには装飾らしい装飾はなく、シンプルに機材が配されているのみ。黒いタンクトップ姿のコーネルは、思ったよりも細身だった。向かって左はベースのティム。コーネルの後方はドラムのブラッド。2人とも、肩に刺青がある。そして向かって右のトム・モレロだが、黒い帽子をかぶり、そして黒い軍人服。上体を少しかがめて、胸の辺りでギターを弾き、なおかつステージ上を素早く動く。帰って来たんだなあ、再出発したんだなあ、と私が痛感したのは、このトムの勇姿を見たときだった。





 サウンドガーデンもクリス・コーネルのソロもほとんど聴いていない私にとって、オーディオスレイヴは、レイジ・ミーツ・サウンドガーデンというよりは、レイジ第2章という見方をしてしまう。だけど彼らはバンド名を変え、音楽性もレイジとは区別する形をとった。このことには内心ほっとしたのだが、同時に不安もあった。いざ出来上がったアルバムは、ストレートでオーソドックスなハードロックに留まっている印象だったからだ。これだけならライヴを観に行くかどうか躊躇してしまうところだが、しかし結局会場に足を運んだのは、彼らの真価が発揮されるのは、やはりライヴの場なのだと信じていたからだ。


 そして、その軸になっているのはトムだ。どの曲でもトムのギターソロのパートがあり、そのときトムにはピンスポットが当たる。レイジを思い起こさせる歪んだフレーズもあれば、レイジのときには考えられなかった甘いメロディのソロもあって、しかしとにかく弾きまくり。そして、それを狭い会場で間近で観れる幸福感といったら・・・。『Like A Stone』でのソロなどまるで魔法のようで、キーボードの電子音のような音がギターから発せられている。トムは、現在のロック界を代表するギタリストのひとりだと思うが、このプレイはやはり唯一無二だと思う。


 一方のクリス・コーネルだが、早口の英語でMCを連発し、前方のオーディエンスとタッチを交わし、といった具合で、いたってフレンドリーだ。ステージを左に右にと動き回るアグレッシヴぶりを見せ、そして声量も充分。コーネルにとって、レイジの3人との合体はプレッシャーにはなっていない様子で、むしろ水を得た魚のように、自分が暴れられる場を見つけたという感じだ。本編ラスト『Show Me How To Live』での雄叫びは、ロバート・プラントを彷彿とさせる輝きを見せていた。





 アンコールで、ついに『Cochise』が来た。ブラッドが長髪を振り乱し、スティックを高く掲げて、ダン、ダン、ダダンとドラムを打ち鳴らす。トムのギターの鋭いリフが、そのビートにからむ。そして、コーネルの絶叫がダメ押しだ。現在のバンドの名詞的な曲であり、4人の結束の強さが最もにじみ出ている曲だと思う。


 そして、ラストとなったのは『Shadow On The Sun』。アルバムの中では『Cochise』に匹敵する輝きを備え、ライヴでも必ずやハイライトを飾るであろうと予想していた曲だが、バンドはこれを最後の最後に持って来た。出だしは穏やかに、しかし徐々にヴォルテージが上がっていく。後半はトムのギターをメインにしたインプロヴィゼーションとなり、そしてコーネルがサビを熱唱。こうして、約1時間の短くも濃密なライヴが終了した。





 『Cochise』のPVを観たのだが、これってよくできていると思う。鉄骨で作られた塔の、てっぺんにあるステージ。トム、ティム、ブラッドの3人がエレベーターに乗り込んでステージを目指し、一方そのステージでは、クリス・コーネルが3人を待ち構えている状態。そして4人が揃ったところで歌が始まり、鉄塔の後方には無数の花火が上がる。これはオーディオスレイヴの誕生そのもの、脈動の瞬間を表現しているように思えるのだ。


 出会い、そして新たなスタートを切った4人。オーディオスレイヴとしての活動が一過性のものなのか、パーマネントなものになっていくのかは、まだわからない。ただ今夜のライヴでは、既に風格さえ感じさせるほど充実していたことだけは、間違いはない。




(2003.1.31.)
















Rage Against The Machineページへ



Copyright©Flowers Of Romance, All Rights Reserved.