Fuji Rock Festival'07 Day 3-Vol.1 Paul Steel/The Wombats/The Pigeon Detectives/The Answer







当初私は、2日目は深夜までねばり、3日目はのんびりと昼過ぎから活動するという予定を思い描いていた。のだが、3日目の朝イチのアクトで、気になるアーティストがいた。MySpaceの私のアカウントには、週に4、5件のフレンドリクエストが来る。そのほとんどは私が知るよしもないインディのアーティストなのだが、そうした中に今年のフジロックに来るアーティストからのリクエストがあった。リクエストを承諾するか拒否するかは、そのアーティストの音を試聴してピンと来るか来ないかで決めているのだが、そのアーティストについては承諾していた。上記のような予定を描いていながらも、そのアーティストのことがずっと頭の片隅にあった。


せっかくリクエストももらったんだし、私自身音も決して嫌いではないのでと、結局そのアーティストを観るために3日目も朝早くから活動することにした。そのために、2日目の深夜はスペース・カウボーイだけに留めておいたのだ。そのアーティストというのが、レッドマーキーのトップバッターであるポール・スティールである。知名度及び朝10時台の開始ということなどもあってか、さすがにレッドマーキー内は満員大入りとはならず、半分くらいの入りという状態でライヴは始まった。


バンドは結構大所帯であり、そしてそのメンバーなかなか個性的だ。ギターはメガネ女子、ベースは日本人。そしてドラムという通常編成のほか、黒人と白人の女性コーラスも擁している。ポール・スティールその人はフロントに陣取り、曲によりギターとキーボードを使い分けながら歌う。音はポップでいながら要所をソリッドに締めていて、シンガーソングライターの要素とバンドスタイルの要素を兼ね備えている。必ずしも歌重視というわけでもなく、間奏では重厚感に溢れたインプロヴィゼーションを繰り広げ、かなりの大作として仕上げていた。それだけではなく、演奏をメンバーに委ねて自らは軽快にダンスを踊るなど、洒落た一面も披露。この後グリーンステージに出演する、ミ−カのミニチュア版(←いちおう褒め言葉です)のようなインパクトを覚えた。





このままレッドマーキーに留まり、次のアクトを待っていた。ポール・スティール・バンドの日本人ベーシストの友人も観に来ていたらしく、セットチェンジ中にスタッフと話をしていて、すると少ししてからスタッフがバックステージパスを持ってきて、彼らはそれを手にステージ裏の方に入って行った。また少しして、今度はポールご一行が揃って登場し、脇の通路からオアシスエリアの方に抜けて行った。すれ違いざま、私はポールに握手を求め、がっちりと返してもらった。ポールは、恐らくどこかのブースでミニライヴと握手会をしに行ったのだと思う。





さて、お次はザ・ウォンバッツというUKはリヴァプール発の新鋭スリーピースバンド。登場時には、意表を突いて3人で1本のマイクの前に並び、アカペラで1曲歌い上げるというユニークな幕開け。コチラも期待できるかなと思ったのだが、音こそラウドでガレージなギターロックだが、演奏の脇が甘いというか、ちぐはぐさが随所に出ていて、観ていてかなり複雑な気分にさせられてしまった。スリーピースというのは、3人がそれぞれの力量を対等にぶつけ合い、それがうまく融合すればとてもいいライヴになるが、それを成立させる力量がないと、一転して厳しいものになってしまう。終盤こそなんとか頑張ってはいたが、私のこのバンドに対する興味は一気に薄れてしまった。


なおもレッドマーキーに残留し、続いてはザ・ピジョン・ディテクティヴズの番。こちらも、UKはリーズ発の新鋭である。バンドは5人組で、ツインギターを軸としたダイナミックでスケール感に溢れた演奏をしてくれて、かなりの手ごたえを得ることができた。かつてこのレッドマーキーでフジロックデビューを果たし、やがてグリーンに進出して行った、クーパー・テンプル・クロウズやカイザー・チーフスを彷彿とさせる。クーパーの方は惜しくも今年4月に解散を表明してしまったが、彼らはその穴を埋めるに足る、力量と勢いを備えたバンドではないだろうか。今後が期待できる。





更にレッドマーキーに居座り、今度はジ・アンサー。北アイルランド出身の4人組だそうで、既に5月に来日して単独公演をこなしている。そしてそのスタイル及びサウンドは、もろレッド・ツェッペリンだ。ツェッペリンの影響を受けたバンドはそれこそ星の数ほどいるが、ここまで直接的に継承した例というのは、ありそうで実はほとんどない。それはなぜかというと、とてつもなくハードルが高く、こなし切る前にパロディに陥るリスクを背負わなければならないからだと思う。


しかし彼らは、まず音はラウドでハードでソリッドで、70年代のクラシックロックの香りを漂わせてはいるが、だけどそれは決して古臭くなっていない。そしてパフォーマンスも、ロングヘアーのヴォーカリストを軸としてグルーヴ感に溢れている。もちろんコピーバンドではないのだが、観る側がツェッペリンの面影を求め、そしてそれが許されるようなオーラをバンドは発している。個人的にはひっじょーに気になるバンドだったのだが、たった1曲を観ただけで、身を引き裂かれる思いをしながらレッドマーキーを後にした。小雨が降っていて、雨具をかぶりながらグリーンステージに向かったのだった。


(2007.8.26.)
















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