Fuji Rock Returns Vol.7 The Prodigy ~ 感動のフィナーレ







 時は来た。本当なら1年前、天神山スキー場で7月27日の夜にメインステージにて昇華するはずだった、プロディジーの絶対的な意志の力と、未知との遭遇を待ちわびる日本のオーディエンスの意志の力との化学反応が、1月の幕張を経由して、ついに、ついに始まるのだ。




 リアムだ!・・・リロイだ!・・・マキシムだ!・・・キースだ!




 プロディジーだあああああっ!!!




 うわああああああああああああっ!!!




 中枢を直撃する重いビート。視神経を奪う無数の閃光。これだ。これだっ。これなんだああああっ!!




 1月のときも感じたが、マキシムのキレがもの凄くいい。そして、そのぎらぎらした目つきには圧倒的な自信の光が宿っている。なにか神がかった意識が彼を支配し、動かしているように見える。重厚なビートも、背中から浴びる大量の光の嵐も、辺り一面の空気さえも、彼は自由自在に操っている。彼の意志のもとにステージ上一点に集中している。


 そしてもう1人、パフォーマンスの舞台としてのステージが狭すぎると感じる男がいた。キース・フリント。ステージを駆け下りて客席にダイヴする。マキシムが神がかりなら、キースは化け物に憑かれた異生物だ。オーディエンスに持ち上げられて天に近づこうとする。彼を束縛するものは何もない。誰も彼を止められないのだ。


何度も3枚のアルバムを聴いたのに、1月にライヴを観ているというのに、それでも気がつかず、今この場で改めて本物を見ているうちに気づいたことがある。プロディジーは『The Fat Of The Land』で突然変異を起こしたわけではないのだ。彼らは最初から何も変わっていなかった。時代がプロディジーより遅れていただけだったのだ。1997年は世界中がそのことに気づいた年だった。そして日本では、今、まさにこの瞬間がそうではないのか。


『Firestarter』の激烈なイントロが私たちを打ちのめした。いや、打ちのめしたのではない。私たち1人1人の中に大きなエナジーを注入したのだ。プロディジーは私たちをどこまでいざなうのか。私たちはどこまで連れ去られていくのか。どこまで登り詰めればいいのだろうか。


このハイパーな世界、この人の意志の大きな波動。目に見えるように、手に取るように感じることができる。集中している。そして、それが一気にスパークするときが来た。
























『Smack My Bitch Up』!!

























メーターがレッドゾーンを振り切った。

























全てはこのときのために。

























全てはこの一瞬のために。

























鍵が回った。

























扉が開いた。

























そこには、目の前には、魂の世界が広が っていた。

























信じられなかった。その中に自分がいる のが。

























信じられなかった。その中にみんなと一 緒にいるのが。

























この瞬間は永遠だった。

























誰にも壊すことのできない空間だった。

























・・・やがて、出口が近づいてきた。

























『Fuel My Fire』!!!

























炎が、急激に加速した。

























炎が、激しく揺らめいた。

























青白く、激しく、最後まで燃えた。

























・・・そして、燃え尽きた。

























・・・そして、真っ白になった。

























花火が、上がった。

























それは、確認の合図だった。

























この2日間が素晴らしい瞬間の連続であったことの。

























そして、来年、再び富士の元に集結することの。

























私は、そして私たちは、この2日間のことを絶対に忘れない。

























絶対に忘れない。

























絶対に。














The Prodigyページへ



(98.8.6.)
















Back(Vol.6)





Copyright©Flowers Of Romance, All Rights Reserved.