Fuji Rock Festival'03 Day 3-Vol.3 Elvis Costello/ボードウォーク
レッドマーキーを出てみると、陽がすっかり沈んでいて、辺りは夜の景色に様変わりしていた。初日、2日目とも雨に見舞われたのだが、どうやら3日目は晴れたままで持ちそうだ。そしてグリーンステージでは、既にエルヴィス・コステロのライヴが始まっていた。
前回のフジ出演は'98で、このときはスティーヴ・ナイーヴと組んでのピアノとアコースティックギターだけでのシンプルなセットだった。当時のコステロはバンドスタイルを離れていた時期にあったのだが、それでも往年の名曲を次々に放ち、オーディエンスを引き入れる力量はさすがだった。それが昨年から再びバンドスタイルに戻り、ジ・アトラクションズならぬジ・インポスターズを率いて、私たちの前に帰ってきてくれた。
今回もバンドスタイルで、ほとんど曲間を作らずに次から次へと演奏しまくり、ギターを弾きまくる。往年の代表曲もランダムに飛び出し、緊張感に溢れた鬼気迫るステージをこれでもかと言わんばかりに続ける。ベタな言い方かもしれないが、4年前の同じ時間帯に同じステージに立って『London Calling』を歌っていた、コステロとはほぼ同世代のジョー・ストラマーの姿がダブって見える。
今年のフジロック開催前、セミオフィシャルサイトのfujirockers.orgにて、日高社長が今年の大トリはコステロと、何度も連呼していた。欧米では、フェスの最終日は夕方になると客が帰ってしまうケースが多く、ヘッドライナークラスのアーティストは早い時間に登場する、というのが当たり前とのこと。最後に出てくるアーティストが大トリ、という考え方は日本ならではのものだそうだ。
確かにコステロはデビュー以来素晴らしいキャリアを積み重ねてきた人だし、その実力も秀でている稀有なアーティストだ。テレビや映画の主題歌を手がけることも多く、その認知度は最早洋楽ファンだけでなく、一般にまで波及している。またその多彩な音楽性は、ロックのみならずカントリーやクラシック、ジャズ方面にも展開している。もちろん質の高いライヴをするし、オーディエンスを満足させんとする意欲も旺盛だ。
が・・・、この日高社長の事前「大トリ」連呼は、結果的にだが少し余計なものになったのではないだろうか。欧米のフェスはあくまで欧米のフェスであって、ここは日本だし、フジロックは日本のフェスティバルだ。最終日の夜でも極端に人が減らないことも、昨年で証明されているはず。私などは、今回の「大トリ」連呼が余計な先入観になってしまい、果たしてコステロのパフォーマンスがほんとうに大トリにふさわしいのか、という品定めをするような見方になってしまった。黙ってこの枠で(グリーン午後7時過ぎという出演順で)出して、終わってから実は大トリはコステロだった、という形にしてもよかったのではないだろうか。そして来年以降も、こうした大トリ発言はあるのかなあ。
というわけでグリーンを後にし、初日以来となるオレンジコートを目指す。そのときはホワトステージからアヴァロン~フィールド・オブ・ヘヴンを経由して行ったのだが、今回はホワイトの手前にあるボードウォークを歩いて行って見ることにした。
今までは、フィールド・オブ・ヘヴンに行くためには必ずホワイトステージを通らねばならず、それで大渋滞や入場規制を引き起こしていた(特に昨年の3日目はすごかった)。このボードウォーク構築は、昨年のフジロックの頃から開始。板を1枚1,000円で購入し、好きなメッセージを書き添える。以降スマッシュ主催のライヴ会場にもこの板は持ち込まれていて、アーティストやオーディエンスも参加ができるという形を取った。構築作業は地元の人やスタッフ、そして自主参加のロックファンによって断続的に行われ、晴れて完成。
このボードウォークは、ホワイトからヘヴン/オレンジコート方面への一方通行になっている。板は人が2人並んで歩ける幅になっていて、ところどころには明かりもあり、暗いところを細々と歩くというイメージはない。この板には、雨で消えてしまったものもあったけど、マジックで記されたメッセージがあって読むこともできたし、途中途中には発光するオブジェもあって、とても綺麗だったりした。オレンジコートまでは約20分かかり、結構時間を要した。でも歩きながら思ったのは、よくぞここまで作ったなあ、すごいなあ、ということだった。
(2003.9.22.)
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