浜田省吾 2001.11.25:代々木競技場 Encore

スクリーンに、この日会場入りするときの浜田の映像が映し出される。クルマを降り、ファンに手を振りながらこの日のツアーに対する想いを語り、楽屋に入って行く。毎回ライヴの度にこんな凝ったことをやっているのだろうか。そして映像は変わり、ヘッドマイクをつけた浜田の姿が。これはもしかして、リアルタイムの映像なのか!?


浜田の姿はステージ上にはなく、メンバーを引き連れてステージ向かって右手前の入り口から姿を見せた。向かう先は、アリーナ中央部に設けられたセンターステージ!ゆっくりと歩くその姿をカメラは捕らえ、スクリーンに映す。場内は怒号と歓声が入り混じり、更にヴォルテージが上がる。ついにセンターステージに浜田が上がった。そして始まったのは、『路地裏の少年』だ!浜田のソロアーティストとしての原点に位置する曲であり、私の最も好きな曲でもある。


"ON THE ROAD 2001"は、スタートした1998年4月から昨年までは、ホールクラスの会場で行われていた。それが今年の9月からは、アリーナクラスに変えている。東京圏では幕張メッセにさいたまスーパーアリーナ、横浜アリーナといった具合だ。そしてハコをアリーナに変えたのは、このアンコールにこそその意味があった。ローリング・ストーンズもU2もブライアン・アダムスもやってきたセンターステージ。浜田はこのアイディアを、どこかで自分のモノにして実現したいと、ずっと狙っていたに違いない。ギターを弾きながらゆっくりと歩き回る浜田。そしてセンターステージは、客席とアーティストとの壁を取り払った。オーディエンスはライヴの鑑賞者ではない。ライヴの参加者なのだ。





ここで毎回恒例らしい、オーディエンスの世代調査が行われる。まずは10歳未満だが、会場には親子連れも結構いた。比較的近くにいる、父親に抱き上げられた坊やを浜田がハンディカメラで映し、その姿がそのままスクリーンに映し出される。続いて14歳の少年。20代30代はさすがにたくさんいて、40代50代になるとまたカメラでじっくりと映す。次は先程の14歳の少年を起点として、場内ウェーヴ。1周、2周、3周・・・。ああ、もうなんでもアリ状態になってきた。こうした多くの世代のファンに囲まれてライヴができたことを浜田は感謝し、次は自分のことを語る。姉から譲ってもらって初めてギターを弾いた小学6年のときのこと。そして学校帰りにわざと遠回りして楽器屋によっては、欲しいギターをショウウィンドウから眺めていた15歳のときのこと。・・・と来て曲は「15の頃~」という歌い出しの『終わりなき疾走』だ。


しかし、浜田省吾はよくしゃべる。そのしゃべりは面白いし、共感できるし、ユーモアもたっぷりだ。それが単なるつなぎになっているのではなく、文字通り立派な"ショウ"として成り立たせてしまっているのだから恐れ入る。浜田をミュージシャンだけにしとくのが勿体無く思えて来た。エコーズの辻仁成のように、本でも書いて出版しないものだろうか。


そして今度は曲を書くときの話。曲を書くということは、料理することによく似ているのだそうだ。料理する人が思うのは、それを食べてくれる人のこと。食べてくれた人がおいしいと言ってくれるとそれはとても嬉しいし、今度はもっと頑張って、もっとおいしいものを作って、またおいしいと言わせたい。それは曲作りも同じで、曲を聴いてくれた人がその曲を気に入ってくれたり、感動してくれたりすれば、作った側としてはもっとやってやろうという気になる。で結局何が言いたいのかというと、今日ここに集まった皆さんは、味・が・わ・か・るお客さんだっていうことですよーー。そうして始まったのは、今や名曲の仲間入りを果たした『悲しみは雪のように』!! 





センターステージ熱狂のライヴは『演奏旅行』で幕を閉じた。この曲はアルバム未収録でシングルのカップリングなのだが、これまたいい曲。そのままメインステージに戻り、そして本元となったシングル『君の名を呼ぶ』。センターステージでの大熱狂を和らげ、場内の熱を冷ますかのように、浜田は歌詞を噛み締め、切々と歌った。


ここでメンバー全員がフロントに集まり、挨拶。長かったライヴもこれで終わり・・・かと思ったそのとき、ストリングスカルテットの4人だけは持ち場に戻り、そして浜田はシャツを抜いで白いタンクトップ姿になる。古い曲だけど、もし知っていたら一緒に歌ってほしい。そう言って始まったのは『Midnight Blue Train』。アコースティックとストリングスだけのシンプルな音色の中、浜田の声が響く。浜田省吾の魅力はたくさんあるのだと思うが、そのひとつは高すぎず低すぎずの渋い声にあると思う。その声に導かれるようにして、最後のコーラスは大合唱となった。時計を見ると午後9時45分。長いとは聞いていたが、なんとなんと3時間45分のライヴだったのだ。














ヤクザ映画を観た客は肩をいからせて映画館を出るというが、この日会場を出たときの私がちょうどそんなだった。そしてその頭の中をグルグルと回っていた曲は、第2部で『J BOY』の前に歌われた『モノクロームの虹』だった。新作『Save Our Ship』は抑え目の曲が多く、浜田省吾もその年齢なりの曲を書くようになったのかなと感じたが(もうすぐ49歳になると言ってました)、この曲だけはアップテンポで疾走感に溢れ、ギターは元よりハーモニカまで炸裂。浜田省吾の立ち位置がデビュー以来少しも変わっていないこと、軸がブレていないことを証明する曲だと思う。もっと言えば、これはラヴソングの体裁を取ってはいるが、私にとっては2001年版の『A NEW STYLE WAR』だ。





自由は、システムになど組み込まれない。


正義は、バランスでなど測られない。


そして浜田省吾の旅と戦いはまだまだ続き、私たちの旅と戦いも続く。


































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