Fuji Rock Festival'03 Day 2-Vol.3 John Squire/Primal Scream







もう7年も前のことになるが、富士天神山スキー場で行われた第1回フジロックは、ご存知の通り台風に見舞われて大混乱となり、そして2日目は中止になった。その後私は、2日目に出演する予定だったアーティストの再来日公演に駆けつけては、中止の無念を晴らすということをしていた。レッチリ(正確には初日トリ)、プロディジー、グリーン・デイ、ベック、マッシヴ・アタック・・・。そしてそれは、2000年の第1回サマーソニックでの、ウィーザー『Buddy Holly』を観たときに、終わったはずだった。


ところがここにもうひとり、第1回フジロックと因縁のあるアーティストがいた。ジョン・スクワイアだ。当時ジョンは、ストーン・ローゼズ解散後いち早く活動を始めてシー・ホーセズを結成。フジについては、2日目にエントリーされていた。シー・ホーセズはフジ中止の4ヵ月後に再来日し、私もそのときの公演を観に行っていた。このバンド(すなわちジョン)については、それで気持ちの整理をつけていたはずだったのだが、その後バンド解散から長い沈黙を経てジョンがソロとして活動を再開し、そしてフジのステージに立つということを、感慨を以って迎えずにはいられなかったのだ。





マーキーのステージに立ったジョン。ほっそりとした体形で、顔は長髪で覆われていて、表情はあまりよくわからない。あごから頬にかけてヒゲをたくわえていて、それはこの人が刻んできた年輪を感じさせる。そしてオープニングは、いきなりローゼズの『Driving South』だった!この曲はジョンのリフによって始まるのだが、今回は歌うのももちろんイアン・ブラウンではなく、ジョンその人である。


シー・ホーセズのときでもギターに徹し、自ら歌うことはおろかコーラスをすることさえなかったので、私はジョンの歌声(というか肉声)をこのとき初めて聴いた。力強く印象的なフレーズを炸裂させるギターの方とは対照的に、優しく壊れそうな歌声だ。この姿に、今度はスウェード脱退後ギタリストからシンガーに転身した、バーナード・バトラーの面影がダブる。両者に共通するのは、もともとギタリストでありながら、なんだ歌の方も結構歌えるじゃん、いけるじゃん、という、嬉しいようなほっとしたような小さな感動だった。


続くはまたまたローゼズナンバーの『Made Of Stone』で、これでつかみはおっけーだ(笑)。キャリアと実力のあるアーティストがフェスに臨むとき、序盤はベストヒットから入ることが正しいと、私は思っている。単独公演ならば、そのアーティストが好きなファンだけが集まるだろうが、フェスはさまざまなファンが入り乱れていて、そのアーティストを知らないファンだって、その場に居合わせることがある。そうした人たちにも訴えるには、ヒット曲で攻めるのが一番だ。


ジョンがそんな意識を持っていたのかどうかはわからないが、この後は自身のソロアルバムからの曲に切り替え、ギタリストとしての力量は元より、ソングライター~ヴォーカリストとしての現在のスタンスを見せ付ける。ジョンが沈黙していた期間はあまりにも長かったが、今この場で必死に歌うその姿を観て、待たされただけのことはあったと、納得させられた。そしてライヴ終盤は、またまたローゼズナンバーの2連発。『Fools Gold』『Tightrope』で、なんだかこうもきっちりと帳尻を合わせられると、参ったなあという気にさせられてしまう。


このジョンのライヴを、ステージ向かって左の脇の方で観ているひとりのアーティストがいた。マニだ。マニはフジロック'98のときにも、ステージの脇からイアンのステージを観ては微笑んでいた(ことを、後に雑誌を読んで知った)。今回もまた、笑みを浮かべながらステージに見入っていた。この後グリーンでプライマルのライヴがあるにもかかわらず、時間が許す限りその場にいたのだ。





さてそのグリーンだが、オーディエンスの数は先ほどのコールドプレイを更に上回っていて、みっちりとしていた。こんな光景を目の当たりにすると、こりゃ2日目のチケットを開催前に売り切れにしたくもなるわと、納得もさせられる。そして陽は既に沈んでいて、夜の神秘的な空間の中で、現在バンド結成以来最高の状態にあると思われる、プライマル・スクリームのライヴが始まる。


このバンドもフジロックでは最早お馴染みといった感があるのだが、その参加するタイミングは、すなわち作品のリリース~ツアーにリンクしている。特に昨年リリースの『Evil Heat』は、前作『EXTMNTR』の過激さを更に深化させた快心の一撃で、このときの来日公演も凄まじいことになった。そして今回は、バンド初のライヴアルバムを引っ提げての参戦となり、その音源として選ばれたのが、他ならぬ前記の日本公演だったのである。


展開は、中盤まではほぼライヴアルバム通り。正直言うと、この日のボビーは少々荒れ気味で、マイクをブン投げたり、時折やる気のなさそうな様子を見せて、不機嫌なのかそれともラリっているのか、と、観ている方が気をもんでしまうくらい。なので、昨年のライヴを体験した身としては、今回のフジは必ずしも快心の出来とは言い難かったが、それでも今のバンドが持つ勢いが失速することはない。ボビーが不安定なとき、バンドを支えるのはベースのマニだろう。ついさっきまでマーキーにいて、ジョンのライヴに見入っていた男が、その数10分後にはグリーンステージに立ち、爆音を発しているのだ。

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(2003.9.14.)
















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