King Crimson Project 98.4.10:赤坂Blitz

90年代に入り、数多くのバンドが復活/再結成したが、その中で最も現役度が高かったと言っていい94年~95年のクリムゾン復活劇。そして昨年も、未発表音源を出しまくり。ロバート・フリップ尊師はまだまだやる気たっぷりのようだ。そして今度は、バンドを2つのトリオに分割し、従来のクリムゾンよりももっと自由な音楽を追求。これがやがてクリムゾンの次のステップにフィードバックされるのか。


今年初のBlitz。ウィークデーだったので仕事が少し押してしまい、開演時間を少し過ぎたところで会場に着く。既に第1部のプロジェクト2の演奏が始まっていた。プロジェクト2は、フリップ(g)&トレイ・ガン(b)&エイドリアン・ブリュー(ds)によるユニット。意外に感じるかもしれないが、ブリューは実はもともとドラマーだったのだ。かつてはデヴィッド・ボウイのバンドでgを弾き、そしてクリムゾンではヴォーカルまで担当。器用な人だ。そして、このブリューのdsこそがこのユニットの隠し玉である。


音はダブル・トリオのクリムゾンをそのもの半分にしたようなイメージにとれる。ブリューのdsは緻密でいながらそれでいて意外に力強い。微妙なズレを味にしていたブラフォード&パット・マステロットのツイン・ドラムとはもちろん方向性が異なるが、この方向性の違いこそがプロジェクトの狙いであろう。曲目は不明だったが、途中に『Broom』のフレーズも飛び出す。余裕が感じられる。やはりクリムゾンに比べるとどきどきするような緊張感がなく、肩の力の抜けたパフォーマンスになっている。約50分程の演奏で終了。そしてステージ入れ替えに入る。





第2部はブラフォード・レヴィン・アッパー・エクストリミティーズで、こちらはビル・ブラフォードとトニー・レヴィンが中心である。しかし音の方はというと、こちらはトランペットが大きくフィーチャーされていて、従来のクリムゾンの音楽性を考えるとかなり実験的に思える。結構ジャズっぽい。まるで「唯一フリップに対して意見できるクリムゾンのメンバー」ブラフォードが自分のバンドでメンバーには好き勝手をやらせて、そして自分も好き勝手やってしまっているようだ。クリムゾンでペットというと、どうしてもあの『21st Century Schizoid Man/21世紀の精神異常者』のクラシカルでいて壮絶で内に狂気をはらんだような音色が頭に浮かぶが、こちらのペットは洗練されていてなにか瑞々しく感じられる。


第2部は結局1時間ちょっとで終了。そして、アンコールで再びブラフォードたちが出てきて演奏を始める。プロジェクト2のジョイント、なんて一瞬期待してしまったが、やっぱりなしか。当たり前だけど。





今回は照明が結構メンバーに当たっていてこれも意外だった(もちろんフリップ尊師には当たらなかったが)。95年の来日公演では、客電がついたままなのに、いつのまにか尊師がステージ上にいてgを奏で始め、残りのメンバーも徐々に現れてやがてバンド演奏に入る、といったいかにもクリムゾン、いかにも尊師という感じだったが。次のクリムゾンとしての始動は果たして今世紀中にあるのだろうか。どうやら公表されない、身内だけで出ては消えるプロジェクトも結構あるらしいので。




(98.4.12.)


















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