Fuji Rock Festival '06 Summary フジロックフェスティバル'06を総括する
ついに開催10回目を迎えたフジロック。今年も、昨年と同様に3日通し券と2日目の1日券が事前に完売し、動員は最終的に3日間で延べ13万1千人を記録したとのこと。2日目の日中に雨が降りこそしたが、それ以外は天候に恵まれ、数年ぶりに過ごしやすかった。ここでは良かった点、改善すべき点について検証する。もちろん、私の独断と偏見によるものです。 |
1. 会場 | 苗場スキー場は快適だったのか |
2. 仕切り | 主催者の手際はよかったのか |
3. ショップエリア | 食事やグッズ売り場はどうだったのか |
4. コスト | チケット代等 |
5. マナー | 参加する側の意識について |
6. ラインナップ | 値上げしたのに豪華さを欠く |
7. トータル | そして、来年に向けて |
1. 会場 | 苗場スキー場は快適だったのか |
グリーンステージの後方にはホワイトステージ方面に向かう道があるのだが、昨年までは土の道だった。それが今年は、なんとしっかりと舗装された道になっていて、道幅も広く設定されていた。ゆったりと移動することができ、また雨が降ってぬかるむこともなくなった。これは立派だ。 昨年はまだ建設中だった、ホワイトステージからグリーンステージまでのボードウォーク。主催者がボランティアスタッフを募ったり、また地元の人たちの協力があったりして、開催前までに何度か作業が行われてついに完成。個人的にも何度も利用したし、グリーン~ホワイト間の移動時の混雑緩和に大いに役立ったと思われる。所要時間は、林道を歩くのとほぼ同じ約10分だ。 |
2. 仕切り | 主催者の手際はよかったのか |
開催に関するもろもろのアナウンスは、昨年に引き続き総じて早めに行われた。タイムテーブルも7月あたまに発表されたのだが、ここでひとつ改善があった。それは、オレンジコートとフィールド・オブ・ヘヴンの出演時間が、かぶらないようにずらされていたことだ。両ステージは密接していて、アーティストの演奏時間がかぶっていると、隣のステージの音が漏れ聴こえてしまっていた。これには、オーディエンスが目の前のアーティストに集中できないばかりか、やりにくそうにするアーティストもいた。 現地でのチケットとリストバンドの交換は円滑に進み(早割りでの購入者には、チケットではなくリストバンドが送付されたようだ)、入場ゲートでのICチェックも、特に問題は起こらなかったと思っている。 |
3. ショップエリア | 食事やグッズ売り場はどうだったのか |
オレンジコートにおいて、トイレと出店がいずれもステージ向かって左側に設置されていた。そのため、トイレに並ぶ人の列と出店に並ぶ人の列とが交差し、更なる混雑を生んでいた。例年、出店は向かって右側に設置されていたので、このような混雑は発生しなかったのに。 グッズ販売については、キャンプサイト入り口前にはオフィシャルグッズ売り場が設置されていて、今年は昨年に引き続き前日売りが行われた。販売する物品の一部をレストランのメニューのような形でまとめていて(これも昨年から実施)、待っている人に配ってあらかじめ見せるようなことをしていた。アーティストグッズ売り場でも、待ち行列にメニュー配布ができればベターなのだが、こちらはアーティスト数が多く、また同一アーティストでも数種類扱っていることがあるので、現実的には難しいのかな。 |
4. コスト | チケット代等 |
今年も昨年に引き続いて値上げになってしまったが、昨年は例年の価格に戻っただけだったので、実質的に今回が初の値上げということになる。3日通し券だけでなく、1日券も早割り価格も値上げになった。これまでの価格設定で採算が合わないので、ということだが、あれこれ手を広げまくったあげくに値上げでは、参加する側としてはやっぱり面白くない。規模を拡大するばかりがフェスではないということに、そろそろ気づいてはどうだろうか。 そしてこれも毎年総括に書いていることで、今年もあきらめずにしつこく書き続けるが、スマッシュ会員のアドバンテージをつけてほしい。会員は早割り価格でチケットを求めることができ、またその期間も通常の早割り受付よりも長くとる、といったことをしてほしい。ことフジロックに関しては、何のための会員制なのかと思ってしまう。 |
5. マナー | 参加する側の意識について |
マナーはここ数年低下の一途を辿っていて、細かいことは昨年の総括で挙げたのだが、今年参加してみてひとつだけどうしてもものすごく気になることがある。それは、一方通行とされているところ(具体的にはグリーン~オアシス間の橋やボードウォークだが)を、逆方向に進んでくる人たちが少なくないことだ。これは若い人たちばかりではない。いい年をした大人でさえ逆行している。平気で逆行する、逆行できる神経が、私には理解できない。 |
6. ラインナップ | 値上げしたのに豪華さを欠く |
2000年以来のしょぼさだと思っていて、レッチリがいるだけ2000年よりマシ、というレベルだと感じている。開催前までは、最も規模の大きいグリーンステージのラインナップが豪華になってくれることをひたすら願っていたが、それは叶わなかった。当日、現地では自分なりに考えて行動し、3日目のホワイトステージに楽しみを見出すことはできた。 フェスの顔とでも言うべきグリーンステージのヘッドライナーに、フランツ・フェルディナンドとストロークスが起用されてしまったという事実は、とても重いと思う。ヘッドライナー候補として浮かぶ幾多のアーティストを差し置いてまで、彼らがその場に立つだけの「仕事」をしてきたとは、私にはどうしても思えない。また、今回彼らがこなしてしまったことで、ヘッドライナーのステータスが軽くなってしまった気がする。今年こうした実績を作ったことで、来年以降も安易なブッキングがされてしまうのではという恐怖感がある。来年はアジカンがトリですか、再来年はアークティック・モンキーズがトリですか、もう何でもアリなんですか、という皮肉のひとつも言いたくなる。 同じアーティストが何度も出ているというのも、気になるところだ。主催者は、来てくれるお客さんに対して、ええっフジロックでこんなアーティストが観られるのかあ!と思わせること(つまりサプライズ)を仕掛けようとは思わないのだろうか。そんなことをしなくても動員が毎年伸びてるから、思わないんだろうな、きっと。 |
7. トータル | そして、来年に向けて |
97年に富士天神山スキー場で始まったフジロックフェスティバルは、台風直撃があり、また主催者や参加者の意識の低さもあって大混乱し、2日の予定が初日しか開催されなかった。翌98年には東京に場所を移していちおう成功させ、99年からは苗場スキー場に定着して、現在に至っている。この間にはもちろんさまざまな困難があり、またさまざまな喜びや感動があった。個人的にも10回全てに参加している身として、とても感慨深いものがある。 会場設営や仕切りの面などにおいては、問題として挙がっていた件を毎年少しずつ着実に改善し、もう書くこともなくなってきた。ただその代わり、私が最も望んでいる2つのこと、「コストダウン」と「ラインナップの充実」については、今年に関しては大幅に逆行してしまったのがとても残念だ。 値上げしたならしたなりに大物アーティストを呼んでほしいし、まさかこのアーティストが観られるとは思わなかった、というサプライズももたらせてほしい。それができずに同じアーティストを使い回ししていたり、低レベルのブッキングを大抜擢ということばでごまかしたりしていると、この会社金銭的にも社員の気持ち的にも余裕ないんだろうな、だからこんなことしかできないんだろうな、という詮索をしたくなる。 近年、ローリング・ストーンズやマドンナといった大物アーティストの単独公演でチケット代が高額に設定されているのを始めとして、コンサートのチケット料金は高騰する流れにある。こういう流れができつつあるのを、私はとても恐れている。私が「コストダウン」と「ラインナップの充実」にこだわるのは、音楽はお金持ちだけのものではないはずだと、信じているからだ。 |