Summer Sonic 2002/Day 2-Vol.4 Siousie & The Banshees/Morrissey







てっきり解散したものとばかり思っていた、スージー&ザ・バンシーズ。来日は実に19年ぶりになるそうで、こちらもガンズやハノイ、そしてこの後登場するモリッシーに並ぶ"復活組"ということになりそうだ。インドアステージは相変わらず人がまばらだが、如何にもバンシーズ目当てという格好をした、年季の入ったファンもいた。


 スージー・スーは、ぴしっとしたスーツ姿で登場。バンドはオリジナルメンバーなのかそうでないのかわからないが、演奏の方はとてもしっかりしている。序盤こそ場内はざわついていたが、徐々に"暗黒の世界"に引きずり込まれていく。4曲目辺りだったか、スージーは歌いながらジャケットを脱ぎ、ネクタイを外し、そしてシャツも脱いでブラ姿になった。もういい年の人のはずだが(失礼)、体形は崩れてはいない。そして服を脱いだことが関係しているのかいないのか、このアンダーグラウンドな世界はもっと強まっていく。


 恥ずかしながら、私はバンシーズの音をこれまで聴いたことがなく、ぶっつけでライヴに臨んでいる状態だ。スージーはセックス・ピストルズの親衛隊をしていたし、シド・ヴィシャスをドラマーに迎えていた時期もあったので、てっきりロンドンパンクのカテゴリーに入るバンドだと思い込んでいた。だが実際のところ、バンシーズはそれよりもう少し後の世代になるようで、キュアーやバウハウスといったゴス系のカテゴリーに入るらしい。


 ほとんどの曲がミディアムからスローで、観ている方は騒ぐでもなく踊るでもなく、ただ突っ立っているだけだ。だけどそれは決して退屈しているのではなく、磁場にハマって金縛りにでもあったかのように、バンドが発する異様な雰囲気に呑まれているのだと思う。パティ・スミスがニューヨーク・パンクの枠を飛び出しひとりのアーティストとして女王たらんとするのに対し、スージーは今でもデビュー時と変わらぬ視点を持ち続け、"暗黒の女王"たらんとしているように思えた。寒気がし、鳥肌がたつようなライヴだった。





 そしていよいよインドアステージのトリ、そして私自身のサマーソニックのトリ、モリッシーのお出ましだ。の、だ、が・・・、ステージ前には花を持ったファンが詰め掛けてはいるものの、場内が埋め尽くされることはなかった。拍子抜けというより、モリッシーのこの国での集客力の現実を見せつけられて、ガク然としてしまった。


 それでもモリッシーが姿を見せたときは、感慨に浸ってしまった。幾分太ったようには見えるが、それでもモリッシーはモリッシーだ。ここ数年は目立った活動がない隠遁状態だったが、ついにその眠りから覚め、今再び私たちの前に姿を見せてくれたのだ。そして冒頭は、なんとスミスの『I Want The One I Can't Have』(恥ずかしながらその場ではわからず/汗)。7年前の来日でもスミスの曲は解禁していたが、なんと思い切ったことをするのだろう。


 2曲目は、ソロ代表曲のひとつ『Suedehead』。原曲よりかなりテンポを落としたゆったりめのアレンジに、肩透かしの感がなきにしもあらずだが、しかしこのモリッシーの姿を見ていると、ステージに立てていること、オーディエンスを前にできていることが、とても幸せなんだとでも言っているように感じられる。この日はモリッシー目当てなのだとひと目でわかる、花を持ったファンを朝からたくさん見かけていた。彼らはここぞとばかりに花を上にかざして振っている。





 が・・・、序盤こそモリッシーの勇姿に感激したものの、その後場内のテンションも(そして私の中のテンションも)上がることはなく、間延びした雰囲気が漂うライヴになってしまった。やる曲やる曲が『Viva Hate』を中心とした初期の曲ばかりで、しかもことごとくテンポを落としている。ソロでももっと激しくもっと疾走感溢れる曲がたくさんあるのに、それを披露をようとはしない。なんで?どうして?ステージに立ってはいるものの、今ひとつ自信が持てていないのだろうか。


 そしてモリッシーのライヴといえばお約束の、いやモリッシーのライヴにのみ許される、オーディエンスが次々にステージに上がって、モリッシー本人に抱きつくというパフォーマンスもなかった。私も前2列目辺りまで行ってみたのだが、柵とステージの間にはカメラ2、3台を始めとする機材だらけで、更には黒人セキュリティーが睨みを利かせているという状況。これでは、柵を乗り越えてステージまで上がるのはちょっと難しい。この状況は、モリッシー本人にも影響を与えてはいなかっただろうか。


 私個人としては、モリッシーは『Vauxhall & I』で、やっとスミスのキャリアに振り回されることなくソロアーティストとしての自我を確立したと思っているので、選曲が初期にばかり集中しているのはキツかった。どうやら新曲も披露したようなのだが、ライヴ全般の空気を変えるまでには至らなかった。終盤こそ『Meat Is Murder』や『Speedway』で盛り返したが、全体的にどうしてこのようななスタイルを取ったのか、モリッシーの意図がわからないままに本編が終わってしまった。





 ライヴがこのまま終わってしまっても仕方がない状況だったのだが、それでもモリッシーは再び姿を見せてくれた。そしてアンコールとして、ラストとして放たれたのは、なんと『There Is A Light That Never Goes Out』だった!曲調は相変わらずスローだが、もともとこの曲はこうしたテンポなので、差し障りはない。スミスとしてはついに日本に来ることはなく、スミス時代の代表曲のひとつであるこの曲を、ナマで聴いたことのある日本人は少ないはずだ。モリッシーはサビを歌わずにハミングしていたが、これも何かの意図があってだろうか。とにかく、この1曲があったことでこのライヴは救われた。私にとってのサマーソニックのラストも、救われたのだ。


 このライヴには、この日アウトドアステージでのライヴをこなしたノー・ダウトのグウェンの姿もあった。彼女は関係者用のところからではなく、オーディエンスの中に身を投じてライヴを楽しんでいた(セキュリティと思しき取り巻きが数人いた)。私が彼女の姿を見たのはアンコールのときだけだったが、細い身体で目一杯飛び跳ねていた。

The Smiths/Morrisseyページへ




 私にとって2年ぶりの参加となった、サマーソニック。何かと不満の多かった第1回からは進歩を遂げ、そしてガンズを始めとする数々のライヴは、この夏の大切な体験、大切な思い出のひとつになった。もし来年以降も、ガンズクラスの大物をメインに据える路線で行くのかなと想像すると、にやにやしてしまう自分がいる。











(2002.8.25.)
















Back(Vol.3)





Copyright©Flowers Of Romance, All Rights Reserved.