Fuji Rock Festival'06 Day 3-Vol.4 Mogwai







今年のフジロックのラストを誰で締めくくるかを、ギリギリまで私は決めかねていた。というのも、ホワイトステージのモグワイとグリーンステージのハッピー・マンデーズが、タイムテーブル的にもろかぶりになってしまったからだ。苗場に来るまでは、希少価値が高いと思われるハピマンの方を意識していたのだが、この場でついに決心した。スーパー・ファリー・アニマルズのあまりにも絶妙な露払いがあったことを考え、この流れを大事にしようと思った。つまり、モグワイで締めることにしたのだ。


個人的にもモグワイは好きなバンドで、ライヴも何度も観ている。ではあるが、フェスとなると観たのは2000年のレッドマーキーのときだけで、つまりは野外でのモグワイというのを、私はまだ体験していなかった。星空に包まれた舞台で彼らの音楽を聴けたら気持ちいいだろうなあと気持ちを高めていると、ホワイトステージにどんどん人が集まってきた。最終的には、入場規制に近いくらいの規模にまで膨れ上がったと思う。





その前に出演していたスーファリは少し押して終了していたが、モグワイは予定通りにステージに登場。ライヴは、新譜『Mr.Beast』からの『Friend Of The Night』でゆったりめにスタートしたが、続く『Glasgow Mega Snake』で早くも場内は沸点に達した。『Mr.Beast』はどちらかと言うと美メロ重視の曲が多く、それはそれでモグワイの魅力のひとつではあるのだが、そんな中で轟音炸裂というモグワイの中心軸的な魅力を発揮しているのが『Glasgow Mega Snake』であり、これがド派手なライティングとも相俟って、極上の空間を作り上げている。


メンバーは、淡々とおのおのの楽器を弾いているだけで、そこには特に大きなアクションもない。象徴的なのがフロントマンのスチュアートなのだが、キャップを深くかぶり、上体を軽く揺らすようにしてギターを弾いている。その表情がとても気持ちよさそうで、この素晴らしい時間と空間を、何より自分が一番楽しんでいるように見える。そしてそうすることが、オーディエンスを満足させることにつながっていくのだ。





モグワイは基本的にギターインストバンドだが、曲によってはヴォーカルが入るものもある。そのヴォーカルを担うのは多くの場合バリー・バーンズで、この人はふだんはキーボードを弾いているのだが、曲によりギターを手にもするし、ヴォーカルにしてもヴォコーダーを使って機械的な音声を出したりして、なかなかユニークな存在だ。美メロの曲も、この人の貢献度が高いと見ていて、現在そして今後のモグワイの音楽性を支えるキーマンかもしれない。


メンバーは、全員が黄緑色のジャージを着てステージに登場したが、私は見た瞬間にその意味を理解した。彼らはサッカーファンであり、スコットランドが拠点であり、スコットランドにはセルティックFCというプロサッカーチームがあり、セルティックには中村俊輔が在籍しており、中村俊輔は日本人プレーヤーであり、ここは日本であり、フジロックは日本を代表するフェスティバルであり、そしてバンドは今まさに演奏している。これは、モグワイから私たちへのメッセージなのだ。スチュアートは、中盤で「dedicated to Shunsuke Nakamura♪」と言って演奏を始めた曲があったのだ(どの曲だったっけなあ/汗)。





バンドは1曲1曲を丹念に演奏してくれ、場内は興奮しているようでいて、どこか得体の知れない凄いモノを見せられているような、不思議な雰囲気に陥っていた。本編ラストは『Yes! I Am A Long Way From Home』で締めくくられたが、もちろんこれだけで終わるはずはなく、もちろんアンコールに突入。ここで、私が密かに期待していたことが実現した。


ステージに、モグワイのメンバーに加えてスーファリのグリフが登場した。となると、曲はもちろん『Rock Action』に収録されている『Dial: Revenge』だ。こういうその場限りの共演が実現するのもフェスの醍醐味のひとつで、3日目ホワイトステージのラインナップがモグワイ~スーファリと発表された時点で、私はこの共演が行われるのを期待した。それがほんとうにそうなってしまったのだから、嬉しいったらありゃしない(エンヴィーとの共演もあるかなと思ったが、残念ながらそれはなかった)。これは、共演を果たした両者にとっても、思い出深いステージになったに違いない。


そしてオーラスは、モグワイキラーチューンのひとつ『Helicon 1』だった。この曲にはガツンという強烈なインパクトこそないのだが、音の洪水に徐々に引きずり込まれていって、いつのまにかどっぷりとハマってしまっているような魔力がある。それを野外のステージで体感できた喜びを噛み締めながら、空を見上げてみた。天空に光る星々が、祝祭の空間を作り上げていた。

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満たされた気持ちを抱きつつ、ホワイトステージを引き上げた。橋を渡ると、左手にあるところ天国では「雪」が降っていた。林道を歩き、グリーンステージまで戻って来ると、そこはもう全てのアクトが終了した後で、撤収作業が始まっていた。まばらではあるが、その場にたたずんでいる人たちもいた。余韻に浸っているのだろうか。ここ数年話題になっているゴミの置き捨てだが、思ったほど多くはなかった(裏を返せば、少しはあったということなのだが)。


更に歩きゲートをくぐって出ると、左手にはパレス・オブ・ワンダーがあって、ここはまだ稼動していた。ルーキー・アー・ゴー・ゴーでは、若手バンドがライヴを繰り広げていた。クリスタル・パレスという館が今年から出来て、入ってみると外側はお酒が飲めるバーカウンターになっており、そして中央部はダンスフロアになっていた(ここでアトラクションも行われていたようだ)。館の手前には大きなオブジェがあったのだが、そこで宙吊りになってパフォーマンスをしている女の人がいて、びっくりした。





そんなこんなで、今年は久しぶりに天候に恵まれて、多くのアクトを観て、おいしいものもいっぱい食べた。あまり友人には会えず、アーティストや著名人もあまり目撃はしなかったけど、前夜祭から4日間楽しく過ごすことができた。あの嵐の天神山を体験して死ぬ思いをしたときには、9年後にフジロックが開催されるなんて、予想すらできなかった。それがこうして無事に10回目を終えることができたのだから、こんなに嬉しいことはない。


スーパー・ファリー・アニマルズのライヴのラストで、スクリーンに表示されたとっても素敵なメッセージがあった。参加した私の率直な気持ちを見事なまでに代弁してくれているので、それをこの場で拝借することにより、このレポートの締めくくりにしたい。































ありがとう・・・
































そして、お疲れ♪
















(2006.8.27.)
















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