Tahiti80 / IVY 2000.10.22:Club Quattro
昨年の暮れはCDショップでどれだけ探しても見つけることができず、結局日本盤発売まで待たされたアルバム『Puzzle』。そしてSummer Sonic2000のときは、狭すぎる会場と仕切りの悪さのために観ることを断念していたライヴ。よって、今回は待ちに待ったタヒチの単独再来日公演である。
まずはオープニングのIVY。女性voのドミニクをフロントに据えた3人組。だが、そのドミニクの両側に陣取っているのは、gのアンディ・チェイスとbのアダム・シュレンジャー。アンディは『Puzzle』のプロデューサーであり、一方のアダムはファウンテンズ・オブ・ウェインのメンバー。スマパンのジェームス・イハとレーベルの共同経営をしていて、『Puzzle』にはゲストで参加するという多彩な活動ぶりだ。
ライヴは約5~6曲の演奏で、時間にして30分くらい。アダムはベースラインをkeyでこなしていた。ソフトでポップながら乾いたサウンドに、多国籍というより無国籍性を感じさせた。今回はタヒチのオープニングのほか各地のCDショップでインストアライヴもこなし、なかなか精力的。11月に新譜がリリースされるそうである。
セットチェンジによる休憩をはさみ(bのペドロは自分でチューニングしていた)、ハワイアン調のBGMに乗っていよいよタヒチ登場。ライヴは『Yellow Butterfly』でスタート。そして2曲目の『Made First』で場内はタテノリになる。ソールドアウトのこの日の公演、場内はすし詰め状態。女性の比率が高い。
vo&gにしてフロントマンのグザヴィエ。長髪を振り乱し、上体を揺らしてギターをかきならす意外やアグレッシヴなパフォーマンス。曲間には丁寧に次の曲を紹介し、客とフランス語でやりとりする場面も。バンドメンバーは4人だが、トランペットやタンバリンをこなす人がひとりサポートで加わっている(この人はIVYのときも1曲トランペットを吹いていた)。
CDで聴く『Puzzle』は口当たりのいい爽やかなポップミュージックなのだが、それがライヴでは全く別の曲に生まれ変わっていてびっくり。多くの曲がヘヴィーでラウドでメリハリが効いているのだ。パワフルな演奏力には迫力があり、ストーン・ローゼズやクーラ・シェイカーを彷彿とさせるグルーヴ感が漂っている。タヒチはライヴバンドでもあったのだ。『You Really Got Me』のリフをちょっとだけ弾き、「キンクスは知ってるかい?」と言って始まったのは『Mr.Davis』。レイ・デイヴィスのことを歌った曲である。こうした先人へのリスペクトが垣間見れるのは個人的に嬉しかったりする。
シングルカットされ、現在のタヒチの顔とも言える『Heartbeat』。その後飛び出したのはなんとゾンビーズのカバー。全く知らないはずなのに、どこかで聴いたことがあるようななつかしい曲だ。そして今度はバーズのカバー『So You Want To Be A Rock'n Roll Star』。私はバーズのオリジナルは聴いたことがないが、パティ・スミスが『Wave』でカバーしているのを聴いていて知っていた。幾分シンプルで、それでいてアグレッシヴな仕上がりだ。この3連発はライヴのハイライトだった。
フランス出身というとそれだけでイコールフレンチポップとみなされがちだが、タヒチの音楽性はもっと奥深い。こうしたカバー曲から推察できる音楽的ルーツは多彩にして旺盛。そしてライヴパフォーマンスで証明してみせた、90'sのUKギターバンドに少しも劣らないダイナミズムの構築。その90'sのUKバンドの多くは音楽的に行き詰まってしまい、こんにちまで生き残っているバンドの方が少ないくらいだ。だけどタヒチは、まだまだ底を見せていない。今後大きく化けて行く可能性を秘めたバンドだと思う。
本編ラストはまたまたグルーヴ感たっぷりの『Revolution 80』で締める。アンコールは計2回。ラストの曲ではbのペドロがドラムを叩き、そのときdsのシルヴァンはkeyを弾いていた。メンバー4人はそれぞれが芸達者であるようで、こうしたパートの交代は珍しいことではないらしい。グザヴィエは曲によってはkeyを弾きながら歌い、またこのラストのときは前半はギター、後半はベースに持ち替えて弾きまくっていた。
1時間とちょっとの演奏時間は、少し物足りないと思った人もいるかもしれない。だけど現時点では持ち歌にも限りがあるし、私としてはCDで聴いていただけではわからなかった発見がたくさんあって、とても満足の行く内容だった。来日公演最終となる横浜も観に行く予定。今回はじっくりと観ていたが、横浜では思いっきり弾けて来るつもりだ。
(2000.10.23.)