The Jeevas 2003.1.7:Club Citta

改装後のクラブチッタに入るのは、これが初めてだった。場所は以前より少し奥の方になっていて、さすがに中はきれいだった。バーカウンターやロッカーの配置が変わっていて(1階だけでなく2階や3階があったのにはびっくり)、以前のチッタを知る者としては少し寂しい気持ちにもなったのだが、ホールに入るとそうした気持ちはなくなった。ホールの中だけは、以前とほぼ同じ作りになっていたからだ。キャパは約1400と聞いていたが、体感ではかなり狭く感じる。





 定刻になると客電が部分的に消え、10分後には完全に消えた。3色のスポットライトがステージを照らし、やがて3人のメンバーが登場。中央にドラムのアンディ、右にベースのダン、そして左がクリスピアン・ミルズだ。ステージには装飾らしい装飾もなく、いたってシンプル。そしてライヴは、ジャムセッション風のインストで始まった。『Gokula』のリフがちらつき、聴いていて思わずニヤリとする。


 続いては、先行シングルの『One Louder』だ。クリスピアンは細身で、特に腕はマッチ棒のよう。しかし不思議と華奢という印象はなく、むしろ大地に根の生えたような図太さを感じさせる。上体をくねらせ、時にジャンプしながらギターをかきならし、そして歌うクリスピアン。その姿勢がそのまま曲にも反映され、パワフルで力強い。(いい意味で)かなり意外であり、びっくりした。





 私は去年のフジロックでもジーヴァスのライヴを観ているのだが、そのときは今ひとつに感じていた。いくらリリース前だったとはいえ、ジーヴァスの曲に迫力や緊張感を見出すことはできず、逆にクーラの曲の方にそれらを見出すことができた。クーラが解散して3年が経つけど、クリスピアン自身の中では、まだそのことにきっちりケリをつけることができてないのではと思ってしまった。そしてその日の夜、同じUKの後輩バンドであるミューズのライヴを観たときに、ジーヴァスはあれでよかったのだろうかと、不安な気持ちになってしまった。シーホーセズが短命で終わってしまったのと同じ運命を、ジーヴァスはたどってしまうんじゃ、といった感じで、あまり前向きな見方はできなかった。


 がしかし、それからアルバム『1-2-3-4 !』がリリースされ、恐らくはツアーで各地を廻るなどして過ごしてきたのだろう。ジーヴァスは、半年前とはまるで別のバンドであるかのように生まれ変わって、再び私たちの前に現れた。アンディの乾いたドラムはしっかりとビートを刻み、ダンはベースを弾きながらのっしのっしとステージを歩き回る。この2人はバックヴォーカルも担当。トリオという最小編成ながらも、歌や演奏に厚みが感じられる。そして、注目はやはりクリスピアン。サングラスを外し、上着を脱ぎ、髪を振り乱しながらギターをかきむしるその姿は、美形の風貌からはちょっとイメージできないほどのワイルドぶりだ。アクションも派手だが、細かいギターテクニックも随所で披露。リードヴォーカルでありながら、あそこまでギターを弾きまくるクリスピアンは、改めて凄いと思う。





 フジのときは、ジーヴァスの曲はクーラの曲の露払いやつなぎにしか思えなかった。聴く側にしてみれば、まるで聴いたことのない曲よりも聴き慣れた曲の方に反応してしまうのは、当然と言えば当然のこと。しかし、ほんとうに重要なのはバンドの姿勢だ。今回は狭い会場でステージも間近で、という好条件で観ているからかもしれないが、この3人の姿勢はとてもポジティブで、演奏を説得力のあるものにしている。今回も『Grateful When You're Dead』や『303』といったクーラの曲を演ったのだが、ジーヴァスの曲との温度差はほとんどなく、自然な流れとして受け止めることができた。


 終盤はクーラ時代の顔的な曲でもあった『Hush』ですっかりあったまり、すかさず『Once Upon A Time In America』で畳み掛けて本編終了。ここで終わるかなとも思ったが、アンコールでメンバーは再登場してくれた。ラストはなんとジミ・ヘンドリックスの『Fire』で、先ほどの『Hush』と同じく、ねじ伏せて曲を自分たちのものにしたんだという断定的な迫力があった。カヴァー能力も錆びついておらず、今なお健在だ。





 半年前のときはあれこれうだうだと考えてしまったのだが、この日のライヴを見る限りでは、パフォーマーとしてのジーヴァスは好調な状態にあると思う。そして今後、クリスピアンの創作意欲が沸き上がって行くようであれば、それはすなわち、ジーヴァスの生命線を長くしていくことにもつながっていくはずだ。




(2003.1.10.)
















Kula Shakerページへ



Copyright©Flowers Of Romance, All Rights Reserved.