Fuji Rock Festival'06 Day 3-Vol.2 Broken Social Scene/Transit Kings/The Raconteurs







再びホワイトステージへ。今度はカナダのブロークン・ソーシャル・シーン。複数のバンドを掛け持ちしているメンバーもいて、バンドの正式メンバー数は確定せず、常に流動的という不定形バンドだ。今回は8人編成で、男女のツインヴォーカルを軸としつつ、ギタリストが曲により2人だったり最大4人にまで増殖したりと、噂に違わぬ変幻自在ぶりを発揮する。当然音量は分厚く、音圧も凄まじく、多種多彩な音の世界が繰り広げられるのは、観ていて圧巻だ。


彼らは持ち時間を10分ほどオーバーして終了し、ステージを後にした。しかし場内からは、アンコールを求める拍手が鳴り止まなかった。ステージ上は、既にスタッフがセットチェンジに取り掛かっていたのだが、なんとここでメンバーが再登場し、スタッフは退散してしまった。よもやのアンコールが始まり、場内は大熱狂に包まれた。終わったはずの幸福な瞬間が、再びよみがえったのだ。


マジックが起こりやすいフェスティバルでも、こういうことは珍しい。それだけ彼らのライヴがオーディエンスにインパクトを与えたのであり、またバンド側もそれに応えてくれたのだ。彼らのライヴを今年のフジのベストアクトに挙げる人も少なくない様子だが、個人的には感激というよりは、してやったりという気持ちの方が強い。私は昨年のカナダ・ウェットというイベントで彼らのライヴを観て、充分過ぎる手ごたえを掴んでた。そしてそのときのレポートに、フジロックに出るべきだしフジの空気が似合うはずというニュアンスで書いていた。それが、その通りの結果になったのだ。


続いてはトランジット・キングス。ユニットとしてのキャリアは浅いが、そのメンバーはジ・オーブのアレックス・パターソンなど、腕に覚えのある職人アーティストたちらしい。さてライヴだが、2人が卓の前に陣取ってプログラミング操作し、デジタルながらゆる~くダンサブルな音が心地よく、オーディエンスをゆる~く踊らせることに成功していた。向かって右端にギターが置いてあったのだが、曲は進めど誰もそれを手に取る気配がなかった。私は終盤で切り上げたのだが、あれ結局使われたのかな。





再びグリーンステージに戻ってきた。この日のグリーンは、忌野清志郎がキャンセルになったものの主催者はその代役を立てず、出演時間だけを調整することで済ませてしまった(つまり他の日より出演アクトがひと組少ない)。よってここからは、ホワイトやレッドマーキーとのカブりが多々発生することとなり、参加者にとっては悩ましいこととなった。確かに、清志郎は替えのきかないスペシャルな人だ。だけど、若手アーティストを早い時間帯に据えるとかして、時間はずらさずに済ますことを考えてほしかった。


さて、そのグリーンはザ・ラカンターズ。ホワイト・ストライプスのジャック・ホワイトが、友人でもあるブレンダン・ベンソンらと作ったバンドで、今年いっぱいはこれで活動するとのこと。ストライプスがギターとドラムだけの変則的であるのに対し、ラカンターズはオーソドックスなバンド編成。ジャックにとっては、むしろこっちの方がやりやすいのではないかと想像してしまうし、この人の溢れ出るクリエイティヴィティを放出させる場として、うまく機能してほしいバンドだ。


音は70'sのギターロックの香りを漂わせつつも、彼らならではの感性が見え隠れし、古くて新しい不思議な感覚がある。ジャックばかりが前面に出て目立つということもなく、自らバンドの一員として取り組んでいるというさまが伺え、好感が持てた。曲は、シングルカットされている『Steady As She Goes』を早々に披露し、またデヴィッド・ボウイの『It Ain't Easy』もカヴァー。これが違和感もなく、それどころか結構ハマっていた。ただ、グリーンステージで演るには全般的に地味で、できるならホワイトかヘヴン辺りでゆったりとやらせてあげた方がよかったような気がした。


(2006.8.27.)
















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