Fuji Rock Festival'02 Day 3-Vol.5 Cornelius/Spiritualized







再びホワイトステージに舞い戻ると、出入り口付近は人だらけになっていた。コーネリアスのライヴがもう始まっていたのだ。しかし人の間をかきわけて進み、なんとかステージ向かって右の前の方にまで出ることができた。


私はコーネリアスのライヴを観るのは初めてで、音を聴くのもソロデビュー作の『The First Question Award』以来のこと。このときはさすがにまだフリッパーズの影を引きずっているところがあったのだが、それ以降はデジタル志向が強まった様子。また活動の場を日本のみならず海外にまで拡大し、そして成功を収めてきた。その波及効果として、名だたる洋楽アーティストたちから、リミックスを依頼されるようになったのだ。


そして再び私とコーネリアスを結びつけたのは、4月に観たアート展だった。もともと椎名林檎の写真目当てだったのだが、ここにコーネリアスの『Point Of View Point』のPVを流すブースもあった。PVは首都高やゆりかもめを疾走する映像に曲がシンクロした、とても気持ちのいいものだった。アルバム『Point』は昨年秋にリリースされているが、この作品は音だけの世界というより、映像を伴ってこそその真価を発揮するのではないかと、このときに思った。


ライヴは、その『Point』からが中心となっている様子。もちろん小山田圭吾がフロントだが、バンドとしてはかなりの大所帯。そしてステージ後方には、巨大なスクリーンが。これが曲のイメージに合わせるようにして次々に移り変わる。サッカーをモチーフにした映像もあって、キャプテン翼のアニメも流れたりした。私は間に合わなかったのだが、冒頭は前記の『Point Of View Point』で、スクリーンには首都高の映像が流れたとのことだ。


途中小山田はステージを降り、オーディエンスをひとり連れてきてステージに上げた。何をするのかと思ったら、その人の手を掴み、テルミンにかざしてメロディを発している。もっとクールに淡々と演奏に没頭するのかと思っていたが、結構フランクにやっているようだ。音の方は、全般的に思ったほど電子音にまみれてはおらず、むしろギターやドラムといった生楽器の方が心地よく響く。シンプルだが、しかしスケール感に溢れた音の連続だった。





そしていよいよ、ホワイトステージの大トリであるスピリチュアライズドのお出ましだ。バンドは先ほどのコーネリアスに負けず劣らず大所帯だが、ジェイソン・ピアースが目指しているのは、もっと広大で、もっと開放的な世界なのかもしれない。


ジェイソンはステージの右端に立ち、半身の格好でギターを弾く。プログラミングの機材もあるようだが、こちらもあくまで生音が主体。1曲1曲がとてつもなく長く、原曲に忠実なのか、それともアドリブでやっているのか、その境目さえわからなくなってくる。まるでプログレのような怒涛の音の世界。スピリチュアライズドほど夜の野外がよく似合う(裏を返せば、昼の野外が不似合いな)バンドはいないのではないかな。


・・・なんて、そんなことを考えていたら、なんだか眠くなってきた。夕方には危なかった空模様だが、いつのまにか雲もなくなり、星がきれいに光っていた。この贅沢な環境の中で、しかも極上のBGMを耳にしながら眠ったら、それはそれで気持ちがよかったかもしれない。だけどさすがにそれはもったいないので、耐えに耐えて演奏を観続けた。結局ライヴはアンコール込みで約90分に渡り、ホワイトステージは幕引きとなった。





グリーンステージでは、レッチリの後を受けたクロージングバンド、バンダ・バソッティのライヴ中だった。イタリアのバンドだそうだが、音はクラッシュを思わせるパンクなたたずまいだった。そして毎年恒例の光景なのだが、あちこちで人の輪ができあがっていて、ぐるぐると廻っていた。ああこれで今年のフジロックも終わりに近づいたなと思いながら、私は自分にとってのフジロックの最後を締めくくるべく、レッド・マーキーへ向かった。


(2002.8.13.)
















Back(Vol.4) | Next(Vol.6)





Copyright©Flowers Of Romance, All Rights Reserved.