Fuji Rock Experience Vol.7 Skunk Anansie / Limp Bizkit







ロッキンオン10月号のフジロック特集は、成功に終わったフジロック'99を疑問視し、チケット代や動員数や出演アーティストや会場などをピックアップして検証していた。その中の記事のひとつに、今年のフジロックではとうとう"歌"を見つけることができなかった、というのがあった。'97の『People Of The Sun』のような、'98の『Loser』のような、まさにフジロックでなければならなかった瞬間。アーティストが、オーディエンスが、舞台が、そしてその周囲にあるもの全てが有機的に化学反応を起こして生み出され、ひとつの"歌"となって結集された瞬間、それが今年のフジロックにはなかった、ということらしい。


しかし、私は思う。フジロック99にも間違いなく"歌"はあった。『People Of The Sun』に、『Lust For Life』(←個人的'98ベスト)に、この流れを継承し、そして今年のフジロックを象徴する"歌"が。それは『Secretly』だ。シャウトするスキンの声が、その気合いが、その魂が、グリーンステージの空気を切り裂いた。炎天下、最も気温が上昇し、最も暑く、汗が滝のように止めどなく流れ落ちるこの時間帯に、私たちの体は凍りついた。私たちの魂は凍りついた。体じゅうの毛をむしりとられ、十字架に縛りつけられ、身動きのできないままに谷底に突き落とされるような、そんなふうに手も足も出なく、させられた。ねじ伏せられた。完敗だ、私たちの。そして完勝だ、スカンク・アナンシーの。1日目のレイジを上回って、フジロック99のベスト・パフォーマーだ。





フジロック99の最大の功績は、リンプ・ビズキットを出演させたことにあったと思う。ニューアルバム『Significant Other』は全米アルバムチャート第1位を驀進中。そしてフジロックの1週間前に行われたウッドストック99での凄絶パフォーマンス。まさに絶妙のタイミングでの来日。そしてそれが野外ステージという格好の舞台。スカンク・アナンシーがあんなにも素晴らしかったので、リンプはあれ以上のものを出せるのか、と私は不安になっていたのだが、それは不用だった。しょっぱなからモッシュビットが炸裂している。'98のKornと比較したくなるが、Kornのときは未知なる強豪が初お目見え、という期待感があったのに対し、リンプにはもう最初から約束された強烈さがあった。


途中、voのフレッドがステージを降り、先程のスキンと同様にモッシュの渦の中に自らを埋める。そして再び浮かび上がる。がしかし、どんどん奥の方までやってくるぞ!そんな!バカな!こんなことって起こり得るのか!?フレッドはもうPA付近まで来ている。フジロック99の「歌」が『Secretly』なら、フジロック99の「絵」は、間違いなくこの瞬間だった。しかし、見てる方まで頭に血が昇ってしまった。ふーっ。後半、なぜかレイジとKornの曲をサワリだけ演って、そしてメタリカの『Master Of Puppets』をワンコーラス演奏する。私は、そのときは和み、そして楽しんだのだが、今振り返って思うと少し残念だ。あんな余興じみたマネをしなくても、自らのオリジナルだけで十分勝負できるだろうに。





結局、リンプは途中で切り上げてショップエリアに夕食をとりに行く。New Band Stageではこの日トリのくるりが。想像をはるかに超えてハードだった。単に私が知らないだけなのだが、あまりに激しかったので、このバンドはくるりじゃなくってピールアウトと出演順が入れ替わったんじゃ、と思ったくらい。戻り際、今度はVirgin Tentを覗いてみる。DJが誰なのかはわからなかったが、ニュー・オーダーの『Blue Monday』がかかっていた。この中は冷房が効いていて涼しい。


(99.9.9.)
















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