George Harrison With Eric Clapton 1991.12.1:横浜アリーナ

ジョージが来る!89年のリンゴ・スター率いるオールスターバンドも、90年のポール・マッカートニーも見送っていた私にとって、ビートルズのメンバーをナマで観るのはこれが初めてになる。そして今回の来日はジョージにとっては66年のビートルズ来日以来25年ぶりのこと。ソロでのツアーも随分とご無沙汰で、なんと17年ぶりになるのだそうだ。横浜公演は追加ながら日程的には来日初演となり、会場には国内のメディアは元より海外のメディアも取材に訪れていた。





場内が固唾を飲んで見守る中、ジョージとバンドメンバーが登場。果たして17年の封印を解いてステージで放つ1曲目は何なのか・・・?それはビートルズ時代にジョージが書いた曲のひとつ、『I Want To Tell You』だった。地味な選曲に肩透かしを食らった感がないでもないが、いきなりメジャーな曲を持って来てガツンとやらないところが、逆にこの人らしいかなとすぐに納得する。


ライヴはビートルズ時代の曲とソロの曲が交互に演奏される。そのジョージを支えるは、ジョージとはもはや切っても切れない親友の仲である、エリック・クラプトンだ。クラプトンは前年に快作『Journeyman』を引っ提げての来日公演を成功させたばかり。そして自分のバンドメンバーをそっくり引き連れる形で、今回ジョージを全面的にバックアップしている。ファンにとっては『Layla』のエピソードを始めいろいろと想いをめぐらせるが、その2人がこうして同じステージに立っているだけで、思わず狂喜してしまう。





ジョージの代名詞的な曲のひとつ『Something』やコーラスが印象的な『What Is Life』など、序盤から惜しげもなく名曲が披露される。しかし来日初演というということもあってか、場内が今ひとつ乗り切れてないのも事実だ。ジョージ自身はすっきりとした顔立ちをしていて、はっきり言ってめちゃめちゃカッコいい。のだが、動きが固いのは隠せない。プリンストラストなどの単発のステージをこなすことはあっても、やはり17年のブランクは大きかったのか。


しかしそうした不安をかき消してくれる役者が、ここにはいるのだ。言うまでもなく、エリック・クラプトンその人である。途中ジョージがステージを退きクラプトン単独となるコーナーがあって、前年の来日公演を思い起こさせてくれる演奏を披露する。『Pretending』で始まり、クリーム時代に共演した『Badge』、更にはジョージの元妻であり、書かれた当時はクラプトンと恋仲にあったパティに捧げた曲である『Wonderful Tonight』まで。さすがに『Layla』はなかったが、これジョージとのライヴで演っちゃってよかったのかなあ。。。とにかく、これで場内はすっかり温まった。同時に、やはりクラプトンの方がライヴ慣れしていると感じずにはいられなかった。





こうした露払いを受けて、ダッタンダッタンダッタタンタタン~というイントロと共に、ジョージがギターを手に駆け足でステージに生還。曲は87年の復活作『Cloud 9』からシングルカットされ、全米No.1も獲得した『Get My Mind Set On You』だ。いよいよ後半戦、という空気が漂う。そして名盤中の名盤『Abbey Road』のB面トップの曲『Here Comes The Sun』!わかっていても、感動が沸き起こるのを押さえることはできない。


ポールは甘く、リンゴは人なつっこく、ジョンは少し寂しげな表情をしている。対してジョージは精悍な顔つきをしていると、私は思う。しかしジョージの書く曲は激しくもなければ厳しくもなく、優しさとさりげなさを備えた曲が多い。それがより鮮明になったのがソロ第1作にして当時はLP3枚組の超大作だった『All Things Must Pass』であり、シングルヒットもした『My Sweet Lord』だ。





同じく『All Things ~』に収録されている『Isn't It A Pity』で本編を終了し、いよいよ待ちに待ったアンコールのときが。そして放たれたのは、もちろん『While My Guitar Gently Weeps』!!ジョージとクラプトンの来日の宣伝としてテレビでオンエアされていたのは、プリンストラストで2人がこの曲を歌い演奏しているときの映像だった。それがついに目の前で!ジョージが自信たっぷりでこの曲を持ち込んだとき、ポールとジョンの反応は極めて冷淡だったという。このとき(68年)は各メンバーが、もうビートルズとして続けて行く意義を見出すのが難しくなって来ていた時期だったため致し方ないとも言えるが、それならとジョージは、他ならぬクラプトンをスタジオに招いてレコーディングしたのだそうだ。この曲こそはジョージとクラプトンとの長きに渡る友情の絆の強さと深さを示すものであり、2人の音楽センスが合致した、最高の瞬間を生み出す曲だ。


ラストは『Roll Over Beethoven』。オリジナルはチャック・ベリーで、ビートルズの初期ナンバーでジョージがリードヴォーカルを取った曲としては、筆頭格に当たる出来の良さを誇る。ジョージはライヴをしっとりめに終えるのではなく、明るく陽気なムードを作って締めくくりたかったのだろう。そしてこのライヴは、ジョージのミュージシャンとしてのキャリアを総括するかのような出来になったと思う。



















この17年ぶりとなったジョージのソロ公演は、計12回行われた。これらの中から東京と大阪の公演の音源がピックアップされ、翌年に2枚組のライヴアルバムもリリースされた。ライヴはその後92年4月に単発のライヴを行ったのみで、結局まとまったツアーとしては日本だけに留まり、非常に貴重なライヴになった。いろいろな意味で・・・。



















そして私はこのレポートを、ライヴを観てからまる10年たった日に書いている。ジョージ・ハリスンさんは前日の30日(現地時間は29日)、喉頭ガンにより58歳で亡くなられた。今年はハリスンさんの容態について伝えるニュースが何度も世界中をかけめぐり、そのたびに胸が痛んだ。さぞかし辛く、厳しい闘病生活を送っておられたに違いない。














謹んでご冥福をお祈りします。そして・・・、





10年前に貴方と共有できた同じ時間と空間は、私の中に永遠に生き続けます。














(2001.12.1.)
















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