The Devine Comedy 98.12.21:心斎橋Club Quattro
仕事の都合もあって、ディヴァイン・コメディ東京2Daysは結局観ることができなかった。その仕事のからみもあっての大阪出張だったのだが、無事にそれも終わり、休みをくっつけて大阪滞在を延ばしている私。と、うまい具合にディヴァイン・コメディの大阪公演があるではないか。チケットもちゃんと?売れ残ってるし・・・。というわけで12月21日、心斎橋クアトロに開演15分前に着く。狭い!
狭いぞ!
なんなんだこの狭さは!こんなところで外タレのコンサート演ってもいいのか(いいよ(笑))?ココでオアシスもやったのか?うらやましいぞ、大阪・・・(笑)。天井が低いのは渋谷クアトロと同様だが、全体に横長で、カウンター席が異様に多い。ステージに向かって逆ハの字型に、それが2列に並んでいる。まるでブルーノートのような(行ったことがないのであくまで想像です)雰囲気もある。ぐるっと中を歩いてみて椅子の数を数えてみる。約100といったところ。そして、広さとしては渋谷クアトロの半分くらいだろうか?もしかしたらegg-manよりも狭いかもしれない。もっとも、ウィークデーの公演で、大阪でのディヴァイン・コメディの認知度の関連もあって客入りは芳しくないようだ。それで余計に狭く感じてしまうのかもしれない。客層は20代の女性が圧倒的に多い。私はステージ向かって左の奥の方のカウンター席に陣取ってみる。ココからでも充分に、近い。
開演予定時間を15分ほど過ぎた頃、ついに客電が落ちる。イントロ。ドアーズの『The End』だ。今回のツアー、もちろん新作『Fin De Siecle(世紀末)』の発表に合わせてのものであり、そのモチーフに合わせての選曲としてこれ、ということなのか。そして、曲が終わる頃にメンバーがぞろぞろと入場してくる。その最後にニールが登場する。一段と歓声があがる。
『Europop』でスタート。なんか、インエクセスやデュラン・デュランを思わせるようなメロディだ。そして、ニールのvoは割とモノトーンぽくて渋くてカッコいい。ニールは予想通り小柄で華奢な体型。ニールの両隣にはgとb、そしてその外にkeyが2人いる。奥にはdsと、カスタネットやら木琴やらその辺りの小物を担当する人が1人いる。続いては『Fin De Siecle』からの『Sweden』だ。『Europop』と違い、高い、のびのある声を出しているニール。何か、ほんとうにこの世がもう終わってしまうくらいの悲壮感と壮絶さが漂っている。ニールに必死について行くバック陣。たった6人の編成なのに、 オーケストラにも匹敵するくらいに音圧が物凄く重厚に聞こえる。
『Promenade』からの『Don't Look Down』の冒頭、ニールのMCが入る。よくわからないが、自分も楽しんでる、みんなも楽しんでほしい、とでも言っているように思えた。手拍子が起こる。カウンター席からでも充分よく見えるのだが、やはり我慢できなくなってきた。前の方ににじり寄ってみる。それでも、余裕で前4列目くらいまで接近できる。ニールの顔、ちっちゃいなあ。そして、間近で見るとその体型が華奢なのが一層よくわかる。体重も軽そうだ(笑)。しかし、スーツ似合うな。ブライアン・フェリー、ロバート・パーマーに次ぐ、スーツの似合うミュージシャンだろう(笑)。
ディヴァイン・コメディの音の世界には、今であって今でない、どこか中世の優雅な世界のイメージを感じている。アルバムを重ねる毎にそれが顕著になっているように感じる。しかし、その節々には泣きのギターもある。ロックであり、ポップ・ミュージックでもあり続けようとしている。このバランス感覚が素晴らしい。ロックンロール調のアップテンポの曲と、しっとりめで壮大なスケールを感じさせる曲が交互に演奏されていく。『Computer Love』は、その両方を兼ね備えているように思え、私が聴いた中ではとても気に入った曲だ。しっとりと始まり、切々と歌い上げるニール。そして後半のギターソロへ。ギターが重そうだが(笑)、この泣きの音色がたまらない。どこか別世界へと連れ去られてしまったような気持ちになってしまう。
「This is from『a short album about love』~」というニールのMCに続いて演奏されたのは、『If I Were You』という曲だった。少し時期はずれだが、秋の夜長、しとしとと雨が降っているときに聴いてみたい曲だ。しかし、コーラスを両脇のkeyのおじさんたちがウラ声でやっているのがなんか笑える。女性コーラスを用意できなかったのかなあ。続いて、「Rock'n Roll!!』とあおるニール。『Thrillseeker』である。う~ん、ロックンロールというより、中世のおとぎ話のようなイメージにとれるのだが(特にフルートの音色が)。しかし、予想外に激しいライヴになっている。なにせ、ステージ前ではモッシュが発生してるし、楽しそうに、気ままに踊る女のコも結構いたりする。てっきり、全員が食い入るようにニールを凝視するような、まるで、観客ひとりひとりとニールとの間に回線がつながっているようなパーソナルな空間になる、と私は予想していたのに、ぜんぜん違う。ニールのMC通りに、みんなでライヴを楽しもう、という雰囲気になっている。
当たり前だが、『Fin De Siecle』からの選曲が多い。そして、その冒頭を飾る曲『Generation Sex』で、一層盛り上がる。モッシュが一層激しくなる。場内大合唱となる。そして、次の『The Certainty Of Chance』で、ニールが客席に向かって手を差し伸べる。客と握手を交わすニール。はっ、遅れてはならぬ、と思い、私も前方に突進して手を差し伸べるが、ひと足遅かった。残念。しかし、チャンスはまだあると信じ、じっと待つ。すると、今度はなんと、
ニールがステージを降りてきた!
思わず一層前に突進!
め、目の前にニールが~
さ、さわった・・・
ニールに、
ニール・ハノンに、
ニールの手に、
ニールのスーツに、
ニールの黒いネクタイに、
ニールの胸板に、
さ、さわってしまった~~~~
どひゃ~(笑)
はっ、い、いかん。すっかりトリップしてしまった(笑)。
続いては、リラックスしたムードの『Becoming More Like Alfie』。そして、『National Express』へ。明るいムードの曲が続く。しかし、悲しいアコーディオンの音色が響く。『Life On Earth』。ココはアルバムまんまのつなぎである。いよいよ佳境のムードになってきたな。そうすると、次は、
『Here Comes The Flood』!
ピーター・ガブリエルにも同名の曲があり、やはり地球上を大洪水が襲って、全てを洗い流してしまうような壮大なスケールの曲になっている。地球もいつか破滅してしまうのか。いきとし生けるものも、全て死に絶えてしまうのか。そうなのか。ニールの絶叫がダメを押す。凄絶である。
しかし、ココでまたギアチェンジが起こる。
『Something For The Weekend』!
大モッシュ大会となる。
私も跳ねる。
力の限りに。
そこにあるのは、絶望ではなかった。
そこにあるのは、諦めではなかった。
そこにあるのは、哀しみではなかった。
そこにあるのは、嘆きではなかった。
そこにあるのは、地から沸き起こるエナジーだった。
そこにあるのは、赤く、赤く、激しく、燃える炎だった。
そこにあるのは、まぶしい閃光だった。
そして、その閃光は、天空を指していた。
そして、その閃光は、宇宙を指していた。
そして、その閃光は、未来を指していた。
そして、私たちを導いてくれた。
私たちを、包んでくれた。
私たちを、守ってくれた・・・。
いったんニールとメンバーは奥に下がるが、ほとんど間を置かずに再登場する。スーツの上着を脱いでいるニール。アコースティック・ナンバーの『Songs Of Love』を優しく歌う。アコーディオンも交えて歌うニール。
すぐさま2度目のアンコールとなる。アップテンポの曲だ。出だしのタイミングをアコーディオンの人が間違え、ニールのチェックを受ける。客席からは失笑が漏れる。
・・・そして、ラストは、やはり『Fin De Siecle』からの『Sunrise』だった。しかし、今までの曲が、アルバムまんまであったのに対し、この曲は、
この曲だけは、
凄い気合いで、
凄い熱唱、
最後の最後まで、
死力を尽くし、
振り絞り、
これ以上出ない、というぐらいまで、
声を、
肉声を、
ありったけ、
張り裂けんばかりに、
絞り出す。
凄絶。
しかし、美しい。
そして、まぶしい。
そして、輝いていた・・・。
密閉された空間、
止まったような時間、
この美しい瞬間、
このかけがえのない瞬間、
旅先の地、ここ大阪で、
私の今年最後のライヴが、
今、
終わった。
(98.12.28.)